結婚だけなら生活は変わらないけど、子どもがうまれたらどうなるんだろう? 仕事も、今みたいなペースでは続けられないのかな? と、漠然とした不安を抱えている女性は多いはず。
2人の子どもを育てながら、長年女性誌を中心に美容記事を担当し、初の単著『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)を上梓した、ライターの長田杏奈さん。育児が大変だった時期をどう乗り越えたのか、仕事を手放さずに頑張れた理由について伺いました。
キャリアの空白を作らないことが第一だった
——長田さんは2人のお子さんを育てながらフリーランスとして働いていますが、そうするとほとんど自分の時間がないのでは?
長田杏奈さん(以下、長田):息子は中学1年生で、娘が小学4年生。それぞれ塾に行ったり、友達と遊んだりしているので、もはやべったり世話を焼かなければいけない場面は、ほぼないですね。大変だったのは、小3くらいまでです。
——一番大変だった時期は?
長田:上の子が3歳で下の子が生まれて、首が座ってなかった時期ですね。当時、夫は週刊誌の編集者で激務だったから、絵に描いたようなワンオペ育児。仕事に復帰してからは、限界過ぎて玄関で行き倒れたこともあるけど、そんな時も働くことに対しては疑いがなかったですね。
——ヘトヘトになっても、仕事をセーブせずに走り続けられた理由は?
長田:とにかく、自分のキャリアにブランクを作りたくなかったんです。保育園に預けることにも一切迷いはなかったですね。
中学時代からワーキングマザーになることを意識
——長田さんは、お母さんが美容部員として働くワーキングマザー。小さい頃から、もしも子どもを産んでも働き続けたいと考えていたんでしょうか。
長田:中学生の頃から、ずっと子育てと仕事を両立する未来を思い描いていました。でも、当時はまだ専業主婦が多い時代。仕事と育児を両立するような本ってあんまりなかったんです。雑誌『コスモポリタン』に「ワーキングマム」っていう別冊があったくらい。今思うと非現実的な内容だったけど、それをことあるごとに読んでイメトレしていましたね。
——かなり早い段階で、自分のキャリア設計について考えていたんですね。
長田:手に職をつけたいし、ずっと働きたい。若い頃から、結婚をどうするかより、自分の仕事に対する執着のほうが強かったんですよ。産後は約半年で仕事復帰して、隣の区にある認可外保育園に、毎月10万円ほど払って通ってましたね。2人目が生まれた後は、もちろん保育料も倍に。
9年間くらい、自分が働いたお金はほぼ保育料に消えてしまうような生活でした。「利益を出す」より「働いているという事実を繋ぐ」ということを大切にしていたからこそ、続けられましたね。
夫婦間の収入差を考えすぎない
——今はどんな時間軸で働いているんでしょうか。
長田:私は徹夜も多いし早朝からの撮影も多いので、朝ご飯は平日同居している母が作ってくれます。晩御飯は、平日は私で、夫が土日担当。なので、できるだけ18時には帰宅してご飯を作っています。それまでの時間に取材や撮影を組んで、原稿は深夜にかけて書くので、体力的にはちょっとしんどいんですけど、家に閉じ込められるよりは精神的にラクです。フリーになりたての頃は、家計を考えたら、私が働くより「扶養に入った方がいいのでは?」って夫に言われたこともあるんですよ。今思い出してもムカつきますね。
——世帯収入で考えると、そうなるんですね……。
長田:「18時というリミットがあるフリーランスの私」と、「残業バリバリして働いているサラリーマンの夫」の収入が違うのって、あたりまえじゃないですか。でも、昔は「同じくらいの収入がないと、夫に意見しちゃいけないのかな?」っていう気持ちもあったんです。「いつか収入で抜いたら、そのとき文句を言おう」と我慢している時期もありました。
——状況を変えることができたきっかけは?
長田:二人目が産まれて仕事復帰した後、「本当に無理! つぶれちゃう!」と限界に達したことです。察してもらうのを待つ余裕がなくなったから、要望もストレートに伝えるようになったし。昔はよく「怒ってる?」って夫に聞いていたけど、もう忙し過ぎて夫の機嫌とか、どうでもよくなりました。不機嫌圧力にも動じない人間になれましたね。
「ママ」ってなに?
——長田さんは普段の仕事で「ママ感」をあまり出していないように思いますが、それは働く上で意識しているんでしょうか。
長田:あんまり意識していないですね。家に帰れば、普通に子どもとの生活があるし。外に現れていないとしても、ただの普段の自分だし。
——少し前に「”ママに見えない”が最高のほめ言葉」という女性誌のコピーが議論を巻き起こしました。
長田:「ママに見えないですね」って言われると「ママに見えるってなんだろう?」って思っちゃいますね。年齢もそう。その人の前に「ママはこういうもの」「40代の女性はこういうもの」っていう先入観があって、その枠にはまっていないことをほめ言葉とされると、違和感があるんですよ。実際に保育園とか小学校とか、みんなバラバラで「ママ」の共通項ってあんまりないし。人の視点に合わせて自分を変えて、架空の「らしさ」に振り回されるのはもったいないかなと思いますね。
——流されず、自分自身でいればいいと。
長田:私も、自分の考えを書くようになったけれど、別に周囲に圧をかけてその通りにさせようという魂胆はないんです。それぞれが好きな生き方をできれば、それでいい。自分と違う考えや価値観を持つ人がいる状態に、みんなが慣れなければいけないと思います。意見が違う人間=自分の存在がおびやかす存在ではないですからね。
(取材・文:小沢あや、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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