スーパーでよく目にするキノコの一種のまいたけが、健康にとってよい食材だと話題になっています。臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に尋ねると、「まいたけには栄養素が多彩に含まれていて、健康におけるその具体的なメリットは医療界でも注目されています」とのことです。詳しいお話を聞いてみました。
まいたけは食物繊維が豊富で低カロリー
まいたけダイエットが話題になったこともありますが、キノコ類はダイエットに向く食材だと聞きます。正木医師は、それについてこう説明をします。
「キノコはどの種類も低カロリーで糖質が少ないため、たくさん食べても太ることはありません。成分では、食物繊維が豊富なことが大きな特徴のひとつですが、中でもまいたけは、複数の種類の食物繊維を含んでいて、それらが複合的に作用しあって体に良い方向に働くことが知られてきました」
「食べ順変えダイエット」では、まいたけから食べる
食感としても、まいたけにはいかにも食物繊維が豊富にありそうです。正木医師はその特徴について、こう説明を続けます。
「まいたけはほどよく噛み応えがあって、その食感は食物繊維が豊富な食物の特徴でもあります。食物繊維には『水溶性』と『不溶性』がありますが、まいたけの食物繊維は、不溶性が9割近く、残りが水溶性と言われています。
不溶性食物繊維は、水や胃酸でも溶けにくいため、胃を通過して腸まで届き、腸のぜん動運動を促して便秘を改善、予防します。
一方、水溶性食物繊維は水に溶けてゼリー状になり、胃の内容物を包んで消化器官をゆっくりと移動します。そのため糖質の吸収を穏やかにする働きがあります。これは血糖値と、すい臓から出るホルモンのインスリンの過剰な分泌を抑えます。食後に血糖値が急上昇する『血糖値スパイク』を抑えることにもつながるでしょう」
よく耳にする、「食べる順番は野菜から」というダイエット法についても、正木医師は、「野菜だけではなく、まいたけをはじめとするキノコ類から食べ始めると、さらに血糖値を抑えることができます。まいたけは多くの野菜より食物繊維の含有量が豊富です。食事のはじめに摂取する食物繊維の量が多いほど、あとから食べる主菜や主食のタンパク質や炭水化物、脂質を吸収して血糖値の上昇を抑えるのです」と言います。
たしかに、食べる順番ダイエットでは、「野菜やキノコや海藻類のおかずから食べましょう」とされます。まいたけなどのキノコ類から食べるほうがその力は増すようです。
また、「まいたけはこれらの食物繊維を合わせ持っているので、腸内フローラを整えるとも言われます」と正木医師。
腸内フローラとは「腸内細菌叢(そう)」のことで、ヒトの病気や免疫と密接に関わっている腸の状態を指します。まいたけには、これを整える力があるということです。
病気対策になるか、という研究が進んでいる
続いて正木医師は、まいたけの栄養成分のポイントについてこう伝えます。
「ビタミンやミネラルに富んでいて、とくに糖質をエネルギーに変えるビタミンB1、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、皮膚や粘膜、また免疫に関わる亜鉛、糖質や脂質、タンパク質の代謝に不可欠なナイアシンが豊富と言われます」
さらに、健康に関わる情報として、
「水溶性食物繊維のβ(ベータ)グルカンはキノコ類全般に含まれますが、とくにまいたけから抽出したそれはMDフラクションと呼ばれて、免疫機能を高め、酸化を予防すると言われます。
また、α(アルファ)グルカンという独特の成分が含まれていますが、これがインフルエンザやノロウイルスの治療に効くのでは、という研究が進んでいます。
それに、まいたけがガンや糖尿病、認知症、ストレスなどの対策になるのではと、国内外から研究報告があります。いずれもまだヒトでは証明されていませんが、まいたけは一年中、安価で手に入りやすい食材でもあり、その効用が注視されています」
天然のまいたけは日本全国で採れるそうですが、収穫数が少なくて高価になるため、スーパーで安価に手に入るまいたけは栽培されたものということです。病気の対策になるのか、今後の動向に期待したいものです。
洗わずに短時間で加熱調理し、汁まで飲む
ここで、まいたけの選び方や調理方法について、正木医師はこう話します。
「かさの部分が厚く、軸が白いものを選びましょう。弾力のありそうなものが新鮮だと言えます。キノコ類は、洗うと栄養分が水に溶けて流されるので、なるべく洗わないほうがよいでしょう。
また、長時間加熱をすると、歯ごたえや風味を失う場合があります。短時間で焼く、炒める、ゆでる、揚げる、煮るなどして食べましょう。汁物や煮物にする際には栄養素が溶け出すので、汁まで飲みましょう」
まいたけは、冷蔵庫で約3日間保存可能とされます。冷凍したほうが旨味や栄養価が増すという説もあります。冷凍するには、下部の石づきを切り落としてジッパー付きの冷凍保存用袋にいれると約1カ月は保存できるでしょう。調理時は解凍しないでカットして使うと便利で、風味もアップすると言われます。
最後に正木医師は、「まいたけは、生で食べると食中毒を起こす危険性が高いため、必ず加熱をしましょう。また、キノコにアレルギーがある人もいるので注意してください」とアドバイスをします。
あのまいたけにこれだけの栄養と健康メリットがあるとは、なんとも魅力的な情報です。冷凍庫にいつでもまいたけを用意しておき、普段の食事に一品プラスしたいものです。
(取材・文 藤原 椋 / ユンブル)
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