「インフルエンザの予防と対策」について連載でご紹介しています。第1回の「早くもインフルエンザ流行時期に突入! ひと足早く予防する方法は?」では、今シーズンの流行の特徴や注意したい症状、感染ルート、ワクチン接種の勧めについて、第2回の「咳エチケットに手洗い15秒以上! 大人のインフルエンザ予防5つ」では、日常的にできる大人の予防法についてお伝えしました。
今回はインフルエンザにかかった場合にどうすればいいかについて、ひき続き、内科医で泉岡(いずおか)医院(大阪市都島区)の泉岡利於(としお)院長にお尋ねしました。
発症後8~12時間で検査をするのが理想
ワクチンを接種しないでインフルエンザにかかったという周囲の大人に聞くと、「きつかった! 甘く見ていた!」と嘆く人が多くいます。泉岡医師はまず、インフルエンザの症状について、こう説明をします。
「急激に熱が38度以上出る、または38度以上の熱が3日以上続いている、それに咳(せき)や鼻水、頭痛、筋肉痛、けんたい感、おう吐などの症状も急で激しい場合はインフルエンザの可能性が高くなります。インフルエンザのウイルスは増殖のスピードが速いため、症状が急に進むのです」
次に、受診のタイミングについて、
「これらの症状が出るとだいたい48時間で増殖のピークになるため、それまでに医療機関で処方された薬を服用することが重要です。
インフルエンザが陽性か陰性かは、『インフルエンザ迅速検査キット』を用いて、患者さんの鼻やのどの奥の粘液を綿棒で少し採取して検査をします。約10~15分で結果がわかります。ただし、熱などの発症後すぐには陽性の結果が現れないことがあるため、8時間以上経過してから48時間以内に受診をしてください。検査結果が表出しやすいのは、発症から12時間後ぐらいです。
また、近ごろは、高感度な迅速検査キットを用いる医療機関も増えています。その場合は、ウイルス量がまだ少ない、発症後まもない時期の発熱から約3時間以内でも、判定結果を得ることができます。受診前に、病院に電話で症状と検査のタイミングを問い合わせてから行くのがベストでしょう。
いずれにしろ、発熱から48時間以上経つと検査の対象外になることがあるのでそれまでには受診をしてください」(泉岡医師)
風邪と思って市販の風邪薬を服用しながら仕事に出かける人もいますが、「それでは症状が悪化し、またウイルスをまき散らすことになります。インフルエンザの症状かなと思ったら、安静にしながら、先ほどお話ししたタイミングで内科か耳鼻咽喉科を受診しましょう。検査でインフルエンザと判明した場合は回復を目指し、また自分の周囲の人に感染を広げないことの2つを意識して行動してください」と泉岡医師。
休養、水分と栄養をとって免疫機能を働かせる
次に、医療機関でインフルエンザだと診断された場合、帰宅してからのセルフケアについて泉岡医師は、「インフルエンザの治療には、医療機関による処方薬を服用する『薬物療法』と、セルフケアの『一般療法』または『生活療法』とも呼ぶ方法があります。悪化させないために、これらを実践しましょう」と話し、具体的に次のことを挙げます。
(1)処方薬を指示通りに服用する
まずは、医療機関で処方された薬を、医師の指示通りに服用します。自己判断で飲まなかったり、また市販薬に変えたりすると、症状が悪化して重症になることがあります。また、発熱は体がウイルスと闘っている状況です。市販の解熱剤で無理に熱を下げると、ウイルスがなかなか死滅せずに回復まで時間がかかることもあります。薬で迷ったら、必ず医師に相談しましょう。
(2)安静にする
インフルエンザウイルスをやっつけるために、体では免疫機能が働いています。その働きを活発にするために、熱が下がるまでは無理に動かずに、食事やトイレ以外は安静にして寝ていてください。熱が下がっても、その後2~3日間は周囲の人にうつさないように自宅で休養しましょう。とくに、睡眠不足は免疫力を下げるので大敵です。十分に睡眠をとりましょう。
(3)水分補給をする
高熱が出ると、汗などで水分が普段よりも多量に体から排出されます。脱水症状にならないように、こまめに水分補給をしましょう。冷たい飲み物は免疫力を下げることがあり、また、お茶や水だと栄養となるミネラルがとれないので、常温のイオン飲料や経口補水液などを飲むとよいでしょう。
(4)消化が良くて刺激が少ない食事をする
食欲がない場合は無理に食事をする必要はありませんが、全く食べないでいると体力が落ちて症状がなかなか改善しないことがあります。半日以上食事をとらないということは避けて、のどを通りやすい、うどんやおかゆ、ゼリー、プリン、ホットヨーグルト、スープなどなら、食べやすいでしょう。もしどうしても何も食べたくない場合や食べても吐く場合は、病院で点滴を受けることもできますので、医療機関で相談しましょう。
(5)体に負担がかかるものは口にしない
食欲があっても、好物でも、からいものや脂っこいもの、食物繊維が多く含まれる食べもの、酸っぱいもの、また、飲みものでは、炭酸飲料、カフェインが多く含まれるコーヒーや紅茶、お酒は避けましょう。これらの食べものはいずれも消化に時間がかかって胃腸に負担をかけ、飲み物はのどや胃腸に刺激が強くなります。
(6)部屋の保温、保湿をする
インフルエンザウイルスは、低温で低湿度の環境を好み、増殖します。暖房や加湿器を活用し、室温は20~25度、湿度は50~60パーセントを保ちましょう。体も冷やさないように、カイロや腹巻、レッグウオーマーなどを利用してください。
(7)室内でもマスクをする
マスクをすると、自分の吐く息で鼻やのど、口内の保湿になります。
(8)部屋の換気をする
室内にこもったウイルスを増殖させないように除去する、呼吸するための空気を取り込むために、室外と部屋の中の空気をときどき入れ替えましょう。部屋の中央に風を通すために、対角にある窓と窓、また窓と扉を開けます。換気扇があれば活用しましょう。1~2時間に1回行うと十分な換気が可能でしょう。
(9)食事、睡眠はひとりで
インフルエンザウイルスが拡散する最大の要因である飛沫(ひまつ。咳やくしゃみで口や鼻から出るしぶきのこと)感染を防ぐために、家族や同居人とはできるだけ接触しないようにしましょう。とくに、飛沫を発生させやすい食事、睡眠時は、発症から1週間程度は部屋を分けてください。接触感染を避けるために、タオルやバスマット、はしやスプーン、お皿、コップの共有も避けましょう。
インフルエンザの症状が出たら、受診は8時間~12時間後が望ましいこと、またセルフケアとして、休養、水分、栄養、保温、保湿、換気、隔離が必要だということです。もっとも良いのは感染しないことですが、万が一かかっても焦らないように、ケア法を頭に入れておきたいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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