インフルエンザや風邪が流行すると、周囲で咳(せき)やくしゃみをする人が気になります。
内科医で泉岡(いずおか)医院(大阪市都島区)の泉岡利於(としお)院長に尋ねると、「手洗いやうがいを心がけていても、ウイルスは予期せぬところで体内に侵入してきます。予防のためには、まずは感染経路を理解することが重要です」ということです。
詳しいお話を聞いてみました。
感染している人の咳やくしゃみのしぶきを吸い込んでうつる
はじめに泉岡医師は、インフルエンザや風邪のウイルスがどのようにして人にうつるのかについて、「『飛沫(ひまつ)感染』と『接触感染』があります」と言い、次のように説明をします。
「インフルエンザや風邪のウイルスの感染経路の多くは、『飛沫感染』です。飛沫とは『しぶき』のことです。感染している人が咳やくしゃみをすると、口や鼻からしぶきが飛び散りますが、その中にはウイルスが含まれています。その放出されたウイルスをほかの人が口や鼻から吸い込み、体内に入って感染することを「飛沫感染」と言います。ウイルスは、口や鼻からだけでなく、目の粘膜から侵入する場合もあります」
しぶきは、どのぐらいの距離まで飛ぶのでしょうか。
「咳やくしゃみでは、おおよそ、1.5~2mは飛散するとされますが、医師の間では、5mは飛ぶのではと言われています。いずれにしろ、感染している人と話すときは、できるだけ1.5m以上の距離をとるように意識をしましょう。また、電車やバス、飛行機などの交通機関や繁華街など人で混雑する場所にいるときは、飛沫感染する確率が高いことを覚えておきましょう」と泉岡医師。
次に、「接触感染」について泉岡医師はこう説明を続けます。
「感染している人や、その人が持っているウイルスに直接触れて感染することを『接触感染』と言います。言葉からして経路がわかりやすいと思いますが、次の流れです。
ウイルスを持つ人が手で口を覆って咳やくしゃみをする。
↓
手を洗わずに、ウイルスが付着した手でドアノブやスイッチ、電車のつり革などに触れる。
↓
自分がその部分に触れる。
↓
触れたその手を洗わずに、鼻や口、目に触れたり、何かを食べたりしてウイルスが体内に入ると感染する」
どちらの感染経路もリアルにイメージができました。日常生活や職場では、感染をなかなか避けにくいように思えます。
「咳エチケット」でウイルスの感染を防ぐ
そこで泉岡医師は、飛沫感染を避ける方法として、「多くの医学会や厚生労働省が推奨する『咳エチケット』を実践しましょう。自分がウイルスをばらまくこと、また吸い込むことの予防につながります」と話し、その実践法とメリットを次のように挙げます。
(1)マスクを着用する
当然だと思われるかもしれませんが、実際に毎日の習慣にしているかを見直してみてください。患者さんに聞くと、「面倒だからか3日ぐらいでやめてしまう」、「寒いときだけしている」、「自宅ではしていない」との答えが多くあります。
自分が風邪やインフルエンザにかかっているときはもちろん、咳やくしゃみがたまに出るときでも、人にうつさないように必ずマスクを着用しましょう。職場や同居の人にはもっともうつしやすいので、オフィスや家でのマスク着用は必須です。
マスクの着用法にも注意をしてください。市販の不織布のマスクは顔にフィットするように作られています。鏡を見ながら、マスクと鼻の間にすき間ができないようにして、鼻からあごまで覆います。息苦しいからと鼻を出す、またあごを出していると、マスクの意味がありません。
また、はずすときはウイルスの付着の可能性が高い口元を手で持たずに、耳のゴム部分を持ってそっとはずし、ビニールにくるんでから捨てること、1日に1回以上は取りかえるなど、マスクの取扱説明書をよく読んで使用してください。マスクを雑に扱うと、自分が感染源になると考えましょう。
(2)鼻、口を覆う
マスクをしていないときに咳やくしゃみをする際は、ウイルスが飛ばないようにティッシュやハンカチ、腕などで鼻や口を覆いましょう。このとき、ほかの人には顔をそむけ、できるだけ1メートル以上離れましょう。
鼻や口を覆ったティッシュはビニール袋に入れる、ビニール袋がなければ新しいティッシュなどで覆ってからフタ付きのゴミ箱にすぐに捨ててください。ハンカチはしぶきが飛んだ面を裏返してからビニール袋に入れて、洗うまでは使用しないようにしましょう。そのため、ビニール袋や予備のハンカチを持参しておくとよいでしょう。
(3)手で覆ったらすぐに洗う
ティッシュやハンカチでおさえるのが間に合わず、手で咳やくしゃみを覆った場合は、ほかのものにウイルスをつけないようにして、すぐに手を石鹸でよく洗いましょう。
(4)マスクの着用をお願いする
身近にマスクをせずに咳やくしゃみをしている人がいる場合は、自分や周囲の人への感染を防ぐために、マスクの着用をお願いしましょう。
「これらの咳エチケットはウイルスによる感染を防ぐだけでなく、周囲の人に不快な思いをさせないための気配りでもあります。感染を避けると同時に、自分が感染源とならないように、面倒でも習慣にしましょう」と泉岡医師。
さらに泉岡医師は、インフルエンザや風邪の症状がある場合に、次のアドバイスを加えます。
「咳や鼻水、くしゃみが出て風邪気味だと感じる場合や、睡眠不足、ストレスで疲れているときは、人混みの場所にはできるだけ出向かないようにしましょう。また、マスクを着用するだけでなく、早めに内科や耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。自分の体調を管理することが、自他ともに感染を防ぐことになります」
感染経路や感染源を理解することが予防への第一歩であり、自分がウイルスを持つ場合は、人にうつさないために、これらを毎日丁寧に実践する必要があるでしょう。自分と周囲の人のために、「咳エチケット」を心がけたいものです。
(取材・文 藤原 椋 /ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
飛沫感染の実態と予防法は? インフルエンザ、風邪のウイルスに注意 【内科医に聞く】