日本は「性教育」が遅れている……と聞くけれど、実際のところ何がどう遅れているのか、ほかの国ではどうなっているのか、なかなか知る機会もありませんよね。
そんな中、どうやらスウェーデンは世界でも有数の性教育先進国!とのことで、かねてから日本の性教育の遅れをテーマに番組を送り出してきた、AbemaTV Newsチャンネル『Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース』のプロデューサー、津田環さんは2019年7月、「スウェーデン性教育スタディツアー」を開催。
かつて『世界ウルルン滞在記』『世界ふしぎ発見!』などの海外取材番組を多く手がけ、海外での目的をもった旅をアレンジするプロとして仕事をしてきたという、津田さん。
現地では、驚きと発見の連続で、独身の大人の男女にも、子育て真っ盛りのママとパパにも、子どもにとっても、性的マイノリティにとっても、いいことづくしの、ミラクルツアーだったとふりかえります。
そこでウートピは、津田さんによる「スウェーデン性教育スタディツアー」のレポートをお届けすることに。初回となる今回は、ツアー開催のきっかけについて書いていただきました。
Contents
スウェーデンは性教育先進国?
北欧スウェーデンという国にみなさんがもっているイメージはどのようなものでしょうか? 家具量販店のIKEAや、リサ・ラーソンなどが手がけるおしゃれなインテリア雑貨や、充実した社会保障制度のもとワークライフバランスのとれた、サステナブルな暮らしがある……といったイメージがあげられるはず。
または世代によっては「フリーセックスの国」というイメージがある方もいるかと思います。「それは聞いたことないけど……」という方でも、あるスウェーデン市議が、勤務時間中に一時帰宅してパートナーとセックスできる「有給セックス休憩」を提案、というニュースを目にして驚いた人も多いのでは? 日本人には度肝を抜かれるこのような議論が巻き起こる、スウェーデンにおいてのセックス事情とは、果たしてどうなっているのでしょうか?
2019年7月。日本で意欲的に性教育、正しい性知識の普及に尽力する、産婦人科医の高橋幸子先生をはじめとする医療関係者や民間支援団体職員の女性たちが、かの地に赴き、スウェーデンにおける性教育のエトセトラや、セックスにまつわるリアルな声を学ぶ旅に出ました。
日本は残念ながら性教育後進国
スウェーデンを語るにあたり、先にちょっと日本の性教育の現状に触れておきましょう。
日本の性教育については、世代や地域、学校の方針によってバラつきがあるものの、まだまだ非常に遅れていると言わざるを得ません。ちょっとおかたい話ですが、学習指導要領に基づく性に関する指導では、中学生向けで「セックス」や「性交」という言葉を使わず、「性的接触」と遠回しに表現するような、わかりにくい内容が示されています。
単純な比較はできませんが、しかしユネスコの指針「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では、たとえば9-12歳(レベル2)の段階で無防備な性交は妊娠やHIVなどの性感染症にかかる可能性があること、コンドームなどの避妊を正しく学べばそうしたリスクを防げること、などをはっきり伝えることが勧められています。
子どもたちの体の発達や、ネットなどでいくらでも性的なコンテンツに触れることができる状況を踏まえてみたら、どちらが現実に即しているかは一目瞭然です。
また、こうした長年の性教育の遅れにより、われわれ大人たちの性知識もきわめて曖昧模糊(あいまいもこ)としており、そうした知識のなさがさまざまな性やセックスにまつわるお悩みやトラブルを招いているのです。
たとえば、気づかぬうちに性感染症にかかっていて、それが将来的に不妊の原因となる。生理痛を我慢し子宮内膜症などの病気を放置することになる。男性も射精障害をどこに相談したらいいかわからない……などなど。
番組では以前から「性教育」に注目
さて、申し遅れましたが、わたしは、AbemaTVというネットTV局のNewsチャンネルで放送されている女性のための報道トーク番組「Wの悲喜劇~日本一過激なオンナのニュース」でプロデューサーを務める津田環と申します。
番組MCのタレントのSHELLYさんは、早くから日本の性教育の遅れについて問題意識を持っていました。そこで番組では過去数回にわたり「性教育」について放送し、そのプロセスのなかで、地道に学校をめぐり外部講師として、性教育の現場と向き合っている方々と出会いました。
日本はどうしてこうなのか? 海外は違うの? という議論を深めるたびに、日本の「性教育」アウェーな環境が浮き彫りになっていったのです。
大学在学中の、スウェーデン留学経験から、緊急避妊薬(通称:アフターピル)がスウェーデンでは薬局で安価で入手でき、また避妊の方法についてもいろいろな選択肢があることに衝撃を受けて、日本で「#なんでないのプロジェクト」をはじめた福田和子さんの話も大きなキッカケとなりました。彼女たちの熱いリクエストによって誕生したこの企画。
意欲的な参加者の方々は全員女性!産婦人科医、看護師等の医療従事者や民間支援団体職員など8人、現地在住の産婦人科医と保育士2人の合計10人で、さまざまな現場をまわりました。
いよいよスウェーデン!薬局でアレを発見
北欧の夏!この国では、人々は、凍てつく冬を越えて訪れた太陽の季節を謳歌します。ということは……みなさん夏休みで、とにかく閑散としている(笑)。学校はもちろんお休みだし、公共機関も必要最低限。スタッフは交代制で対応という、さすが労働時間の短縮、フレキシブル・ワークの導入が進んだ国です。しかし、性教育に季節は関係なし!熱い志をもったスウェーデンの性教育のプロたちがお目見えです。
まずストックホルム中心街に到着した一行が驚いたのは、噂に違わぬ緊急避妊薬(アフターピル)や性感染症の薬への、薬局でのアクセスのしやすさ。普段日本では、医師の診療と処方箋の必要な薬が、薬剤師のいる薬局でフツーに市販されている……やはりそれってシンプルに大きな差がありますよね。
スウェーデンだって昔から性教育が進んでいたわけじゃない
市内を巡ったあと、お会いしたのは、性暴力の被害者の支援やシェルター運営をしている団体の職員の女性ナターリアさん。彼女からの言葉は意外なものでした。
「スウェーデンでの性教育が進んできたのはここ20年ほど。キリスト教の価値観もあり、性教育を若者にすることに反発の声なども大きかった。今も試行錯誤の連続である」
性教育先進国で、さぞかし性についての議論が活発に行われ、日本では臭いものには蓋、とタブー視されていることに、解決の光が差しているのはないか……と思っていたのですが。
「しかし、短期間でそうした反発を乗り越え、広く理解をえて、行き渡らせることができたのも事実」。
なんと、劇的な変化があったわけですね。
次回では、このあたりのパラダイムシフト、スウェーデンの「フリーセックス」とは何か?などについてお話したいと思います。
(津田 環)
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情報元リンク: ウートピ
私たちがスウェーデンに「性教育スタディツアー」に出た理由