花粉症では、鼻水や鼻づまりに加えて、目のかゆみや痛み、腫れ、涙、充血、周囲の皮膚(ふ)のただれなど、目のトラブルもとてもつらいものです。メイクどころではなく、外に出たくない! という声も多く、いったいどうすればいいのでしょうか。
眼科専門医でみさき眼科クリニック(東京都渋谷区)の石岡みさき院長によると、「目の症状がなぜ起こるのかを理解して、少しでも花粉が目や鼻に入ることを防ぎましょう。目の症状が激しいときは眼科を受診してください。点眼薬、内服薬に加えて、点鼻薬も処方が可能です」ということです。詳しいお話を、「前編」「後編」の2回に分けて聞いてみました。
花粉による目のトラブルの正体はアレルギー性結膜炎
——なぜ、花粉で目につらい症状が出てくるのでしょうか。
石岡医師:花粉症による目のトラブルは、目に花粉が入って炎症が起きるために生じます。花粉やホコリなどのアレルギーを引き起こすアレルゲンが、まぶたの裏側と白目を覆う粘膜の結膜に入り込むと、それを取り除こうとして「免疫反応」が起こります。
するとヒスタミンなどのアレルギー物質が大量に放出されて目の知覚神経や毛細血管を刺激し、かゆみや充血などの炎症、涙を引き起こすのです。これを「アレルギー性結膜炎」と言います。
——目のあのつらい症状の正体は、アレルギー性結膜炎という病気だということでしょうか。
石岡医師:そうです。具体的な症状は、目のかゆみ、充血、乾燥、ゴロゴロとした異物感、痛み、まぶたの腫れ、涙や目やにが出る、周囲の皮膚が赤くただれる、目以外では、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど、また、それらが原因で頭重感や憂うつな気分になる、仕事に集中できない、睡眠に支障が出ることなどもあります。
アレルギー性結膜炎には、スギやヒノキの花粉による「季節性アレルギー性結膜炎」と、ダニやホコリなどのハウスダスト、犬や猫の抜け毛やフケ、カビなどによる「通年性アレルギー性結膜炎」があります。いずれにしろ、アレルゲンが目に入り込むことによって生じます。
メガネ、マスク、つるつる素材の帽子とストールは必須
——花粉症による目のトラブルを少しでも予防することはできますか。
石岡医師:できるだけ花粉が頭や顔、目、鼻、口粘膜、また体に付着するのを防ぐことが最大の防御策です。そのために外出時には、マスク、メガネ、帽子、ストールを着用しましょう。室内からベランダに出る、ゴミを出しに行くなどちょっと屋外に出るときにも必要です。
メガネを選ぶ場合は、顔とのすきまが少ない花粉対策用がベストです。花粉は頭上から降ってくるため、とくにメガネの上の部分と目のすきまから入り込むと想定して防ぎましょう。ただし、一般のメガネでも、装着していないときに比べて50%以上の花粉を避けられることが明らかになっているので活用してください。
帽子は、髪や顔、襟もとに花粉が付着するのを避けるために、また花粉がメガネのすきまから入るのを防ぐために、つばの広いタイプで、できるだけ花粉対策用か、つるつるした素材を選びましょう。
ストールやマフラーは、花粉から首や胸元を守るために着用しますが、これも、花粉対策用のタイプか、つるつるした素材を選びましょう。
これらは必須アイテムとして、外出時に常に持参しましょう。また、頭髪への付着を避けるために、髪型はロングやパーマは避けて、帽子に収まるようにまとめましょう。
そして部屋に入るときは、花粉を室内に持ち込まないことを意識して、外で、帽子とメガネ、ストールやマフラー、コートを脱いで、できる限り花粉を落としておきます。
花粉の付着を避けるため、コンタクトレンズは使用しない
——コンタクトレンズは使わないほうがいいのでしょうか。
石岡医師:コンタクトレンズに花粉が付着し、症状が強くなる場合が多くなります。花粉が飛ぶシーズンはできるだけ使用を控えてください。そうもいかない場合は、使い捨てのワンデータイプを選び、その上から花粉防止用メガネか、度が入っていないメガネをかけましょう。
コンタクトレンズを装着したまま点眼できる花粉対策用の目薬も市販されています。それについては「後編」で紹介しましょう。
——手洗いやうがい、洗顔は花粉症予防に役に立つでしょうか。
石岡医師:「花粉を避けること」がセルフケアの最重要ポイントとなるので、大いに役に立ちます。帰宅したらすぐに、手を洗って、うがいをし、顔を洗ってください。顔を洗うことを忘れている人は多いので、意識をして実践しましょう。
また、顔を洗うときは目を閉じて、目に花粉が流入することを避けてください。水道水で目を洗ってはいけません。
目を洗う方法については、後編の「点眼型の目を洗う人工涙液が新登場! 花粉症の目のケア法を専門医に聞く【後編】」で詳しくお伝えします。こちら前編では、花粉による目のつらい症状の正体を知り、自分ですぐにできるケア法を理解することができました。続く「後編」では、目のかゆみを軽減する方法、市販の点眼薬に新しいタイプが登場したこと、目薬の適切なさしかた、また眼科での治療法などについてお尋ねします。合わせて参考になさってください。
(取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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