婚活サイト「キャリ婚」を主宰する川崎貴子さんが「令和の共働き婚」をテーマにそれぞれの分野で活躍するプロと対談する連載。第2回目のゲストは、前AERA編集長で、現在はBUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長を務めている浜田敬子(はまだ・けいこ)さん(53)です。全3回。
幻の赤ちゃんを抱いて幻の商社マンを待っている
川崎貴子さん(以下、川崎):共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回って久しいですが、母親が専業主婦だったので共働き婚のモデルケースを知らないという女性も多いと思います。特に私の世代はそうですね。それで、令和になっても相変わらずみんな性別役割分担やワンオペ育児で大変な思いをしているので、「幸せな共働き婚って何だろうね?」と考えたかったのがこの連載を企画した理由の一つです。
浜田敬子さん(以下、浜田):先日、うちの会社で働いていた大学生がインターン最後の日だったんです。最後のあいさつの際に彼女が言っていたことがとても印象的でした。「この会社で働いて一番良かったことは、女性が働く姿を初めてちゃんと見たことです」と。
川崎:おお……。
浜田:彼女は地方出身なのですが、地方にはフルタイムで働く正社員の女性の種類も数も東京ほどたくさんいないんですよね。うちの会社はワーキングマザーが多くてSlackでも「子供のお迎えなので帰ります」とか「今日はお弁当を作って疲れた」とか書くから、ワーママがどうやって毎日を回しているのかが自然と見えてくるんです。それが彼女にとっては収穫だったみたい。
でも、前回のお話にあったように、大玉の上でジャグリングするイメージがないまま社会に突っ込んでいくとなると……。
川崎:失敗しますよね。
浜田:(米フェイスブックCOOの)シェリル・サンドバーグが著書で“幻の赤ちゃんを抱いて症候群”と指摘していましたが、今の若い世代を見ていて思うのが、すぐに結婚の予定もないのに「両立不安」を強く感じている女性が多いこと。何をしたいのか、何をして働きたいのかよりも「この会社は両立できますか?」という質問が真っ先にくる。
もちろん、自分の仕事を長い目で見たときに、働きやすさや両立支援が整っていることは大事だと思います。でも、それを最優先にしてしまうと、本来自分がやりたいところではない部分で会社を選んでしまう可能性がある。そうなったときに、本当にキャリアでつらいときに踏ん張れないのではと危惧しています。
川崎:本当にそうですね。
浜田:だから、まずは自分が何に興味があって、どんな仕事をしたいのかを選んで、その上で、どんな両立支援制度があるかで選ぶ。人生のライフイベントがくるまでは思いっきり働く。そうやってキャリアを積み上げれば新たに転職する選択肢も出てくると思うんですよね。最初から全てのパーツを入れようとしなくてもいいんじゃないのって。だって、両立支援は整っているかもしれないけど、すごくやりたくない仕事をできる? 興味のない商品を売れる? って。
川崎:それは30代になっても同じで、「もし私が商社マンと結婚したら、責任のある仕事はできないので管理職は引き受けられません」と言う女性も多いのですが、その商社マンはいないんですよ。幻の商社マンなんです。
浜田:変に先を読みすぎちゃっているんですね。先を読みすぎて、可能性を狭めてしまっている。用意周到に準備しているようで、あまりにも不安ばかりが先立ってしまって過剰反応しているから、自分のキャリアの可能性を狭めていてもったいないなと思います。
川崎:なかなか気付かないんですよね。
浜田:とりあえず言いたいのは、悩むよりもやってみたほうがいいってこと。世の中もこれからめちゃくちゃ変わるし、だったら、すごく好きなことややりたいことを思いっきりやったほうが、キャリアが積めるし選択肢も広がるから。そうすれば転職しようが、起業しようが選べるし、両立しやすい環境を選ぶこともできる。
仕事も結婚も、とりあえずやってみてPDCAを回す
川崎:イメージですが、浜田さんの均等法世代はそういう「とにかくやってみよう」という人が多い気がします。逆に、私の世代は就職氷河期なので、そういうチャレンジ精神がない。私は25歳で起業してしまったので軽く“異端者扱い”を受けましたよ(笑)。
浜田:川崎さんは氷河期世代どっぷりというよりも上の世代に近いからね。
川崎:やってみないと後悔するかもしれないじゃん。失敗も経験じゃんっていう精神で生きていたし、今もそうですね。
浜田:やってみようよ。結婚してみようよってね。結婚は私も1回失敗しているので。
川崎:バツなんてついたっていいから。
浜田:結婚しないと分からないからね。だからこそ、今の若い世代の女性には、「相手を選ぶときに顔や収入で選ぶな」ということは、すごく言いたい。「この人は、家事育児をどのくらいやってくれるのかな?」という視点も大事だけれど、ちゃんとした人を選んだつもりでも「ん?」って思うことはありますから。
川崎:そもそも自分が結婚に向いてなかったり、スタンダードな結婚に向いてなかったりする可能性もあるわけで。それも含めて自分の中で整理できてない場合も多いから、やってみないと分からないんですよね。「バツ上等」という気がします。
浜田:結婚なんて、何度でもするもんだくらいに。それでPDCA回すみたいな。人生100年時代、3回くらい結婚してもいいんじゃないかって思いますね。
直感と違和感を大事にして
川崎:議論がヒートアップしてきたところで編集部から質問というか、反論があるそうです。
「浜田さんや川崎さん世代はまだまだ終身雇用制度が当たり前だったし、日本社会もどんどん発展していくだろうという希望があったと思うんです。でも、今は経済は縮小する一方だし、制度は整いつつあると言っても全ての女性にとって働きやすい社会や環境とは言えません。20代や30代が不安になって守りに入ってしまうのも仕方ないと思います」だそうですが……。
浜田:でもどんなに慎重になっても、夫やパートナーの会社はつぶれるかもしれない。これまで以上に外的要因がすごく変わる時代ですよね。だからこそ、まずはやってみてその時点でのベストを考えていくのが一番いいと思います。私たちの時代以上にそうなんじゃないかな。
川崎:私も、まずは経験を先にするっていうのもありだと思いますね。今、行動していくことの全てはリスクなんですが、一番の人生のリスクは「リスクを冒さないこと、チャレンジしないこと」につきると思います。
浜田:今の時代はどうなるか本当に分からない。いろいろ計画を立てて、緻密にやっていても、全部崩れることだってある。結婚や仕事や人間関係も自分だけで決められないことも多い。だったら、自分の素直な感情や直感に従ったほうが意外と合っていることもあるし、後悔も少ないと思います。
川崎:パートナー選びもそうですね。スペックじゃなくて直感。
浜田:前回も言ったように「お店の人への態度」とかで違和感を感じたことが大事だったりするんですよね。直感と違和感は大事にしてほしいですね。
(構成:ウートピ編集部:堀池沙知子)
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情報元リンク: ウートピ
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