毎年11月14日は「世界糖尿病デー」です。糖尿病は世界中で拡大しているため、その脅威に対応しようと、2006年に国連が公式に認定しました。日本でも、30代で糖尿病予備群と診断されるケースがとても増えています。
前回の記事、「糖尿病予備群と言われた! 血液検査のどこを見ればいい?」では、健康診断で「糖尿病予備群」と指摘された35歳女性・A子さんの例をもとに、血液検査結果の血糖値とHbA1c(エッチビーエーワンシー。または、ヘモグロビンエーワンシー)の数値の見方について紹介しました。
今回は、糖尿病の引き金になるという「肥満」と「メタボリックシンドローム」(以下メタボ)について、自分で計算する方法やそのリスクをお伝えします。
ひき続き、糖尿病専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある、ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)の福田正博院長に尋ねました。
肥満だと糖尿病リスクは倍増に
糖尿病予備群と言われたA子さんは、再検査をした病院で医師に、「将来的に糖尿病を発症する可能性が非常に高い」と診断されたと言います。福田医師は、予備群の段階で治せるかどうか、また発症を早めるか遅らせるかについて、「肥満やメタボではないかの体型、それに食生活、睡眠、運動の様子など、生活習慣が深く関わってきます」と話します。
どきっとすることですが、まず「体型」とは、よく言われる肥満は危険だということでしょうか。
「そうです。肥満度が高くなるほど、糖尿病を発症する確率が上昇することがわかっています。自分が肥満やメタボかどうかは、身長、体重、おなかまわりのサイズ(腹囲)で簡単に計算できます。肥満は身長と体重を、メタボは腹囲を目安とします。次の式で求めてください。健康診断時の数値があればそれを、なければ自分で測って用いましょう」と福田医師。
<肥満かどうかは、BMI(ボディ・マス・インデックス。体格指数)を計算する>
BMI=体重(㎏)÷身長(m)の2乗
例)身長が160㎝で体重が60㎏の場合 60÷(1.6×1.6)= 23.8 となる
・日本肥満学会が定める基準で、BMIが22になる場合の体重を「標準体重」と呼び、この場合がもっとも病気になりにくいとされています。18.5以上25未満は「普通体重」、18.5未満は「低体重(やせ)」です。
・BMIが25以上が「肥満」で、糖尿病、脂質異常症(※)などの発病率が2倍
になり、30以上は高度な肥満として積極的な減量治療が必要です。肥満度は、次の4段階に分類されます。
25~29.9は肥満度1、30~34.9は肥満度2、35~39.9は肥満度3、40以上は肥満度4
※「脂質異常症」については、「コレステロール値が高い」と言われたけど…検査結果の見方は?」を参照してください。
女性は腹囲が90㎝以上ならメタボに注意
次に福田医師は、「メタボの診断基準」について次のように説明をします。
「おへその高さの腹囲が男性は85cm、女性は90cmを超えていて、高血糖・高血圧・脂質代謝異常のうち、2つに当てはまるとメタボであると診断します。また、そのうちの1つにあてはまる場合を『メタボ予備群』とします。
高血糖の診断基準は、空腹時血糖値が110以上、高血圧は上(収縮期)が130以上・下(拡張期)が85以上、脂質代謝異常は中性脂肪値が150以上・HDLコレステロール値が40未満のいずれか、あるいは両方の場合を言います。血液検査の結果を見てください」
おなかの出っぱりは病気の元凶
「おなかが出ている」ことが糖尿病のリスクになるようですが、何がどう悪いのでしょうか。
「腹囲の大きさは、おなかの内臓に脂肪がいっぱいからみついている状態を示しています。その脂肪を『内臓脂肪』と呼び、肥満で内臓脂肪が多い体型を『内臓脂肪型肥満』と言います。
内臓脂肪が増えるとさまざまな悪玉のホルモン様物質が分泌され、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こします。これが血管が狭くなったり詰まったりする動脈硬化の進行を促します。その結果、心筋梗塞や脳卒中、腎不全などの怖い病気がドミノ倒しのように襲ってくることを『メタボリックドミノ』と呼びます。
内臓脂肪は見た目ばかりではなく、体内から老化を促進させる元凶と言えます。メタボの人が糖尿病を併発している場合はとても多いのですが、メタボ予備群でも、糖尿病を発症する確率はかなり高まります」(福田医師)
脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪がありますが、それらはどう違うのか、また内臓脂肪が病気をまねく理由については後の回でお伝えします。
女性のおなかまわりが88㎝ならメタボはセーフ?
先のA子さんの「血圧は上が145・下が90で高血圧、脂質代謝異常はなし、腹囲は88㎝でメタボの基準値から2センチ少なくセーフ」ということですが、これはどう考えればいいのでしょうか。
「腹囲はあくまで目安です。1~2㎝の差に大きな意味はありません。内臓脂肪の量はCTを撮らないと測ることができないために、目印として腹囲が決められています。前回、血糖値やHbA1cの数値が基準内のギリギリだった場合についてお話ししましたが、腹囲も、88㎝だからセーフと思うのは早計です。ちょっと食べすぎる、運動不足などだと、2㎝はすぐに増えるでしょう。
A子さんの場合はとくに、血液検査にて、すでに糖尿病予備群と判明しており、血圧も高値であり、明らかなメタボと考えてください。糖尿病に進行するリスクがとても高いという現実を見つめて、すぐに健康的な減量での『腹やせ』を目指した生活をスタートする機会としましょう」
腹囲もやはり、ギリギリの数値はセーフではないとのことです。肥満やメタボかどうかは、現在はもちろん、すぐ先の健康状態を暗示しているのでしょう。福田医師はかねてから、「糖尿病は『腹やせ』で治そう」と強調されています。その具体的な方法は後の回で紹介します。
また、冒頭でお伝えした世界糖尿病デーについて、「国連総会にて特定の病気に関して決議されたのは、糖尿病がエイズに次いで2番目のことです。これを記念した当日は世界各地、日本でも著名な観光地の建物が国連と糖尿病撲滅のシンボルカラーであるブルーにライトアップされて、糖尿病の予防を啓発します。それほどに糖尿病は、世界規模で取り組まねばならない病気だと認識されているわけです」と福田医師。
食べすぎ飲みすぎ、太りすぎ、おなかの脂肪はいつも気になっています。この日を機会に、自らの体の状態を見つめてみたいと思います。
次回は、自分で糖尿病のリスクを判定する方法などについて紹介します。
※診断基準、数値などは2019年10月時点のものです。
(構成・取材・文 海野愛子 / ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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