32歳の女性読者から、「会社の健康診断の血液検査の結果で、『コレステロールの数値が高いから受診を』と告げられました。それなに? なぜ? とがく然としています。詳しく知りたいです」というお問い合わせがありました。
コレステロールは健康にとって悪いというイメージがありますが、「悪玉と善玉があるらしい」、「脂肪のかたまり?」、「どこにあるの?」、「卵に多いというアレ?」など、情報の断片を見聞きしたことはあっても、「その正体は理解していません」と話されています。
そこで、糖尿病専門医・臨床内科専門医でふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)の福田正博院長に尋ねると、「放っておくと年齢や食生活によって数値が悪化し、心臓や脳の命に関わる病気をまねくこともあります。これを機に、コレステロールの実体や改善のための食事など、適切な知識と対策法を得ておきましょう」ということです。そこで、3回に分けて詳しく聞いてみました。
コレステロールとは脂質で、過剰だと血管の壁に蓄積する
Q1:コレステロールとはいったい何なのでしょうか。その実体を教えてください。
福田医師:ヒトの体内に存在する脂質の一種です。脂質とは、コレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、リン脂質(レシチンなど)などの総称であり、その構成成分である脂肪酸(リノール酸、EPAなど)などを含みます。
血液中のコレステロールの20~30%は食事でとり入れられ、70~80%は肝臓でつくられていて、その量や割合は体内で調整されています。
Q2:コレステロールというと体に悪い物質というイメージがありますが、実際にはどうなのでしょうか。
福田医師:よくそう言われるようですが、体に悪いと考えるのは間違いです。結論から言うと、「体に必須の栄養成分だけど、過剰になると血管壁に蓄積して病気をまねく」という解釈が適切です。
コレステロールは細胞膜の成分になり、また、女性ホルモンや男性ホルモン、ステロイドホルモンなどの各種のホルモン、ビタミンD、さらに食事でとった脂質やビタミンの吸収を助ける胆汁酸をつくる材料となります。つまり、コレステロールは細胞の働きの調節や栄養素の吸収などに関わっている、実は体に必要な物質で、栄養成分です。まずはその点を理解しましょう。
悪玉は血管壁にたまって血管を硬くし、善玉は血管を掃除する
Q3:コレステロールには役割があるということですが、「悪玉」と「善玉」があると聞きます。どういうことでしょうか。
福田医師:コレステロールは脂ですから、水に溶けません。どうして血液の中を流れているかというと、コレステロールのまわりを水になじむタンパク質が取り囲み,「リポタンパク質」という形で血液中に溶けこんでいるからです。そうしてコレステロールは全身の細胞や組織に運ばれます。
これには、LDLコレステロール(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク)とHDLコレステロール(High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク)があります。
肝臓でつくられたコレステロールは、LDLの形で全身に運ばれて利用されますが、過剰になると血管の壁に入り込んでたまります。すると、それを処理するために免疫細胞が活性化されて炎症がおこり、血栓(けっせん。血のかたまり)ができます。その結果、血管が狭くなったり、詰まったりする動脈硬化の原因になります。そのため、「悪玉」コレステロールと呼ばれます。
一方、HDLは血液中の余分なコレステロールを回収し、血管の内壁にたまって動脈硬化の原因となるコレステロールを取り除いて肝臓に運びます。動脈硬化を予防するわけです。例えると、血管を掃除する役割があるので、しばしば「善玉」コレステロールと呼ばれます。
血液検査の結果には、LDL とHDLの両方の数値が明記されています。悪玉のLDLの基準値は「140㎎/dl未満」と少ない方がよくて、善玉のHDLの基準値は「40㎎/dl以上」で多いほうがいいわけです。
善玉と悪玉のバランスが悪いと「脂質異常症」に
Q4:では、健康診断で「コレステロールの数値が多いので治療を」と告げられた場合は、動脈硬化の可能性が問題になるのでしょうか。
福田医師:そうです。コレステロールは栄養素だと言いましたが、エネルギー源として利用されることはありません。お話ししたように、食事などによってコレステロールが血液中で過剰になると動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞になるおそれが高くなります。これが問題です。
悪玉のLDLの値があまり高くない場合でも善玉のHDLの値が低い場合は、体内の脂質の状態が異常と考えられ、「脂質異常症」という生活習慣病のひとつを疑います。動脈硬化が進んでいると想定され、心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓や、脳梗塞など脳の重大な疾患を誘発する可能性が高いため、治療が必要です。
血液検査の結果に記されている、「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」という項目の数値に注目してください。
また、LDL とHDLのバランスを表すひとつの指標として、「L/H比」(LDLコレステロール値をHDLコレステロール値で割り算した数値)があり、2.5以上であると動脈硬化が進行しやすいとされています。例えば、LDLコレステロール値が150mg/dl、HDLコレステロール値が50mg/dlなら、150÷50=3.0でL/H比は3.0となり、注意が必要です。
「総コレステロール」という項目もありますが、それは検査によって表示されていない場合があります。2006年までは総コレステロールの数値が「脂質異常症」の診断基準になっていたのですが、いまでは「HDLコレステロール」と「LDLコレステロール」と「中性脂肪」の数値など、ほかの結果を考え合わせて診断するようになっています。
Q5:現在、「脂質異常症」と診断される数値の基準を教えてください。
福田医師:日本動脈硬化学会の診断基準は次のようになっています。空腹時の採決による数値です。
「LDLコレステロール値が140mg/dL以上」と多い場合を「高LDLコレステロール血症」「同値が120~139mg/dL」の場合を「境界域高LDLコレステロール血症」「HDLコレステロール値が40mg/dL未満」で少ない場合は「低HDLコレステロール血症」
もうひとつ、コレステロールとは違う物質ですが、「中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上」と多い場合を「高トリグリセライド血症」と呼び、これらを考え合わせて脂質異常症かどうかを診断します。
今回は、コレステロールの実体、善玉と悪玉の役割や検査結果の基準とその問題、脂質異常症という生活習慣病、動脈硬化という危険な状態のことが理解できました。
次に、血液検査の数値が基準値を超えていた場合、セルフケアの方法は、食事はどうすればいいのか、病院ではどのような治療をするのかなど、続く、「第2回」「第3回」「第4回」の記事で、具体的な対策と予防法に続きます。
(構成・文 品川 緑/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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