「雨宮リカ、28歳です」の決め台詞がなんとも不気味な印象を残した、連続ドラマ『リカ』(東海テレビ・フジテレビ系)が映画化されます。
『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』として6月18日に全国公開された本作。ドラマ版に引き続き、高岡早紀さんが雨宮リカを演じています。2019年から約3年、“純愛モンスター”に寄り添い続けてきた現在の心境について話をうかがいました。
役に呼ばれているのか、自分が呼んでいるのか…
——『リカ』が映画化されると聞いてまずどんなことを思いましたか?
高岡早紀さん(以下、高岡):「そんなに多くの方から支持を得ていたんだ」と思って驚きました。同時に「私はこういう、モンスターのような役をどれだけ演じれば気が済むのかしら……」とも(笑)。そういう役に呼ばれているのか、私が呼んでいるのかわかりませんけれど。『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(1994年/深作欣二監督)のお岩さんからはじまり、『モンスター』(2013年/大九明子監督)では整形手術で理想の身体を手に入れる女性を演じました。どれも私にとって転機となった作品です。きっと本作も、そうなるのだろうと感じています。
——『四谷怪談』や『モンスター』では特殊メイクの効果もあって、外見からキャラクター像や抱えている悩みが伝わってきます。けれど、リカは彼女たちとは少し違って外見は“普通の人”ですよね。役作りについてはどのようなことを意識しましたか?
高岡:ビジュアルに関しては自分でも意見を出すようにしているので、『リカ』も台本を読んでいろいろ考えました。その中で、髪型は見ている人を惑わせるようなものにしたら面白いのではないかと。「ん? 素敵なのか、素敵じゃないのか。素敵だと思わない自分の感覚が変なのかな……?」という感じで。
怪しげな感じを出すために、わかりやすさに振り切ればただの変な人になってしまいます。私は“ヤバいやつ”を演じたいわけではなかったので、加減には悩みました。それで、ある瞬間にカツラをかぶっているように見えたらどうかな、とひらめいて。
——カツラ!
高岡:ちょっと違和感がありますよね? カツラっぽくも見えるけど、地毛っぽくもある。そんな微妙なラインにしてもらいました。よく見ていただくと気付くと思うのですが、少しオイリーにしてあるんです。そこが私のこだわり。逃亡して、アジトに潜んでいるからお風呂に入っていないかもしれないなと思って艶を加えてもらいました。
衣装に関しては、プロデューサーや衣装さんたちが試行錯誤を重ねたうえで花柄を選んで下さいました。提案を見た私も「面白い!」と乗っかって。それならば全て花柄で統一しましょうということになりました。私一人で作ったのではなく、いろんな要素を持ち寄ってみんなで作り上げたのがリカという女性です。
気づいたらリカを応援している自分に戸惑い
——こんなに長くリカと付き合うことになると、最初から予想していましたか?
高岡:予想していません。いませんけど、原作が複数シリーズあるので、怪しいなとは……。けれど、やはり見てくださる方の反響がなければこうして続くこともありません。リカのようなサイコが、まさかこんなにもみなさんに注目していただけるとは、正直思ってもいませんでした。
——私、リカを見ていてうっかり「幸せになってほしい……」と思う瞬間がありました。
高岡:うっかりじゃなくて、みんなそう思っていると思いますよ(笑)。男性が共感するのはちょっと難しいかもしれないけれど、あの“純粋さ”を懐かしく感じる女性は多いのではないでしょうか。
——高岡さんの中ではリカを見る目に変化はありましたか?
高岡:そうですね……。メディアに出るたびにリカが華やかになっていると感じることはあります。半分冗談、半分本気なんですけど。世間から注目を集めてリカも喜んでいるのではないかなと思うんですよね。
真面目な話をすると、本当はもっと世間で嫌われる役になると思っていたんです。ところがこうして感情移入したという感想が寄せられたり、「雨宮リカ、28歳です」と言っても、「なんだ、こいつ?」という冷たいリアクションでもなくて——あたたかい目で見るというほどでもないけれど——「ん? どうしたのかな?」という感じで受け入れてもらえたりしました。舌打ちの演技をしても「え? 今、舌打ちした? 空耳だよね?」という空気になるんですよ、現場で(笑)。
——みんな惑わされていますね(笑)。
高岡:そういうことも含めて、(リカがここまで支持されるのは)なるべくしてなったというか。もともとコメディの要素も入っていたし、いろいろなことが作用して今のようになったのだなと思います。映画はその集大成という感じで、今回は完全なエンターテインメント作品として仕上がっています。笑ってもらっていいし、もちろんスリルを感じてもらってもいい。切ない気持ちになるかもしれない。観る人、それぞれの感覚で楽しんでいただけたらと思います。
「もう走れません!」と伝えたけれど
——理解できる/できないは別として、リカは彼女なりの正論を持っていて、それを貫くところにある種の憧れのようなものを感じるのかなと思います。
高岡:そうですね。全然共感はできないんですけど、かつて自分にもあった純粋な気持ち。その思いに真っ直ぐにいられるのはある意味、神々しいですよね。
——高岡さんも、周囲の人から「何事にもとらわれない軽やかな人」というイメージを持たれていると思います。高岡さんなりの「自由」について教えていただけますか?
高岡:私としては何かに縛られるのも嫌だし、とらわれちゃうのも嫌ですね。自分自身が今何を思っているかということに対して、素直でいたいとは常に思っています。もちろん、我慢をする場面もあります。何でもかんでも好き勝手にというわけにはいきません。でもそうですね……。我慢と抑制はわけて考えるといいのかな。わきまえる必要があるところは我慢したとしても、自分がしたいと思っていることに不必要な抑制はしない。やりたいことがあったらやる。その欲求に対して、「今じゃない」とかやらない理由はあまり考えないようにしています。
——年齢を重ねるほど、「今じゃない」とか「今はもう」と諦める要素も増えてくる感じがあるのですが……何かに挑戦することに対して、高岡さんはどう考えますか?
高岡:確かに、できなくなることはあるかもしれません。それならば、そのときにできることを探せばいいのではないでしょうか。リカの撮影中、走るシーンがあったのですが、私は「走れません!」と言いました。結局「できる範囲でいいですから」と説得されて、走ったのですけれど。できないと思っていることの中にもやれることが見つかることもあるし、とにかく探してみたらいいと思うんです。
プライベートでは、昨年からボールペン字を習い始めて今も続けています。挑戦って、大きな目標だけではなく身の回りの小さな興味からでもいいのでは? 以前はよく「何十代からの〇〇」という言葉を目にしましたけれど、今はそんな時代でもないというか。ファッションだって、年齢を理由に着られないって感覚はなくなってきていますよね。みんな自由にいろいろな服を着ているでしょう? 私はそれでいいと思う。着たいものを着て、やりたいことをして。せっかくの人生、楽しんだほうがいいですよね。
■作品情報
『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』
6月18日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2021映画『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』製作委員会
(ヘアメイク:千吉良恵子(cheek one)、スタイリスト:寳田マリ、衣装協力:MSGM)
(取材・文:安次富陽子、撮影:青木勇太)
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情報元リンク: ウートピ
高岡早紀「もっと嫌われる役だと思ったけれど…」映画『リカ』インタビュー