材料をセットしたら放っておくだけで、調理済みのおかずが食べられる——と、話題沸騰の家電「ホットクック」。火加減や時間を自動でコントロールしてくれるので、家事がラクになるだけでなく、食材の水分を活かして、うまみや栄養分たっぷりのお料理がつくれるすぐれものです。
とはいえ、その価格は3〜4万円台と決して安い買い物ではありません。サイズが少し大きめなのも気になるところ……。ホットクックって本当にいいの?
というわけで、2019年11月に出版された『ラクにおいしく無水調理! はじめての「ホットクック」レシピ』(世界文化社)の著者のひとりである料理家・夏目陽子(なつめ・ようこ)さんと、担当編集の石川奈都子(いしかわ・なつこ)さんに、お話を伺いました。
時短・効率派もお料理好き派も、どちらも楽しめる家電
——この数年、ずっと注目を集めているホットクック。本体にレシピブックもついているのに、書籍を作ったのはなぜですか?
石川奈都子さん(以下、石川): 最初は、ガジェット好きの私自身が使って、あまりの便利さとおいしさに感動したことがきっかけです。料理は好きなほうですが、共働きだとやはり毎日の夕食づくりは大変ですから。また、ホットクックはシャープ株式会社が2015年に発売してから、累計販売台数が20万台を越えています。これは、キッチン家電のなかではかなりのヒット。ほったらかし・時短・効率化というポイントに惹かれる方が多いと思いますが、じつはお料理が好きな方にもおすすめの家電です。
「野菜やお肉を切って入れて終わり」の簡単メニューだけでなく、凝ったレシピも、自分でやるよりぐっとおいしくつくれます。そんな面白い機械だからこそ、最大限にポテンシャルを活かす方法もご紹介しておきたいし、充実したレシピを求めている方も少なくないのではと思いました。
夏目陽子さん(以下、夏目):私は普段、イタリアンを中心にレシピをつくったり、料理教室で教えたりしています。仕事柄、手間をかけても人とは違う、よりおいしいものをつくれるようにと頑張っているのですが……ホットクックでつくったお料理はそれと遜色ない。むしろ、ホットクックのほうがおいしくできちゃうものもあるんですよね。火加減をいちいち調節しなくても焦げないし、ほどよく煮詰まります。料理教室のときにも「この工程はホットクックでやったらおいしいよ」なんて言うようになりました。
丁寧な手料理と遜色ない味で、時間も有効活用できる
——たとえば、どんな料理がどんなふうにおいしくつくれるんでしょう。
夏目:具材でいえば、やっぱりお肉が向いています。味が染みるのにパサパサにならず、ちょうどいいやわらかさに仕上がりますね。水加減や火加減が大事な煮物なんかは、直火で調理するより失敗がないと思いますよ。私のお料理教室では、お鍋でトマトを煮詰めて旨みを引き出すレシピがあるのですが……ホットクックに同じ材料を入れてみたら、充分おいしかったです(笑)。
——でも、ホットクックって基本的に、すべての材料や調味料を最初にまとめて入れるじゃないですか。それよりも、適切なタイミングと順番で入れていくほうが、おいしくできる気がするんですが……。
夏目:内鍋に食材を入れる順番さえ気をつけていれば、時差がなくても問題ないと思います。かたい野菜を下に入れるとか、熱すると辛くなりすぎる唐辛子は一番上に乗せるとか。あとは適切なタイミングで「まぜ技ユニット」*が混ぜてくれるから、煮崩れや焦げつきもありません。
*メニューに合わせて最適なタイミングで具材をかきまぜることができる
——食材を入れる順番が指定されていたり、「まぜ技ユニット」があるのって、そういう理由だったんですね! うちにも去年からあるけれど、なにも考えずに使っていました(笑)。
石川:それから、やっぱり無水調理は素材の味が活かせるし、葉酸やビタミンが逃げにくいのもうれしいですね。野菜の甘みがぐっと強くなるため「ホットクックで蒸した野菜は子どもがよく食べる」なんて声も聞かれます。
夏目:お料理する側からみれば、時間が有効活用できるのも大きなメリットです。食材を切って入れてスタートしたら、すぐ別の料理や洗い物に集中したり、キッチンを離れてまったく別の作業もできる。ふつうにお鍋やフライパンを使っていたら、そうはいきません。
——使っていて、デメリットは感じませんでしたか? 炊飯器くらいのサイズ感なので、キッチン内で置き場所に困るひとは多そうです。
夏目:デメリットというほどのことはなかったですね。置き場所も、ホットクックで加熱するなら火は使わないわけだから、コンロの上に置けばいいと思いますよ。うちはIHでフラットだから、ずっとコンロの上にありました。もっと言えば、カウンターやテーブルに移したっていいし、棚のなかにしまっておいてもいいし。
余裕があれば、ほんのひと手間でさらにおいしく
——「食材を入れて終わりだけどおいしい」「時間を有効活用できる」というメリットは、よくわかりました。でも、お料理が好きな人には、どうしておすすめなんでしょうか?
夏目:“入れるだけ”のレシピにひと手間を加えるだけで、ホットクックのお料理はさらにおいしくなるんです。たとえば、ざっとゆでてあくや余分な脂をとり、すっきりした味に仕上げる。ちょっと焼き目をつけて香ばしくする。塩もみして肉のうまみを引き出す……。ほんの少しの下ごしらえが、食感や風味をいつもよりランクアップしてくれます。
石川:もちろん、時短や効率重視の方は、そういう細かいことをやらなくたっていいんです。面倒なときは分量どおりに材料を切って、調味料と一緒に入れればいいだけ。余裕があるときや機械のポテンシャルを活かしたいときは、少し下ごしらえしたり、低温調理してみる。手をかける楽しさと、日々の手軽さと、どちらも選べるのがホットクックのいいところです。そうやって使い分ければ、購入代金の元は簡単に取れると思います。
(取材・文:菅原さくら、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
話題のほったらかし家電「ホットクック」。レシピ本の著者に感想を聞いてみた