「丙午(ひのえうま)」生まれ*で受験戦争はらくらく通過し、バブル景気で就職活動は売り手市場、50代になっても後輩気分が抜けない——。
そんな”バブル世代”の功罪について自虐とユーモアを交えながら考察した酒井順子(さかい・じゅんこ)さんの新刊『駄目な世代』(KADOKAWA)がこのほど発売されました。
1966年(昭和41年)生まれで、平成の始まりとともに社会人としての一歩を踏み出したという酒井さん。あと2ヶ月ほどで終わりを告げる平成を振り返りつつお話を伺いました。
*干支の一つで60年に1回まわってくる。丙午の年に生まれた女性は気性が激しく、夫の命を縮めるという迷信があり、1966年に出生率の低下が見られた。
ひとつかふたつ、昭和風の「根性」を出してみる
——ウートピは働く女性向けのニュースサイトなのですが、読んで元気になったり、読者の背中を押すような記事を発信していきたいなあと思っています。読者の反応を見ていて思うのは「こうあるべき」と自分で自分に“呪い”をかけてしまっている女性が多いなあと感じていて少しでも呪いを解いていければと思うのですが……。働く女性の先輩でもある酒井さんにアドバイスをいただきたいです。
酒井: “呪い”かあ……そうですね、でも何かひとつでも、必死にやってみるのはどうでしょう。すべてが「呪い」だとして「そのままでいい」としてしまうと、変えておけばよかったと思うことも、変わらずに終わってしまいます。
仕事も結婚も子育ても料理も全部一生懸命やろうとすると壊れてしまうけれど、みんなひとつかふたつ、自分にとってすごく大切なもの、譲れないものってあるはず。そこにだけでも、昭和風の「根性」を出してみると、後から何か良いことがあるかもしれません。
——おっしゃる通り、全部解いちゃうのは極端ですね。
酒井:例えば、「結婚したい」と思っているのに「でも、まあみんなしてないし、婚活も面倒臭いしな」と思うと、どんどん時が過ぎてしまいます。本当に結婚したいのであれば、そこだけは必死になってみる。
無理しないでも頑張ることができる分野というのは、おそらく誰しもあると思うんですよ。それがその人にとっての得意分野になるかと思うので、その分野と自分の欲求と照らし合わせて探して、集中して頑張って見てはいかがでしょう。
——無理しないで頑張れることが自分にとっての得意分野なんですね。確かに好きなことや得意なことは「やめろ」ってまわりから止められてもやっちゃいます。酒井さんにとっての得意なことはやっぱり「書くこと」ですか?
酒井:そうですね。例えば資料調べが大変でも、私はその手の作業が好きなので、夜遅くまでであっても、「頑張ろう」と思うことができる。けれどほかのこと、例えば掃除などは全く頑張ることができない。緩急をつけて根性を出す感じですね。
学校の授業でも、全体的に成績は悪いけれど、この授業だけは頑張ろう、という科目を決めていました。そうしていくうちに、勉強の楽しさがわかってきたりもする。
家事でも、全部頑張らなくても「掃除だけは」とか「料理だけは」と、好きなことや得意なことに集中すると、気分も乗ってきます。
逆に呪いを全部解いて「頑張らなくていい」ということにしてしまうと、「自分はこれでいいの?」という気分になるんじゃないでしょうか。
——まったく頑張らなくていいとしてしまうと、今度は「このままでいいのか?」って不安になりますね。罪悪感を感じるというか。
酒井:自分の芯となる部分を持っているといいかなと思いますね。
好きなことがわからなかったら順番に頑張ってみる
——その芯となる部分というのは、好きなことだったり、自分がすごく熱中できるものだったりとか、人によって探し方はさまざまだと思うのですが、中には「そもそも自分が好きなことがわからない」という人もいます。
酒井:好きなことがわからない人は、とりあえず順番で頑張ってみるといいかもしれません。
長年生きてきて思ったのは、やっぱりどうしても頑張れない分野ってあるんですよ。それは要するに「向いていない」ということなので、無理して頑張らなくていい。
でも、向いている部分で頑張る訓練をしておくと、イザという時、不得意な分野でも頑張ることができるような気がします。
——とりあえず“呪い”を全部解けばいいのかなと思っていました。
酒井:「そのままでいいんだよ」も、あまりに度が過ぎると自堕落になってしまいます。
例えば、早起きだけしてみるでもいい。ちょっとだけ無理すると、ちょっとだけ結果がついてきますよ。私は、早起きはできませんけど……。
※次回は3月4日(月)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
“昭和風根性”の出しどころって? 酒井順子さんに聞く、得意分野の見つけ方