健康診断で「まさかの糖尿病予備群!?」を告げられた35歳女性のA子さんの例をもとに、自分で糖尿病やその予備群かどうかをチェックする方法をお送りしています。第1回では血液検査結果のどこでわかるのか……「血糖値」と「HbA1c(エッチビーエーワンシー。または、ヘモグロビンエーワンシー)」を確認すること、第2回では糖尿病に直結するという「肥満」や「メタボ」かどうかを知るセルフチェック法などを紹介しました。
今回は、ネットで無料で近い将来の糖尿病リスクを測定できるツールや、30~40代の患者さんが増える現状とその理由について、ひき続き、糖尿病専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある、ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)の福田正博院長に詳しく聞いてみました。
3年以内に糖尿病を発症する確率がわかる
ネットでだれもが無料で使える、自分の糖尿病のリスクがわかるツールがあると聞きました。福田医師は次のように紹介します。
「『糖尿病リスク予測ツール』という、30~59歳までの人が3年以内に糖尿病になる確率をパーセンテージで示すものです。国立国際医療研究センターがネット上で公開しています。
糖尿病の既往歴、年齢、性別のほか、身長と体重、メタボの要素であるおなかまわりのサイズ(腹囲)と血圧、喫煙するかなどを入力すると、瞬時に3年以内に糖尿病を発症する確率(パーセンテージ)表示されます。BMI(ビーエムアイ。体格指数。第2回参照)は自動で計算され、その数値と肥満度また、自分と同年代で同性の糖尿病発症リスクの割合も表示されます。
それに加えて、血液検査の結果が手元にある場合は、空腹時血糖値、HbA1c、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、AST、ALT、γ―GTP、ヘモグロビンの各数値を入力する覧もあり、それぞれを記入すると、新たな予測結果が表示されます」
入力してみると、年齢を1歳ずつ加算するだけで、予測結果の割合が上昇します。加齢だけでもリスクが高くなることが明白です。
「このツールの使い方やメリットは、現時点でのリスクの確率を知る以上に、糖尿病のリスクとなる要素がわかること、また、その要素である体重や血圧が上昇した場合にどのぐらい発症率が高まるかが一目瞭然であること、そしてどこを改善すれば危険が低くなるかが目に見えるということにあります。
現在の予測を出してから、年齢をプラス2歳にしてみる、体重をプラス3㎏にしてみる、血圧をプラス10ぐらいで入力する、あるいはその逆などにしてあれこれと計測を試してみると、パーセンテージがそのたびに変化します。その様子から、自分のどの要素が危険なのか、体重なのか、血圧なのか、喫煙なのか、どうすれば糖尿病発症の危険が低くなるのか、といった理解が進みます。ぜひ試してみてください」(福田医師)
<糖尿病リスク予測ツール>
糖尿病はどこも痛くもかゆくもない
第1回、第2回に続いてここまでで、自分の体の状態を見つめることができたように思います。では、糖尿病予備群や糖尿病だという結果が出た場合、症状はどのように現れるのでしょうか。尿に糖が出てにおう、と言いますが、実際にはどうなのでしょうか。福田医師は次の説明をします。
「糖尿病予備群は、血液中のブドウ糖の濃度が過剰になる高血糖の状態です。放っておくと全身の大小の血管が傷害されて重篤な病気に発展していくのですが、血管が痛いとかかゆいなどと感じることはなく、予備群や糖尿病初期のころは無自覚なのが特徴です。
また、尿に糖が漏れだすのは個人差もあり、採尿のタイミングによっても変化するので診断には不向きです。
つまり、糖尿病予備群や初期の場合は何の症状もないため、血液検査以外では病状の進行に気づくことが非常に難しいのです。これが糖尿病の怖いところです。
痛くもかゆくもないなら放っておくこともあるかもしれません。
「実は知らないうちに腎臓の機能が障害されて腎不全になる、血管の壁が硬くなって詰まっていく動脈硬化を起こすなど、全身に多様な合併症をもたらすのが糖尿病です。その結果、尿毒症となって人工透析が必要になることや、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞で寝たきりになる、場合によっては死亡にいたることもあります」と福田医師は警告します。
糖尿病が30・40代に増えた理由
社会の高齢化に伴い、高齢者糖尿病の増加が大きな問題とされていますが、「それ以上に問題なのが30・40代のビジネスパーソン世代の糖尿病です。この時期に糖尿病が芽生えるのですが、先ほど述べたように症状もなく見過ごしてしまい、60歳ころに心筋梗塞や脳梗塞を起こすことになりやすいからです」と話す福田医師は、30・40代に糖尿病の患者さんが増える理由についてこう説明をします。
「糖尿病にはその病因の違いから1型と2型の2種類があり、日本人の90%は2型糖尿病です。一般に糖尿病と言うと2型を指します。この違いや糖尿病のメカニズムは後の回で説明しますが、2型は血縁者に糖尿病の人がいるなど遺伝的な体質に加えて、食事や睡眠、運動、ストレスなど生活習慣がきっかけとなって発病します。中でも食事の影響はとても大きくなります。
糖分が多いスイーツ、パン、麺類などを毎日毎食、間食に食べ続ける、また飲酒の量が多い、朝食抜きで夜食をガッツリ、また夕食の時間が夜中になるなどだと、血糖値は上昇します。若い世代ほど欧米型の糖質が豊富な食事を好み、また不規則な時間帯の食生活を続ける傾向にあり、10代からのそうした習慣の蓄積が30・40代に糖尿病が増えている大きな原因だと考えられます」
こういった食生活に思いあたる人は多いのではないでしょうか。「糖尿病リスク予測ツール」をあれこれ試すと、3年以内に糖尿病を発症しないためには、毎年の健康診断で血液検査の結果に注視し、体重やおなかまわりサイズのコントロール、また食生活を見直す必要がありそうです。
次回は、内臓脂肪と皮下脂肪の違い、福田医師が提唱する「腹やせ」が糖尿病予防になる理由について紹介します。
(構成・取材・文 海野愛子 / ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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