健康診断や、別の病気で病院に行ったら高血圧と診断され、「まさか自分が…と驚いた」という人が増えています。そこで「高血圧と言われた、どうする?」と題し、日本臨床内科医会常任理事で同会認定専門医の正木初美医師に連載で対策について聞いています。
第1回(リンク先は文末参照)は、高血圧と診断される基準について、第2回(同)は病院や家庭で測定したときに数値が違う理由について紹介しました。今回は、自分で家庭で血圧を適切に測る方法について尋ねます。
自分で測り、毎日手帳に記録する
——これまでに、血圧は1日の間でも大きく変動すること、興奮時や緊張時には上昇すること、診察室と家庭では測定値がかなり違うといったことを教えてもらいました。また、「診察室血圧が高くても家庭血圧が正常であれば、薬による治療の必要は当面はない」とのことでした。そうすると、家庭で自分で測定する必要がありそうです。
正木医師:はい、医療機関では「家庭血圧」の測定を推奨しています。家庭でご自身で測る家庭血圧は、多くの場合、医療機関で測る診察室血圧よりも低くて安定しているからです。
ご自身の家庭血圧を把握しておくと、高血圧の予防や治療にとても役に立ちます。高血圧と診断されたら、医療機関や薬局で配布される「血圧手帳」を受け取ってください。そして、家庭で計測した血圧の数値とともに、食事、睡眠、運動、メンタルの状態などを記録していきましょう。これは治療の効果を高めることにつながります。
血圧手帳は市販品でも多様に揃っています。紙で1年分記録できるタイプや、スマホのアプリもあります。高血圧だと診断されていない場合でも、近い将来の健康のために、家庭血圧の測定と記録を試してみるとよいでしょう。
1日2回、起床時と就寝前の穏やかな気分のときに測る
——記録していくと体調管理にもなりそうです。家庭で自分で計測するにあたり、時間帯や気分で、また測り方によっても数値が変わると聞きます。
正木医師:血圧は数秒後に再度計測しただけでも、数値が変わります。血圧はそれほど変動が激しい、繊細な生体の活動です。実際に計測してみるとわかりますが、日中の仕事中や運動後すぐ、イライラしているとき、就寝前のリラックス時、静かな音楽を聴いているとき、穏やかな気分のときではそれぞれに数値がかなり違います。
——家庭で測るに際に、推奨されるタイミングはありますか。
正木医師:毎日できるだけ同じ時間帯、同じ環境で測定し、平均の数値を把握しましょう。タイミングは、「起床後1時間以内と就寝前の合計2回」です。細かく言うと、「起床時は排尿後、朝の服薬前、座って1〜2分間安静にした後」、就寝前も「座った姿勢で1〜2分間安静にした後」、つまり静かな生活動作時の計測が望ましいです。
数値の変動が激しくなるのは、ウオーキングやジョギング、筋トレなどの運動直後や、食事、飲酒、喫煙、入浴の直後、かなり暑い、寒いと感じる場所などでの計測です。これらのタイミングでの計測は避けましょう。
——高血圧の診断基準(第1回参照)は、「診察室血圧では、上が140mmHgまたは下が90 mmHg以上」、「家庭血圧では、上が135 mmHg以上または下が85 mmHg以上」ということでした。微妙な上限ギリギリの数値だと何度も測りたくなります。
正木医師:医師の指導がない限り、原則として2回計測して、手帳には2回分とも記録してください。あまり神経質に何度も測る必要はありません。不安なことがあれば医師に相談しましょう。
——家庭血圧計がたくさん市販されています。どういうタイプを選べばいいでしょうか。
正木医師:日本高血圧学会では、血圧計について、「上腕(二の腕)にカフを巻くタイプを選びましょう。手首に巻くタイプは、どうしても値が不正確になりがちなので注意して使ってください」と呼びかけています。上腕部は心臓の高さに近いので、もっとも計測値が安定しているからです。
計測の姿勢は、テーブルや机に血圧計を置き、イスに脚を組まずに座って測ります。そうすると上腕部が心臓の近くにくるからです。計測時は、動いたり話をしたりしないようにしましょう。
——利き腕とその反対側の腕ではどちらで測ればいいのでしょうか。
正木医師:どちらでもよいのですが、一般に、利き腕が右の場合は、左の上腕部で測ることが多いです。左右の両方の腕で計測してみて、もし大きな差があるときは、動脈のどこかに詰まりが生じていることもあるため、医師にすぐに相談してください。
——家庭血圧の測定をどれぐらい継続すると、自分の血圧が把握できますか。
正木医師:高血圧と診断された場合は治療に役立てるために、体重を測る感覚でずっと継続することが望ましいです。高血圧と診断されていない場合は、まずは1年は計測して、変動を見つめると自分の状態を把握することができて予防につながるでしょう。
聞き手によるまとめ
自分で血圧を測る際には、朝起きて1時間以内と夜寝る前の静かな生活動作のときに、椅子に座って、二の腕にカフを巻くタイプの血圧計で測定するのが良いということです。手帳やスマホのアプリに記録をして自分の血圧を把握すると、体調管理への意欲もアップしそうです。そして高血圧予防、また治療に役立てたいものです。
次回・第4回は、高血圧が全身に与える悪影響について紹介します。
(構成・取材・文 品川 緑/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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