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私がまさかの糖尿病? 血液検査のどこを見ればいい?【専門医が教える】

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健康診断で年代を問わずにもっとも注目される結果のひとつに、糖尿病があります。35歳の会社員の女性はつい先日、「糖尿病予備群です。詳しい検査をしてください」と告げられ、「ええっ、まさかわたしが!? 糖尿病って中高年の病気じゃないの?」とがく然としていると言います。いったいどのようにとらえてどうすればいいのでしょうか。

糖尿病専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)などたくさんの一般向きの著書がある、ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)の福田正博院長に詳しく教えてもらいましょう。

糖尿病専門医の福田正博先生

糖尿病専門医の福田正博先生

「血糖値」と「HbA1c」を確認する

はじめに、健康診断の結果のうち、糖尿病かどうかを知るにはどの項目を確認すればいいのでしょうか。福田医師はこう答えます。

「まず、血液検査結果の表にある『血糖値』と『HbA1C(エイチビーエーワンシー。または、ヘモグロビンエーワンシー)』を見てください。これらの数値が基準値以上であれば、糖尿病が疑われます。その場合は医療機関を受診するように指導され、その後、病院で問診と必要な検査を経て確定診断へと進みます」

血糖値という言葉は馴染みがあると思いますが、HbA1cは聞きなれない人も多いようです。

「昔は血糖値で判断していたのですが、現在はHbA1cの数値が糖尿病かどうかの判定にとって重要になっています。順を追って説明をしましょう」と福田医師。

血糖値が100以上は糖尿病か予備群の可能性

では次に、血糖値とは何かについて、福田医師は次のように解説をします。

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を表わします。糖とはブドウ糖のことで、食べ物のうち炭水化物を消化吸収し、血液中に取り込まれたあと各臓器でエネルギーとして利用される栄養素です。つまり、生きていく上で必要なエネルギー源であり、脳と体の活動にとって欠かせない存在です。

ただし、このブドウ糖が血液中で過剰になると体中の血管を傷めて、『血液中の老廃物を排出する腎臓の機能が低下する腎不全』や『眼底出血による視力の低下』、『手足の痛みやしびれのほか全身の神経に障害が起こる神経障害など、糖尿病による合併症をまねきます。さらに血管が硬く詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気につながる可能性が高くなります」

続いて、血糖値が示す状態、糖尿病かどうかの診断基準について、福田医師は次のように説明を続けます。

表1

「血糖値は、1デシリットルの血液に何ミリグラムのブドウ糖が含まれているかの数値が示されます。

ブドウ糖が適切にエネルギー源として使われているかどうかを判断するには、朝の食事前の空腹時の血糖値を基準とします。正常と考えるのは110未満です。ただ100〜109は将来、糖尿病になる可能性があるので正常高値として注意が必要、とくに肥満の方や血縁関係に糖尿病の方がおられる場合は、要注意として『糖負荷試験』という精密検査が勧められます。126以上が糖尿病型です。110 ~125は境界型と呼び、いわゆる『糖尿病予備群』になります」

「HbA1C」の数値が糖尿病かどうかの決定打

糖尿病の診断では、HbA1Cの数字が重要になるとのことでしたが、それはどういったものでしょうか。福田医師はこう伝えます。

Hbとは『ヘモグロビン』のことです。血液中の赤血球内のタンパク質で、全身に酸素を運ぶ役割があります。一方で糖はタンパク質にくっつきやすい性質があり、ブドウ糖と結びついた状態を『糖化』と言い、ヘモグロビンが糖化した物質を『HbA1c』、医療の現場では略してエーワンシーと呼んでいます。

血液検査でわかるのは、全体のヘモグロビンの量に占めるHbA1cの割合で、単位は%です。赤血球の寿命は約100日で、糖化した古いヘモグロビンは壊され、常に新しい糖化していないヘモグロビンが産生されています。その結果、HbA1cの値は過去1〜2ヶ月間の血糖値の平均値を表しています。次のように判定します」

※血糖値、HbA1cの数値と判定基準については、血液検査機関によって表記が違うことがあります。ここでは、日本糖尿病学会の基準(2019年10月)に準拠しています。

※血糖値、HbA1cの数値と判定基準については、血液検査機関によって表記が違うことがあります。ここでは、日本糖尿病学会の基準(2019年10月)に準拠しています。

検査の前日に禁酒や節制をしてもHbA1cはごまかせない

よく検査の前日に禁酒やプチ断食をすれば数値が良くなる、と言われますが、実のところはどうなのでしょうか。福田医師は次のように説明を続けます。

「血糖値は食事をすれば上昇するため、空腹時や食後すぐなど、検査をしたタイミングで大きく変わります。検査の前の夜にお酒を控えただけでも低くなります。また健康診断の検査は、空腹時の血糖値がもっとも低いときの数値が出るので、その人が食後にはどれだけ血糖値が上昇するのかがわかりません。

一方、HbA1cは食事や飲酒の影響を受けずに、過去1~2ヶ月の血糖の平均の数値がわかります。健康診断の日の1週間前から急に禁酒や食養生をしたところでHbA1cの数字は変えられません。そのため、HbA1cは糖尿病の判定基準として重要な役割を持っているのです。

血糖値が基準範囲であってもHbA1cが高い場合は、一時的に食事や飲酒、運動の加減などで血糖値が下がっているだけで、実際には血糖値は慢性的に高いということを示します。HbA1cが高いほど『高血糖である』と判断します」

『糖尿病は自分で治す!』(福田正博 集英社)より。転載禁止。

『糖尿病は自分で治す!』(福田正博 集英社)より。転載禁止。

糖尿病かどうかの判断基準については、
「先にお話しした空腹時の血糖値(FPG)が126mg/dL以上かつHbA1c 6.5%以上の場合に、糖尿病と判断します」と福田医師。

糖尿病は1日にしてならず。ギリギリの数値はセーフではない

冒頭で紹介した糖尿病予備群と告げられたという35歳女性は、「血糖値が115、HbA1cが6.4%だった。ギリギリセーフでは」と話しますが、福田医師はこう警告をします。

「血糖値は『境界型』、HbA1cは『予備群』の数値ですね。この状態を『糖尿病予備群』、あるいは『境界型』と呼びます。いまは糖尿病と診断する数値ではないけれど、健康な場合の基準値よりは血糖値もHbA1cが高くなっていて、危険を予知するサインと言えます。

健康診断で要注意の数字が出た場合に、『糖尿病ではない!』と思い込まれる方、またそう思いたい方はとても多くいらっしゃいます。糖尿病は発症していても中等度までは痛くもかゆくもなく、自覚症状がありません。30代は公私ともに忙しくて体力もあり、なんとかなるだろうと思って治療を受けられない方が多いのです。

しかし、それが問題です。生活習慣が原因で発症する2型糖尿病は1日にしてならず、じわじわと何年もブドウ糖が血液中に蓄積された状態です。つまり放置すると、今後は加齢というリスクが加わって数値が悪化することは明白です。

逆に、予備群の時点で治療を始めると、血糖値コントロールが身について治癒が可能です。ギリギリの場合はセーフではなく、現時点でわかってよかったと考えて、すぐに医療機関で診察を受けてください」

糖尿病か、あるいは予備群や境界型かどうかは、血液検査での血糖値とHbA1cの数値を確認しましょう。また糖尿病を発症すると、つらい合併症や動脈硬化から脳や心臓などの重篤な病気に直結するため、ギリギリの数値はアウトととらえるべきということです。まずこれらのポイントを知っておきたいものです。

次回は、糖尿病の危険因子と言われる肥満とメタボについて、自分で計算する方法や病気への影響についてお尋ねします。

(構成・取材・文 海野愛子 / ユンブル)

情報元リンク: ウートピ
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