婚活サイト「キャリ婚」を主宰する川崎貴子さんが「令和の共働き婚」をテーマに、それぞれの分野で活躍するプロと対談する連載。第5回のゲストは、少子化ジャーナリストで、政府の働き方改革実現会議の委員も務める白河桃子(しらかわ・とうこ)さんです。前後編。
“予算感”がない? 共働き夫婦の貯金額が少ないワケ
川崎貴子さん(以下、川崎):白河さんの著書「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」(毎日新聞出版)の中で、すごく面白かったのは、現時点で夫の平匡(ひらまさ)さんは高収入だから、主人公のみくりは家事だけやっていればいいんだけれど、ここから十数年たつと、平匡さんはエンジニアなので収入が下がっていくと分析されていたところです。
白河桃子さん(以下、白河):そこに目を留めてくださってありがとうございます。平匡さんは高年収で、年齢は10歳上。子供を2人つくって、みくりが2人目を産んだ後専業主婦になってしまうと、片働きでゆくゆく赤字になるという想定が1つ目のパターンなんです。
2つ目は、平匡さんはエンジニアなので40代くらいで年収が打ち止めになると想定し、そこをみくりさんが正社員になって補うパターン。平匡さんは、「妻のキャリアをサポートするために子供二人が小学校に上がりきるまでは残業しない」と条件を付けて働きます。
3つ目は、平匡さんが一度会社を辞めて子育てをしながら大学院に行き直し、その間はみくりさんが正社員として稼ぐパターン。この場合、その後仕事に復帰する平匡さんとWキャリアアップを狙えます。3つパターンを比較して「将来の赤字額がこんなに変わる」と提示したんですよね。
川崎:「夫のほうが高収入なので、人に子供を預けてまで私がフルタイムで働く必要があるでしょうか?」という質問をよく受けるんですけど、長期ビジョンのない共働き夫婦が多いですね。夫の収入がダウンする時期と子供の大学入学が重なって、はじめて焦る。
「年収が800万円あるから、家で子育てしていよう」なんて言っていられる場合ではないんです。共働き夫婦は、こういうシュミレーションをもっと見ていかなければいけない。すごく漠然とした不安は持ってるのに、ビジョンをちゃんと描かない人が多いですね。
かえって、夫が一家の大黒柱で妻が専業主婦という夫婦は貯金ができているんですよ。共働き夫婦のほうが、意外と貯金額が少ない。外食しようとタクシーに乗ろうと、「共働きだからいいや」と考えていて「予算感」がない。「両方働いてるから、お金のことはあまり言い合いたくない」という夫婦も多い。
白河:うちなんかまさにそう。反省しています。子供ができてやっと1つの財布になる夫婦が多いですね。だから、そういう何かの節目で見直せるチャンスがあるなら、見直したほうがいいと思います。結婚は経済を共にするM&Aみたいなもの。逆にそこがなかったら、結婚って何の意味もないよね。ただお付き合いするだけでもいいですから。
川崎:だったらシェアハウスのほうがいいかもしれない。
本当にその「結婚」は必要?
白河:婚活ブームから10年たった変化でいうと、「結婚は必ずしも、その人の生存確率に貢献するわけではない」という考え方が出てきたこともありますよね。
前回お話したような、結婚を「サバイバル戦略」と位置づけている若い共働き夫婦なら、収入が倍になるし、子育てもできていいのですが、「そんなに稼げません。家事・育児もやりません」みたいな人と結婚してしまって、うっかり自分も仕事を辞めてしまったりすると大変。
「この人と結婚したら、自分の生存確率が上がるだろうか?」と考えると、マイナスになる結婚もある。結婚すればいいというものでもない。結婚というもの自体が、厳しく世の中から問われている時代になったと思っています。
川崎:結婚は最終的なリスクではないんですよね。経済を手放すことが最終的なリスクであり、経済力がないから離婚すらできない人もいっぱいいる。「自分の食いぶちは絶対に手放さない」ことが命綱。そして、「家事と育児は女性がやるものだよね」みたいな男性が近づいてきたらじんましんが出るくらい、サバイバル本能鍛えないと(笑)。
彼氏が途切れないのはいつも草食系と付き合っているから?
川崎:結婚相手を決めるポイントとしては、彼氏の友達夫婦を見るとよく分かりますね。お友達には同じような価値観の人が多いので、家飲みやバーベキューなんかをやってみるといいかも。
白河:男友達が少ない人のほうが、今の時代はいいかも。「男の中ではつまはじき」みたいな人がいい(笑)。だって女性の友達になってくれるじゃないですか。
川崎:うちの夫だ!「男の集団って、オラオラしていて嫌いなんだよね」って言ってた(笑)。ただ、既存の男性社会の中で出世するのは難しいとは思います。
白河:クリエイターとかエンジニアとか、こつこつ1人でやる系の職業なら大丈夫。
川崎:コミュ二ケーション力については、自分としゃべっていて心地いい男性であれば、それでいいですもんね。あと大事なのは柔軟性かな? 令和に生きる若者なのに「俺はこれじゃないとダメ」とか「男はそういうものだから」が口癖の人は厄介。「うちの会社は、そういうの無理だから」とかね。
白河:変化に弱いですよね。「絶対」って言葉を使わない人のほうがいいですね。女性もですが、「絶対」が好きな人は変化に弱い。「食のこだわりが合う」とか、妻も一緒に楽しめるこだわりならいいとは思うんですけど。
若い未婚の女性で、学生時代から彼氏が途切れたことがないという人に「なぜ彼氏が切れないの?」と聞いたら、「常に草食系男子狙いです」って言うんですよ。
これってすごく重要で、今はほとんど草食系しかいない。肉食系の男性は、あなたに声をかけたらすでに10人に声をかけてる(笑)。草食系狙いというのは効率がいいなと思いました。
川崎:市場と自分の強みをマッチングできているんですね。「ドキドキしないと恋愛じゃない」と思っている人たちは、悪い人にひっかかりやすい。「ドキドキ」ってただの勘違いだし、「ドキドキ」をくれる男性は「女性を不安定にさせるのがうまいだけ」ですから。
自分の譲れない価値観を見極める
川崎:幸せな結婚生活を送るために大切だと思うことはなんだと思いますか?
白河:「幸せな結婚生活」というより、「幸せな生活」ですよね。みんな、幸せと結婚をくっつけすぎている気がする。
結婚してから何を優先したいかによって、大切なことは全然違うと思います。
私の夫は、別に好みのタイプでもないし、性格が合うわけでもないんですけど、一緒にいます。あるビジネス系のセミナーで自分の弱みや強みを分析した時、私の一番譲れない価値観は「自由」だと出てきたんです。確かに、私をこんなに自由にさせてくれるのは、あの人しかいないと思った。だから、自分にとって何が大事なのかを、しっかり見極めたほうがいい。
川崎:毎回最後に言っているのですが、婚活女性に「どういう結婚生活を送りたいの?」と聞くと、「お互い高めあえるような関係でいたい」と言う。それって、相手が大事にしてることを、自分も大事にする姿勢を持つことだなと思うんです。
「自分がこうしてほしい」だけじゃなくて、「相手がどうしてほしいのか」もちゃんと考える。一緒にいると嫌なことばかり目に付くようになりますが、一番近くにいるからこそ、相手のいいところを見るようにする。なかなかできないけど、そこを考えることが大事だなと思いました。
白河:アラサー、アラフォーで結婚したい人は、より若い世代としゃべってみると面白いかも。35歳以上って、まだ“刷り込まれた王子さま像”を探している世代なんです。
だけど、今の子たちは実用的な男を探していて、全く違う。「一緒に子育てをうまくやれそうか」という目線もしっかり持っている。今の子にとっては「子供が持てるかどうか」はもはや賭けみたいなもので、デフォルトじゃないんです。
結婚は、2人で生きていく戦略なんですよね。そう考えることができるようになったのも、この10年で日本が共働きできる環境になったからだと思います。
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情報元リンク: ウートピ
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