大人の悩みに子ども記者が答える「かめおか子ども新聞」の人気相談コーナーを書籍化した『はい!こちら子ども記者相談室デス!』(新潮社)が5月30日に発売されました。
「彼女に結婚をせまられて悩んでいます」「夫婦共働きなのにワンオペでつらい」「男と女はどっちが楽だと思いますか?」など、大人からの切実なお悩みや身近な疑問に対してズバッとストレートに答える様子がSNSを中心に話題になっています。
記事はどんなふうに作ってるの? お悩み相談コーナーを作った理由は? そもそも子ども新聞を創刊した理由は? 今年で創刊3年目を迎える「かめおか子ども新聞」の竹内博士(たけうち・ひろし)編集長にお話を伺いました。
大人の悩みに子どもが答える
——「かめおか子ども新聞」は京都府亀岡市内で月に1回、2万部を発行する日本初の子どもが書いて大人が読む新聞だそうですね。
今回、出張企画としてウートピ編集部からも子ども記者の皆さんにお悩みを送ったのですが*、夕方に送ったら次の日の昼間には返ってきたので驚きました。私は隙あらば仕事を先延ばしにしてしまうので、なぜそんなに仕事が速くできるのかを聞きたいと思いました。
*インタビュー第3回目に掲載
竹内博士編集長(以下、竹内):それではそのお悩みも子ども記者に聞いておきますね(笑)。
——ありがとうございます! それでは早速「かめおか子ども新聞」について伺いたいのですが、子ども記者の皆さんはどのくらいいらっしゃるんですか?
竹内:子ども記者は全部で10人いるんですけど、質問が送られてきたら10人で集まって、座談会形式でみんなで話し合いながらワイワイと決めていく感じです。お菓子を食べながら。
——楽しそうですね。
竹内:「そんなん別にええやん」「そんなん違うわ」って好き勝手言いながら。一つの悩みに対して、10~15分はああだこうだ言って、最終的に僕がまとめて形にします。
——毎日やるんですか?
竹内:いいえ、子ども新聞自体は月に4回です。その時に都合がいい人が来るっていう。登録してるのが10人で、男の子が8人で女の子が2人、小学4年生から中学1年生までいます。
——週に1回ペースくらいなんですね。
竹内:そうですね、普通に習い事の一環として考えているので、野球教室やそろばん教室みたいな感じかな。新聞教室っていうのがあって、それも珍しい話なのですが、習い事として来るっていう感じですね。
——お悩み相談コーナーを始めたのはいつからですか?
竹内:2018年の1月からですね。
——始めたきっかけは?
竹内:「かめおか子ども新聞」は子どもが書いて大人が読むっていうスタンスの新聞なんですよね。そこを軸に、大人に読んでもらえるもので、子どもの世界で打ち出せるものがないかなって考えたんです。
一般の新聞にも悩み相談のコーナーがあるし、夏休みにNHKラジオで放送する「子ども科学電話相談」をずっと聞いていたのもあって、あれを逆にやったらどうなるのかなと考えたのがきっかけですね。
——まさか本になるなんて……。
竹内:思ってなかったですね。今回、本を売るためのポップも子どもたちが書いたのですが「買って買って」みたいな。大人が作るポップってもろに「買って」という表現は使わないと思うんですが、子どもはストレートに「買って」って書いちゃう(笑)。
すごく純粋でシンプルな言葉が一番ウケるというか、伝わるんだなって、これを見ていて思いました。
お悩みの回答もそんなに立派なことは言ってないんですよね。「でも言われてみれば……」みたいな。大人が逆にハッと気付かされるところがあるなあと思いますね。
子ども記者は「小さいお坊さん」
——「かめおか子ども新聞」自体は2016年2月に創刊されたそうですね。子ども新聞の編集長として気付いたことってありますか?
竹内:「あとがき」にもチラッと書いたのですが、子どもだから大人より下とか、子どもだからまだ未熟だっていうのは間違っているんだなっていう発見ですかね。新しいか古いかでいったら、子どもって新しいんですよね。パソコンで例えると、彼らは新型なんですよ。
——私たちはWindows95みたいな。もっと前だけど……。
竹内:そうそう、だから一緒にいると、新しいソフト(考え)をインストールされている感じがします。「小さいお坊さん」みたいな。「人とはそういうものです」なんてことを言うんですよ。「しょせん人間は利益がないと動かない」とかね。
でも、よくよく考えるとそうじゃないですか。お金に限らず、自分にメリットがあるからモチベーションが上がるというのもあるから。的を射るというか、本質を突くものは子どものほうが持っているなという気付きがありましたね。
子どもたちの世界観を広げたい
——3年間(記者を)続けている子もいるんですか?
竹内:ずっといる子たちがほとんどですね。親御さんは習い事として通わせているんですよ。社会勉強やコミュニケーションの勉強という意味で通わせていますね。
——世の中を見渡すと変な事件も多いので、子どもが親や先生以外の大人と接する機会が少なくなるのは仕方がないと思う一方で、竹内さんのようなよく分からない大人というか、編集長なのでよく分からなくはないのですが、親や先生以外の大人と接することって貴重なんじゃないかなと思います。
竹内:子どもたちが僕のことをどう思っているかは彼らに聞かないと分からないのですが、記者の子たちって僕のことを「ハカセ」と呼ぶんです。僕の名前は「博士」って書いて「ひろし」なので、ニックネームで呼ぶんです。
「何かあったらハカセに聞こう」とか「お母さんはこう言ってくれたけど、ハカセはどう思う?」って聞いてくれる。「ハカセ」っていう一つのキャラクターで見てくれているんですよね。
そういう存在がいろいろな地域にあったら救われる子も多いのかなって思いました。特に、身近な大人の影響って受けやすいから、そういう意味ではちゃんとしないといけないのですが。
——身近な大人として意識されていることはありますか?
竹内:この活動自体がそうですけど、親以外のいろいろな大人に触れることで、子どもたちの価値観、もっと言うと世界観を広げたいなって思っています。いろいろな大人と触れる機会を意図的に演出する。それは保護者もできることだと思うんですよね。
例えば、親戚のおっちゃんの会社の話をしてみるとか、近所のおっちゃんとか、何かあるじゃないですか。
僕はたまたま新聞記者だったので、新聞っていうツールになりましたけど、子どもたちの世界観を広げるのは大人の役割なんじゃないかなと思います。
※第2回は6月21日(金)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
子どもは小さいお坊さん。『はい!こちら子ども記者相談室デス!』人気の秘密