10月7日、国際NGOプラン・インターナショナル主催による無観客トークイベント、「THINK FOR GIRLS/コロナ禍の女の子たちのために私たちができること」がTwitterとInstagramでライブ配信されました。
本イベントにゲストで登壇したのは、スプツニ子!さん(アーティスト・東京藝術大学デザイン科准教授)と大崎麻子さん(国際協力・ジェンダー専門家)です。
新型コロナ感染症という世界共通の課題に直面し、国や地域の枠を超えて大きなターニングポイントとなった2020年の国際ガールズ・デーを目前に、コロナ禍における女性の現状やアフターコロナの時代における女性の可能性、私たちができるアクションについてトークが展開されました。全3回のリポート記事の第2回は、コロナ禍によって世界の女の子たちがどのような負の影響を受けているか語られました。
コロナによって負の影響を受ける女の子たち
大崎:このコロナ禍において国連総会が開催されていますが、国連事務総長が特に強調しているのが、コロナへの対応や経済的な復興過程におけるすべての対策の議論において、女性や女の子を中枢にすえないといけない、ということです。それはつまり、コロナの影響が女性と女の子に集中していることが明らかになり、レポートとしても出ているからですね。また、女性と女の子では性別は同じでも受けている影響に違いがあるので、別々に考えなくてはならない。
スプツニ子!:具体的にどのような結果が出ているのでしょうか。私のイメージですと、仕事をなくして貧困に陥ることや、家にいる時間が増えることで家庭内暴力が発生すること、あとは予期せぬ妊娠が増えること、などです。
大崎:まさにおっしゃる通りです。コロナによるロックダウンによって、基本的には家にいる時間が増えることと、学校が休校になること、この二点によって起こる負の影響は非常に大きい。
スプツニ子!:休校になると、教育を受けられなくなりますね。
大崎:スプツニ子!さんのご指摘の通り、調査の結果、家庭内の暴力、児童虐待や性暴力、性的な虐待が増加しています。また、外出ができないので暴力の被害にあったときや予期せぬ妊娠をしてしまったときにヘルスサービスにアクセスできない。やむをえず外出をすることになった際に、人が外に少ないせいで暴力を受けやすい状況になっているんです。
「教育を受けられない」ことに関してもその通りなのですが、それ以前の段階で問題はいくつも起きています。たとえば給食が支給されないことによる栄養面での問題、また、学校が女の子たちにとっての唯一の社会との接点だった場合、家庭内暴力やネグレクト、無理やり結婚をさせられそうになった場合、教師が気づいて通報できていたのが、できなくなります。
スプツニ子!:学校は教育だけでなく、ライフラインとして機能していたんですね。
大崎:そうです。その機能が止まってしまった地域があるという現状があります。今回のテーマにも組まれているデジタルの観点では、オンラインで授業ができる学校や家庭が限られてしまうという問題があります。家にデバイスやWi-Fiがある家はいいですが、そうじゃない家庭の方が圧倒的に多い。そういう意味では教育面での格差がさらに広がっていく可能性があります。
スプツニ子!:確かにそうですね。
思春期にSNSと接するリスク
大崎:また、オンライン上のハラスメントの被害も報告されています。サイバーセキュリティが危うい地域では、女の子が住んでいるところを特定されてしまうことも。
スプツニ子!:誹謗中傷やヘイトスピーチなどが起こりやすいソーシャルメディアに多感な10代の女の子たちが接することの影響は、世界全体で考えないといけないなと思っています。特にインターネットって、フェミニズムの話をする人やLGBTコミュニティの人、人種的マイノリティの人たちに対して攻撃が起こりやすい側面がある。そういう場所に、人格形成がおこなわれている最中の子どもたちがさらされてしまうのはかなり問題だな、と。
大崎:おっしゃっていただいたように、思春期の子どもたちは男女関わらず、自分のアイデンティティや自己肯定感などの源泉をSNSなどに求めてしまうこともあるでしょう。そこで、ジェンダーロールとかジェンダーイメージが形成されてしまう可能性がありますよね。「イケてる女の子とはどういうものなのか」というように。
スプツニ子!:私たちのような大人でも戸惑う世界ですよ。でも、だからこそコンピューターサイエンスの領域に女性がもっと入ってくるべきだなと思うんです。ソーシャルメディアを作っている人たちって、コンピューターサイエンスを勉強してきたエンジニアたちなわけです。どのようにアプリをデザインするかで社会ってすごく変わるんですよ。だからこそエシックス(倫理)が重要だし、多様な人たちが開発に関わることが大事。そういう意味でも、女性にはもっとこの領域に関心を持って参入してほしいなと思います。
(構成:園田もなか、編集:安次富陽子)
- コロナ禍の女の子たちのために私たちができることって?【国際ガールズ・デー2020】
- 生理がきっかけで学校を辞めてしまう女の子たちもいる【安田菜津紀】
- 「小さな成功体験」が世界も自分も変えていく【国際女性デー2019】
- 「結婚したいより、産みたいが先に来た」 櫨畑敦子さん×佐々木俊尚さん
- 角田光代・増田明美が途上国を訪問して思うこと【国際女性デー2019】
- 「怒りに気づくのは希望」角田光代と売春宿に売られた女の子たち
情報元リンク: ウートピ
貧困、予期せぬ妊娠…コロナ禍で負の影響を受ける世界の女の子たち【国際ガールズ・デー2020】