生きていれば誰しも等しく歳を重ねるわけで、エイジングは怖くない!というムードもありますが……やっぱり自分の心身が変わって行くのはちょっと怖い。
『キッパリ!』などの著書で知られる、上大岡トメさんも48歳の時に起こった身体の変化に「青天の霹靂」だったそう。
2019年7月に発売された『老いる自分をゆるしてあげる。』(幻冬舎)は、トメさんが50歳からの「自分」とうまく付き合うためのヒントをつづったコミックエッセイ。
ここから、一緒に「老化」と向き合ってみませんか。
第1回は著者である上大岡トメさんの、年齢による身体の変化、「老い」を意識したターニングポイントをお聞きしました。
ターニングポイントは、32歳、40歳、50歳だった
——「老い」というのは、直視するのが怖いというか、どうしてもネガティブに捉えてしまいがちなテーマですよね。トメさん自身はどんな印象を持っていましたか?
上大岡トメさん(以下、トメ):ネガティブな気持ちを持っていましたよ。身体の変化に、めちゃめちゃ抗っていた時期もありました。
——一般的に35歳を過ぎると、体力的に無理がきかなくなると言われますが、トメさんが身体の変化を感じたターニングポイントを教えてください。
トメ:私の場合、32歳と40歳と50歳です。実は私、学生時代の体育の授業以外、本格的に運動をしたことがなかったのですが、32歳でダンスを始めたんです。
——どんなジャンルのダンスですか?
トメ:ヒップホップ(笑)。すごいでしょう。学生の頃、バスケットをやりたかったんだけど、自分には運動神経がないと思っていたので、勇気がなくて吹奏楽部を選びました。
当時、人気だった米米CLUBというバンドが好きで選んだ吹奏楽部ですが、歌に合わせて踊っているSUE CREAM SUE(シュークリームシュ)というダンスユニットのほうにもっと惹かれていました。あんなふうに踊れたらなと。でもきっかけがなくて、30歳を過ぎるまで文化系のまま過ごして。
——ヒップホップとは、また激しいジャンルにいきましたね。それこそかなりの勇気が必要だったと思いますが、始めたきっかけはなんだったんですか?
トメ:29歳で関東から山口県に引っ越したことです。地方で子育てをしていたのですが、そこでの生活はほぼ車移動。歩くことが極端に減ったせいか腰痛と肩こりに悩まされました。このままではダメだと危機感を覚えて、32歳のときに近所のエアロビクススタジオに通い始めたのがそもそものきっかけです。
——そこからトメさんの体育会歴が始まるわけですね。
トメ:文化系から一気に体育会系ですよ(笑)。最初は全然思うように動けなかったのですが、練習をするうちに身体を自由に操る感覚がわかってくる。これは衝撃的でした。ああ、運動すると、こんなにも身体と脳は直結してくれるんだと。
それからずっと運動を続けています。仕事で柔道雑誌に携わったのをきっかけに、柔道も始めました。
——えー、これまたすごいところにいきましたね。
トメ:おもしろいでしょう(笑)。当時は田村亮子さんの全盛期で世間は柔道ブーム。柔道もやってみるとおもしろくて、36歳のときに黒帯をとりました。
——やり始めると、本格的なんですね。
トメ:おもしろくなるとのめり込んでしまう性格ですね。ただ、柔道はケガが多い。並行して続けていたダンスにも影響が出てきたので、柔道はお休みすることにしました。
「老い」に抵抗していた40代
——今もヒップホップダンスをされているんですか?
トメ:10年くらい前からクラシックバレエをメインに習っています。ヒップホップの後にジャズダンスを始めて、44歳でクラシックバレエにはまりました。ダンスというと、ふつうはクラシックバレエの基礎から始める人がほとんどですけど、私の場合は逆からいった感じですね。
32歳から途切れることなく運動を習慣にしていますが、このときは運動不足を実感したという感じで、まだ「老い」は意識していませんでした。
——40歳のターニングポイントというのは?
トメ:ひと冬中、風邪が治らなかったことです。たしか11月頃に風邪をひいて、それが翌年の3月くらいまで治らなかったんです。咳が止まらなくなったり鼻水が出たり、肺炎などの検査もしてもらったのですが、風邪という診断しかでませんでした。大病ではなくて安心したものの、症状は一向に治まらない。これは免疫力の低下が原因かなと。「老い」というものを意識し始めるきっかけになったと思います。
——意識したところで、受け入れるのは難しいテーマですよね。
トメ:受け入れられない気持ちはあっても、30代と比較して身体がすごく変わってきているなという実感はあったので、バレエを続けながら、ヨガを始めたり、食事は野菜中心で腹八分目を心がけたり、早寝早起きを心がけたり、より健康に気を使うようにはなりました。
——風邪は自然に治ったのですか?
トメ:何か対策をしなくてはいけないと情報収集したところ、口呼吸をしているなと気づいて、口を絆創膏で塞いで寝るようにしたら、そのうちに。
——そんな方法があるとは。そして、50歳目前で喘息を発症というのが50歳のターニングポイントでしょうか。
トメ:著書にも書いていますが、本当に青天の霹靂でした。40歳のときの風邪の経験から、健康には人一倍気を使っていたつもりだったので、「なぜ?」という気持ちでしたね。
それをSNSに投稿したら、私と同じように大人になってから喘息になった人や、50歳前後で大きく体調を崩した人がこんなにも多いのかと驚きました。これをきっかけに、「老い」という得体の知れないものに目を背けてはいけないと思い始めました。
(取材、文:塚本佳子、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
ただいま53歳、トメさんが「老い」を受け入れたターニングポイント