女の子たちが自信を持って生きるには何が必要なのか——。
「国際女性デー」の前日である3月7日、東京ミッドタウン(東京都港区赤坂)で『国際女性デー2019』トークイベントが開催されました。
主催は、国際NGOプラン・インターナショナル(以下、プラン)。ウートピでは、このイベントで基調講演を行った国際協力・ジェンダー専門家でプラン理事の大崎麻子さんのお話と、作家の角田光代さん、スポーツジャーナリストの増田明美さんの対談の様子を全3回に分けてお届けします。
行ってみないとわからないことがある
大崎:角田さん、増田さんにはプランが活動を展開している国々に実際に行っていただいています。これまでどのような国のどのような課題を視察なさっているのでしょうか?
角田:私は2009年に初めての依頼を受けて、マリ共和国に行きました。現地では女性性器切除の現状を知りました。その2年後にインドへ。それからパキスタン、コロンビア、去年はヨルダンに行きました。
行くたびに思うのは、「女性の差別をなくそう」といってもその国、その地域が抱えている問題が多種多様であることです。そしてそれは現場に行って初めて伝わってくるものだということ。そこで暮らす女性たち、子どもたちに話を聞いてわかったことがたくさんあって、行くたびに新たな発見があると感じます。
大崎:印象に残っている国はありますか?
角田:どの国の記憶も強烈なのですが、あえて言うならば最初に行ったマリ。首都から車で8時間くらい行くと、バンディアガラの断崖という名所があって。私たちはその近くに滞在していたのですが、そこから村に行くには毎日2時間3時間ジープに揺られて……という 経験をしました。
村では女性だけを集めて「女性性器切除をどう思う?」と話を聞きます。「女性性器切除は大切なことだから絶対やめない」という人もいれば、「もうやめた」という人もいたりして。私はそれまで、「女性性器切除をやめよう」と主張する中心には欧米の人がいるのだろうと思っていたんです。ところがそうではなくて、その国の女性たちが一生懸命活動をしていたのが印象深かったですね。
彼女たちの中には小さいお子さんがいる人もいるんですけれど、村を説得する役割としてある程度まとまった期間家を出て。すごく大きなビデオセットなどを持って、村に行くために谷を降りたりよじ登ったり……。これが本当にすごい谷なんですよ。その努力を思うと泣けてしまう。
大崎:「よじ登る」とおっしゃる通り、相当な谷だったのだと思います。そもそも谷に行くまでにジープで2、3時間ドライブなんて相当なオフロードですよね。
角田:すごい道でした。人数が多かったので、2台に分かれていたのですけれど、運転がうまい人と下手な人がいて。うまい人のほうに乗るとちょっとガタガタと弾むくらいですむのが、下手な人のほうに乗ってしまうとロデオみたいな感じで(笑)。
声の小さな女の子たちが笑顔に
大崎:増田さんはいかがでしょうか?
増田:話を聞いて、光代さんはやっぱり行くところが違うなと思いましたね。性器の切除とかって私は怖くてとても行けそうにない……。私が今まで行ったのは、2010年にラオス。14年に西アフリカのトーゴ。18年がベトナムです。光代さんの言うように、その場所の空気や、話を聞いて感じることが多かったですね。
女の子のエンパワーという意味では、私はトーゴが印象深かった。トーゴはガーナの隣にある国で国民一人当たりの年間の食費が約5万円という世界でも貧しい国のひとつです。ちなみに、お隣のガーナは15万円。それだけ違うと、女性は何でも後回しにされがちだし、男尊女卑も強い。特に女の子に対しては、教育を受けられなかったり、早すぎる結婚に出されたり、人身売買のターゲットにされることもあります。
そんな中でプランは、トーゴの農村部に女子サッカーチームを作ったの。12歳から18歳までを対象に20のチームが作られました。選手だけじゃなくて、実況レポーターや審判も女性で。するとどうなったかというと、女の子の声が大きくなったんです。話す時の声が。
大崎:自信がついたんですね。
増田:そう。試合に勝つ経験なんかを通して自信がつくのね。親善試合を見せてもらった後に話を聞くと「大きな声で話せるようになった」とか「将来は国のリーダーになりたい」「ジャーナリストになりたい」って。自尊感情が芽生えると人って変わるし、道も開けていくんだなと感じました。
自分のしたことが返ってくるとキラキラ輝く
大崎:角田さんは18年8月にヨルダンにも行かれましたね。シリアの難民キャンプを視察されましたが、いかがでしたか?
角田:はい。私は2つあるシリア難民向けのキャンプのうち、アズラック難民キャンプに行きました。衛生状態がよくないだろうと思っていたのですが、実際には同じ形のプレハブが整然と並んでいて、これはもう街だなと思いましたね。
見聞きしていると、衣食住が足りないところから始まって、各国のいろんな団体やボランティアの尽力で最低限の暮らしはできているように感じました。だけど、やっぱり女の子の教育の必要性は漏れていましたね。実際の読み書きや現代教育は「女の子はやらなくていいんだよ」という意識で。
大崎:プランでは他のチームと一緒になって勉強を見たりもしていますよね。
角田:はい。そこで私が印象的だったのが、プランが先生として積極的に雇っているのもシリア難民の女性たちだったことです。その先生たちがとても嬉しそうだったんですよ。後日そのことをプランの本部で話したら、彼女たちは少しだけれども賃金をもらっているとのことでした。そこですごく納得したというか。やっぱり、働いて自分の力で何かしらの価値のあるものが返ってくるというのは、人をキラキラさせるのだなと思いましたね。
増田:お金をもらえるのはもちろんだけど、人の役に立っていると思えるのは嬉しいことですよね。それは途上国がどうこうじゃなくて、私たちだって同じじゃない? 光代さんは書籍を通して女性たちを励ましているし、私はスポーツの力を信じてる。
(構成:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
角田光代・増田明美が途上国を訪問して思うこと【国際女性デー2019】