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42歳で博士号、50代で開業「こんな快進撃が人生の後半戦で起こるなんて」

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「90歳の現役セックス・セラピスト」として全米に名をはせるドクター・ルース。91歳となった現在も講演やメディア出演に活躍中。ホロコーストの孤児、元スナイパー、シングルマザー、3度の結婚……。そんな彼女の波瀾万丈な人生を描いたドキュメンタリー映画『おしえて!ドクター・ルース』が、8月30日に全国公開されます。

公開に先駆け、8月13日、東京・渋谷の映画美学校にてトークイベント付き試写会が開催されました。トークパートには、精神科医の星野概念さん、ライターで大学客員教授のトミヤマユキコさんが登場、聞き手は奥浜レイラさんが務めました。映画の感想と、対話することについて語りました。

イベントに登壇した、星野概念さん(左)とトミヤマユキコさん(右)

イベントに登壇した、星野概念さん(左)とトミヤマユキコさん(右)

人生の後半戦で活躍。こんなに夢のある話ってある?

——映画を見た感想を教えてください。

星野概念さん(以下、星野):とにかくすごい人だなと思いました。僕としては、セラピストや悩みを聞く立場では信頼してもらえないと、アドバイスも何もできないという感覚で。僕は4月に勤務先を異動して、4ヶ月経ちましたが、やっと信頼し始めてもらえているかなという感じで。信頼を得るまでは、自分の中では繊細にコミュニケーションや距離をはかっています。けれども、ルースはいきなり、明朗快活にスパッと答える。

スパッと答えるし、いわゆる放送禁止用語みたいなことも専門用語でバシバシ言うのですが、真摯に学術的に回答しているから、変なふうには聞こえないんですよね。普通はできないようなことをやり続けているように見えたのですごいなと思いました。

トミヤマユキコさん(以下、トミヤマ):セックス・セラピストのおばあちゃんの話というと、少しクセが強い作品だと思われそうですよね。観る人を限定してしまいそうな感じもありますが、私は「人生の参考書を探している人はみんな見たほうがいい」と思いました。推薦のコメントでもそう書きました。男も女も、セックスに興味があってもなくても観たほうがいい、と。

私は大学で、女性向けに描かれた漫画の中で女性労働がどう描かれてきたかを研究しています。そんな背景から、ルースの物語を一人の女性労働者の話として観て、「こんなに夢のある話ってある!?」と思ったんですよね。彼女、42歳で博士号を取っているんです。

それまでの人生も波乱万丈で。お金がなくて大変なときもあるのですが、学びへの意欲をずっとキープしていて。そんな中でチャンスが巡ってきて、40歳を過ぎて博士号を取り、ラジオに出演したのは50歳を過ぎてからですよ。人生の後半戦で思いもよらないことが次々と起こって行くというのが彼女の人生。

しかも、面白いセックス・セラピストおばさんとして消費されているわけではなくて。チャーミングだし、愛されているけれど、その分野の権威として、一人の働く女性として、リスペクトされ続けているんですね。こんな快進撃が人生の後半で起きるなんてかっこよすぎる!

日本にいると、大学卒業後にはだいたい職業が決まってしまって、40歳くらいで人生の規定路線に入ったかなと思いがちですよね。けれども、「いや、わかんないぞ」と。そういう気持ちにさせてくれる映画だなと思いました。

劇中から

劇中から

ルースは高い解像度を持っている

——星野さんとトミヤマさんは、星野さんの著書『ラブという薬』(共著、いとうせいこう・リトルモア)で著者と構成を担当したという関係です。本の中でも対話の大切さが書かれていましたが、映画からも強く感じる部分があったのでは?

トミヤマ:星野さんも言っていましたが、普通は「この人になら話してもいいかな」、「この人にはこういう言い方のほうが伝わるかな」っていうところまで行くには、セッションが必要なんです。

私も、学生に「相談がある」と言われることがあって、論文の相談かな?と思うと、恋愛の相談だったり、非常にプライベートなことだったりするんですが、話を聞いてその場で答えるというのは難しい。スパッと答えること自体は簡単なのですが、たった一つの答えを示して、「その通りにしなさい」というのは、違うじゃないですか。それが正解かどうかなんてわからないし。

だから、はっきりものをいうということは難しさを伴うのですが、ルースは、それを乱暴じゃない形でできている。例えば、バイブレーターに関するやりとりのシーン。男性の相談者に、「あなたは買いたいと思っている?」「使ったことがある?」「パートナーに使わせたいと思っている?」「彼女が使っているところを見たいと思う?」など、いくつかの問いかけをして、「じゃあ買いに行ったらいいじゃない」と言う。

短時間で、いきなり答えを出しているように見えるのだけれど、実は相手の回答に導いてもらっている部分もあるというのが、うまい。なんというか、居合切りみたいな。切れ味は鋭いんですけど、独断と偏見というわけじゃないのがすごいですよね。

星野:ルースは、見え方の解像度が高いんでしょうね。いくつか質問をしたら、「ああ、この人は」と。たくさんの人の相談に乗っているから、データベースもたくさんあるし。

悩みに答えるのは勇気がいるし、何かを決めてしまってはならないというように僕は思う。だから、決めずに、引き出すというようなやり方を僕は心がけているのですが、ルースはいくつか聞いて「なるほど、じゃあこうしなさい」と言う。そのやり方で自信を持って言えるというのは、僕らが想像するよりも、その悩みに対して違う解像度の景色や立体感を持っていると思うんです。ルースは。それができていなかったら、多分叩かれていますよ。

劇中から

劇中から

「ノーマル、嫌い」

——心に強く刺さったルースの言葉もあったと思います。

星野:僕は、ルースの息子と娘がルースについて語った場面が印象に残っています。現在もご活躍のルースだけれども、すごくツラい生い立ちを抱えている。そんなに邁進するのは、ある意味、その生い立ちを見ないようにしているのではないかと指摘するんですよ。防衛的な感じで働いているんじゃないかと。それは、近い人ならではの視点かもしれないなと思いました。「そう的防衛」みたいな。とにかく元気にして、防衛するみたいな。

トミヤマ:「そう的」というのは、躁鬱(そううつ)の躁?

星野:そう。そうですね。って、ちょっと「そう」がわからなくなってきた(苦笑)。

あのシーンを観るまでは、そんなの関係なくすごい人だなと思っていたんですけど。家族にはそんな側面が見えるということは、ご自身も気づいていないかもしれないけど、そういう部分があるんだなと思いましたね。

トミヤマ:私もいろいろありますけど、「ベッドルームの中で起こることにアブノーマルなことはない」という言葉は刺さりましたね。全ての人がある意味でノーマルであって、だからこそノーマルっていう言葉を使うのが好きじゃないっていうような言い方をするのが印象的でした。そう言い続けることで、おそらく、社会的にアブノーマルだとか、マイノリティだと見なされがちな人から、本当に感謝されているはず。

(いろんな名言が飛び出すけれども)ルースって、実は頑固に自分の思想というか、スローガンを掲げ続けていますよね。しかもすごくシンプルな言葉で。「ノーマルって言葉、嫌い」みたいな。けれど、それがたくさんの人の生きづらさみたいなものを和らげている。

強くてシンプルな言葉って、それこそ解像度が低いんですよ。わかりやすいけれど、網の目が大きすぎるザルみたいなもので、そこからこぼれ落ちてしまう人は救えない。でも、ルースの場合は逆なんですよね。強くてシンプルな言葉で、多くの人を救ってしまう。これはなかなかできないことなんじゃないかと思いましたね。

劇中より

劇中より

「SATC」が流行した理由がわかった

——女性が性についてオープンに語ること。ルースがアメリカで活動をして、知名度をあげて。彼女が耕した土壌は大きいですよね。けれども、日本の社会を見てみると、暗黙の役割みたいなものが男女の間である。セックスや生理という言葉を堂々と使うことも抵抗が残っています。私の場合は、男性の前で「生理」と言うは戸惑いがある。けれど、それって話されなきゃいけないことでもありますよね。その辺り、この作品から感じることはありますか?

星野:確かに、ルースのような開拓者は他にいないから難しいかもしれない。女性の患者さんで月経の悩みを聞くことは比較的多いです。今は新人の精神科の先生と僕で一緒に聞くんですが、二人とも男性なんですよ。

月経のことって、もちろん医学的なことは理解していますが、どうツラいとか、どのくらい痛いのかとか、やっぱり知り得ないんですよね。割とよく聞くのが「汚れるのが嫌だ」と。「生理中に汚れてしまうから、シャワーに何回か入りたいのに、病院だと入れないからその時期は家に帰りたい」とおっしゃるんです。

僕らは「それは大変ですね」と言うんだけれども、でもそれって、想像するしかできないわけで。そういう情報って、巷(ちまた)に全然ないじゃないですか。女性の友人やパートナーから聞いて想像するようになるんでしょうけど。「わかる!」って共感できるフックがすごく少ないなと思って聞いていました。だから、もっとそういうことを話すのは必要ですよね。

——わかりあうために、言葉にして話す機会が必要。とはいえ、日本では難しい部分もありますね。

トミヤマ:日本だけかわからないんですが、性について話すとき、なんとなく笑いで収めがちですよね。照れ隠しの延長で、おもしろくしゃべるとか、おもしろく聞く、みたいな。何か「おもしろ」要素を持ってこないとダメなんじゃないかという強迫観念が働いている気がします。

ルースのすごさって、観客がめちゃくちゃ入っているスタジオで、みんな盛り上がっているし、楽しんでいるんだけれども、決してお笑いの文脈で性の話を消費しているわけではないところだと思います。にこやかだけど、話の内容自体はガチ。このバランスを、日本のエンタメができるかというと、難しいと思います。この先、ルースのような仕事をする人が出てくるかもしれないけれど、現状の私たちは笑いに逃げがち。

その点、アメリカで暮らす人たちはいいですよね。ルースの番組をたくさん見て育って。性について、笑いながらも真面目に取り組んでいいのだという価値観が植え付けられている。『SATC(セックス・アンド・ザ・シティ)』が流行った理由がわかったような気がしました。

ドラマの主人公でコラムニストのキャリー・ブラッドショーは、架空の新聞「ニューヨークスター」紙で自分や友人のセックスのネタまでつづっています。そういうことを自然にドラマに盛り込めるのは、ルースが開墾した土壌があったからこそなんじゃないかと。性について語るときに、ユーモアを交えつつガチに取り組めるのだと、ルースが示したというのはかなり大きいと思います。

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——最後にこの映画を通してメッセージをお願いします……というフリが苦手な星野さんから、お願いします(笑)。

星野:そう。苦手なんですよ。僕が作った映画じゃないしなって(笑)。でも、すごくいい映画だったなとみんなで共有できればいいと思います。ルースがすごく素晴らしい人なので、これをきっかけにいろいろ考えることに意味があるんじゃないかなと僕は思いました。何歳からでも本気で勉強したらすごい人になれるかもしれない、とかね。

トミヤマ:これをおもしろいおばあちゃんの話として終わらせてしまうのはもったいないので、試写を観た人には、周りに「それだけじゃないよ」と言ってもらいたいですね。心に残る言葉もたくさん出てきます。なんとなく、セックスや身体にまつわる映画だと思ってしまうかもしれないけど、言葉にまつわる映画とも言えると思います。言葉を使わずに生きていける人は基本いません。というわけで、観た人の実人生に必ずや応用がきくと思うので、ぜひ、ご覧ください。

■映画情報

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『おしえて!ドクタールース』
8/30(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ロングライド

(構成:安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
42歳で博士号、50代で開業「こんな快進撃が人生の後半戦で起こるなんて」

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