“毒親”ではない。きょうだいとの関係も悪くない。でも、なんとなくモヤモヤしてしまいがちな家族との関係。この憂うつをどうしたらいいの?
ということで、浄土真宗本願寺派の僧侶で、『あなたは、あなた。』(アルファポリス)を上梓した、大來尚順さんに、都内で働く女性の実家にまつわるお悩みを相談してみました。5回にわたってお届けします。
<今回のお悩み>
3年前に父が定年退職しました。現在は専業主婦の母とふたり暮らしです。私は都内で働いていて、結婚を考えているパートナーがいるのですが、子どもは産まないつもりです。けれど、私は一人っ子なので、孫ができないとなると、この先両親はずっとふたり……。ネコや犬などペットを飼うことをすすめてみようかなと思うのですが、これっておせっかいでしょうか?
(36歳、未婚、フリーランス、長野)
ずっと側にいることはできない
あなたのご両親を思う気持ちが溢れるお悩みですね。結論を先にお伝えすると、あなたの助言は決しておせっかいということにはなりません。ただ大事なのは、そのタイミングです。この理由をお話させて下さい。
まず、最も重要なのは、あなた自身が幸せになることです。あなたが結婚し、子どもは産まないという決断をするとしても、ご両親は、ひょっとしたら内心ではお孫さんを願うこともあるかもしれませんが、それ以上に心から願っていることは、一人娘であるあなたの幸せです。子孫のことは二の次です。
あなたが一人娘として、ご両親を心配する気持ちは、とても尊いものです。しかし、親の思いとしては、あなたに自分達のことよりも、あなた自身の幸せな生活を考えて欲しいと願うものなのだと思います。
この先のあなたの長い人生を考えたとき、親はずっとあなたの側にいて支えることはできません。だからこそ、あなたが結婚する/しないに関わらず、どんな形であれ、あなたに幸せに暮らしてもらうことが願いのはずです。
あなたが幸せを感じる生活をしていなければ、ご両親にとってはどんな助言も効き目のないものとなってしまいます。なぜならば、素直にあなたの助言を受け入れる以前に、あなたの心配が先行してしまうからです。
『百喩経』(ひゃくゆきょう)という仏教のお経の中に、こんなたとえ話が書かれています。それは、土台のない建物はないというものです。3階建てのビルを建設する際、3階だけを造ることはできません。土台があり、2階があってはじめて3階のフロアが建設可能となります。つまり、まずはしっかりとした基盤を固めなければならないということです。
この話をあなたに当てはめると、まずはあなた自身が幸せだと思う選択をし、しっかり生活していくことが大事だということです。しっかりした土台がなければ、ビルがぐらついてしまうように、あなたの助言はかえってご両親に不安を与えるものとなりかねないのです。
だからこそ、今はあなた自身が幸せになることに傾注して下さい。別の言い方をすれば、それがご両親への恩返しにもなるのです。
親には親の生活がある
そして、もう一つお伝えすることがあります。それは、ご両親はあなたの心配とは裏腹に、意外と楽しく生活をされるということです。
現在、私には離れて暮らす親がいます。私は姉が2人の3人姉弟ですが、全員親元から遠く離れて生活している状態です。昔は5人が暮らしていた家に、両親は2人きりになってしまいました。当初、そんな両親を心配し、姉たちといろいろと相談しました。極力帰省するようにしよう、こまめにメールや電話をしよう、それこそペットを飼うようにすすめようとも話ました。
しかし、すべては取り越し苦労でした。当の本人たちは、やっと子どもが手から離れたと言わんばかりに、これまでできなかった旅行や習い事をするようになり、二人の時間や趣味を楽しむようになったのです。これには、私たち姉弟も笑いました。
ご両親には、ご両親の生活があります。子どもには分からない二人の関係もあります。こちらが思っている以上に、好き勝手されることでしょう。必要であれば、自分たちでペットを飼い始めることもあると思います。端的に言うと、あまり心配する必要はないということです。
助言をするタイミングとしては、あなたが心から幸せと感じている時です。そして、ご両親が楽しんで生活しているように見える時です。どちらも裏を返せばあなたが幸せでいてくれることをご両親が確認されているということです。そんな時こそ、あなたの助言の効果が高まるのです。
今回は、あなたの優しさ故のお悩みでしたが、今はあなたの幸せな生活に目を向け、ご両親へ助言するのはもう少し待ってみて下さい。もちろん、ご両親への思いは大切にされて下さい。
(大來尚順)
最終回は9月5日(木)公開です。
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情報元リンク: ウートピ
親に生きがいを持ってほしいと思うのはおせっかい?【お坊さんに聞いてみた】