読者の方も編集部スタッフも、友人知人身内にも老若男女を問わずに「逆流性食道炎」について悩む人が増えています。そこで改善する方法について、兵庫医科大学病院の副院長で消化器病指導医・専門医、内科指導医の三輪洋人(みわ・ひろと)医師に連載でお話しを聞いています。
第13・14・15回は医療機関で内視鏡(胃カメラ)検査を受けた編集部スタッフS(38歳・女性)の経験談を含めて、診断法、内視鏡検査、またX線検査と内視鏡検査はどちらがいいのかなどを紹介しました。今回は、内視鏡やX線検査以外にどのような検査法があるのかについてお尋ねします。
これまで、症状や原因、悪化するとどうなるのか、謎の痛み、改善に良い&悪い食事、運動法、生活動作などについてお伝えしました。それについては文末のタイトル一覧からリンク先の記事を参考にしてください。
「食道pHモニタリング検査」とは何を診る?
——内視鏡のほかに検査の方法はありますか。
三輪医師:患者さんがつらいと訴えておられる胸やけや呑酸の症状と、内視鏡検査の結果が一致しなかったり、治療に反応しなかったりすることがあります。症状があるのに、画像ではびらん(ただれ)など異変が確認できない場合や、薬で酸が抑えられているはずなのに症状が改善しない例などです。そうした場合には、「食道pH(ペーハー)モニタリング」という検査をすることがあります。
pHとは水溶液の酸性やアルカリ性の程度を表す単位で、食道内は通常はpH6~7の中性です。それより数値が低い場合は酸性度が高いことを示します。
検査ではpHモニターの装置である直径約2ミリの軟らかいチューブを鼻から挿入し、胃の入り口の約5センチ上方に留置し、24時間の変動を記録します。食道のpHが4.0未満であれば胃酸が逆流していると考えられ、その時間がどのぐらいあるかを観察します。
——検査の手順や所要時間、費用はどうなのでしょうか。
三輪医師:一日入院をして行う場合と、外来で器具を付けはずしするときに病院へ行く場合があります。所要時間は24時間のモニタリングなので、2日間をみておいてください。費用は公的医療保険適用の3割負担で約4,000円です。
モニター中は患者さんは記録装置を携帯する必要がありますが、小型なのでさほど不便はないでしょう。また、食事や寝たり起きたりの活動も自由です。ただし、入浴だけは控えていただき、食事の時間、内容、症状を記録してもらいます。
こうして24時間のうち、pH 4.0以下の時間が5%以上の場合に逆流性食道炎(胃食道逆流症)、すなわち異常逆流があると診断されます。また、食道内がpH4以下になる時間と胸やけなどの症状が起こる時間の一致率も調べます。まったく逆流のないときに症状が出ることもよくあることです。こうした酸の逆流の程度と、酸逆流と症状の関連を調べることがこの検査の目的です。
——同様の検査で、胃液の逆流以外にもわかる方法があるそうですが、どういう検査でしょうか。
三輪医師:「食道インピーダンスpHモニタリング」
という検査を行うこともあります。食道内の電気抵抗も計測ができるため、pHの変化だけではなく、空気や胃酸以外の液体の逆流自体を把握することができます。
以前(第13回)にもお話しした、逆流性食道炎の治療薬で胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」を服用しても症状が改善しない場合、胃酸以外の何かの逆流の有無など、原因を解明するために行います。
「食道内圧検査」はどうする?
——さらに、食道の運動機能を診る検査もあると聞きます。
三輪医師:「食道内圧検査」といいます。食道の運動の状態は内圧に反映されるため、内圧を測定します。
以前に逆流性食道炎による胸の痛みと、心臓の病気による痛みは間違われやすいことをお話ししました。「急に胸が痛むので心臓発作だと思ったけれど、心臓の検査をしても異常が見られず、実は逆流性食道炎だった」というケースは多いのです。
食道が伸びたり縮んだりする蠕動(ぜんどう)という働きに問題があると、食べたものが食道に滞留しやすくなり、胸が痛む、吐き気がある、ゲップがひどい、のどや胸がつかえる感覚を訴える方がおられます。
この場合は内視鏡検査では異常が見つかりにくく、こうした食道の異常を疑う方を対象に、食道内の圧力を計測して蠕動の状態を調べます。検査は、「1センチ間隔で36個の圧センサーが取り付けられた直径4ミリの細い管」を鼻から胃まで挿入し、食道の内圧の変化を細かく連続的にとらえます。
——手順や所要時間、費用はどうでしょうか。
三輪医師:先ほどお話しした管を鼻から胃の中まで挿入してから、一定の間隔で少量の水を飲んでもらいます。すると、食道の収縮が見られ、その強度や伝わり方を圧センサーがとらえます。こうして食道の運動機能に障害があるかどうかを確認します。
検査時間は約30分で、来院から帰宅まで約2時間です。費用は公的医療保険適用の3割負担で約6,000円です。まだ導入している病院は多くはありませんが、これまでわからなかった病変への診断が確定できるようになりつつある検査法といえます。
聞き手によるまとめ
逆流性食道炎の検査には、内視鏡検査以外に、食道のpHや電気抵抗を観察するモニタリング、食道の内圧を検査して運動機能が正常かどうかを調べる方法があるとのことです。つらい症状や程度、またほかの病気の可能性などによって複数の検査があるようで安心しました。不明なことは医師によく相談して取り組みたいものです。
次回・第17回は、逆流性食道炎の治療薬について紹介します。
(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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