30歳で結婚(法律婚)したものの33歳で離婚。36歳のときに仕事仲間の男性(通称”ノダD)と事実婚で再婚したマンガ家の水谷さるころさんによるコミックエッセイ最新刊『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が発売中です。
「女ばかりが家事と育児を背負いすぎない」「男だからって大黒柱にならなくていい」——。世間の「普通」や「こうするべき」に縛られないで、自分たちにとって一番心地がよい結婚生活を送るために試行錯誤を続ける日々が描かれています。
家事、子育て、ケンカ、親との関係をテーマに、4回にわたってさるころさんに話を伺いました。第1回目のテーマは「家事」です。
夫婦の揉め事の大半は家事が原因
——本のタイトルにもある通り、家事をメインテーマにした理由を教えてください。
水谷さるころさん(以下、さるころ):やっぱり、結婚生活や共同生活をしていて揉めるのは家事ですよね。お互いにとっての快適さをキープするのが家事なので、そこは話し合って詰め合っていかないとダメだなあと。
夫婦がどうやって仲良く共同生活をするかを考えたときに、何を一番話し合うのかと言ったらやっぱり家事なんですよね。夫婦の揉め事も家事が多いですよね。
「気持ちが片付いているほうが幸せ」
——あとがきの「家事とか育児の分担というのは、タスクだけじゃなくてそれをする『気持ち』の分担なんじゃないかと思う」という部分にすごく納得しました。
さるころ:タスクだけでシェアしていっちゃうと、「偏っていること」が悪いとなっちゃうんですよね。バランスさえとれていれば、タスクが偏っていること自体は別に問題じゃない。問題は、タスクが偏っているときに「私ばかり辛い」と思ってしまったり、気持ちに負担がかかっちゃったりすることなんですよね。
例えば、どちらかが100%家事をやっていても、まったく苦痛ではないという夫婦やカップルにタスクの話をしても意味がない。夫婦が本当に円満に回っているというのは夫婦の気持ちが行き違っていないということだから、気持ちさえきちんとシェアできていれば問題はないんですよね。
——確かに。
さるころ:ただ、何かのたびにいちいち「これ私のやることじゃないくない?」とか「私がこれやるの?」と不満が出てきてしまうのは、結局はタスクの問題じゃなくて気持ちのほうが問題なんですよ。
お互いが納得して一番満足できる状態で家事ができないと、家の中の状態が幸せにならない。部屋が片付いてるよりは、気持ちが片付いているほうが幸せ。部屋がぐちゃぐちゃでも、2人が「ぐちゃぐちゃでいいよ」と思っているのであれば、それは幸せじゃないですか。
だから、マンガにするときもお互いの気持ちが納得しあっているか、気持ちをいい感じにバランスをとれているかということを意識しましたね。
——「家事」についての話になると、どうしてもタスクや役割に目がいってしまい、いかに平等にするかという話になりがちですが、人それぞれだし家庭で状況や環境も違いますもんね。
さるころ:あとはやっぱり「スペック」ですね。
——スペック?
さるころ:人それぞれキャパやスペックがあるじゃないですか。どうしても細かいことが気になるタイプと大雑把なタイプがいた場合、後者にタスクを任せるととんでもないことになるじゃないですか。
——後者は、たとえ目の前にモノが散乱していても、そもそもそれを「散らかっている」と認識できないんですよね。まあ、私のことなんですが……。
さるころ:そうそう。その人の能力、才能、素質もあるので。素質がある人にそのタスクを当てたほうがいいじゃないですか。だから、「女だからやらなきゃ」とか「妻だからやらなきゃ」と、性的な役割分担で向いてないことを一生懸命やってストレスがたまって辛くなるのは幸せから遠のいちゃう。
まずはすべてを一旦止めて、「私はこれが快適」「あなたはこれが快適」のように棚卸しをして、タスクと快適さの話し合いをして、向いているほうがやるのが一番だと思うし、それがこの本を通じて伝えたかったことですね。
——やる気があるほうがやるっていうのは……?
さるころ:いいと思うのですが、やる気があるほうがやり過ぎてしまっている場合もありますよね。そういうときは気持ちをどうフォローするかを考えたほうがいい。
どうしても自分が水回りの掃除が苦手だったら、やってくれてる相手には「いつもお風呂がキレイでうれしいな」って言うとか。感謝を伝えることをトレーニングする。掃除がうまくならないんだったら、褒める努力したほうがいいと思います。
妖精がやってると思ってる
——水回りで思い出したのですが、私の場合、便座の裏をきちんと拭くとか、お風呂のタイルの裏をキレイにするとか、地味な家事を定期的にやっていたのですが、同居人にいちいち言うのも恩着せがましいなと思って言わなかったんです。そうしたら、ある日、相手が突然キレて「君は何もやってない」と大ゲンカになったことがあって……。
さるころ:言わないと妖精さんがやっていることになっちゃいますよ! やらないほうは、トイレの便座の裏には汚れが付かないものだと思っているので言わなきゃダメだなって。私も言うのは面倒くさいし、言わなくても円満に回る家庭はうらやましいなと思いますけど、うちはそうじゃないので、諦めて言っています。
——妖精がやっていると思っているのか……。
さるころ:思っていますね……。妖精といわずとも「そういう性能のトイレだ」とか思っちゃうんですよ。「うちのトイレは汚れないやつなんだ」みたいな。
——ええー!!
さるころ:うちの場合は家事のテリトリーが決まっているのですが、この前キッチンからすごい臭いが漂ってきたんです。結局、ニンニクの汁を拭いた雑巾が原因だったのですが、すぐにハイターでつけ置きして洗いました。キッチンはノダDの担当なんですが、「なんか臭ってるんだけど?」とか言わず、気になるなら気づいたほうがやるということで私が処理してあとで報告しました。
家庭は工事現場と一緒
——ちゃんと報告するんですね。
さるころ:言わないとダメです。何回も言わないとなかったことになってしまうので、面倒くさくてもお互い言うようにしています。「家庭は現場」なので。
——現場?
さるころ:そう、現場です。この前、私が前髪を切って自分の部屋のゴミ箱に捨てたんです。ゴミ処理はノダDの仕事なんですが、彼が私の部屋のゴミを袋に別のゴミ袋に移した際に前髪がバーッと散らばっちゃったらしいんです。彼は私が部屋で前髪を切ってゴミ箱に捨てたことなんて知らないから「何だこれ!」ってなって……。
彼は「ゴミ捨てするとき、出すゴミ袋の数は少ないほうがいい」と私のゴミ袋から移したけど、私はゴミ箱にかけたゴミ袋ごと捨てていると思ってるから「どうしてゴミが散らばるの?」ってなる。お互いの認識が違うからエラーが起こる。それで「前髪を切ったときは切ったと言ってくれ」と言われて、“前髪を切る時はどうしたらいいか問題”を話し合いました。
——それも話し合うのですね。
さるころ:はい。本当に細かく指差し確認をしていかないと“事故”が起こるんですよね。工事現場の指差し確認じゃないけれど、安全確認でちゃんと伝え合う。声掛けする。家庭は工事現場だと思って生活しています。
※次回(4月15日公開)のテーマは「スマホ育児」です。
(取材・文:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
「タスクではなく気持ちのシェア」家事分担するときに大事なこと【水谷さるころ】