マンガ家で俳優、タレントとしても活躍中の蛭子能収(えびす・よしかず)(72)さんの新刊『死にたくない 一億総終活時代の人生観』(角川新書)が10月10日に発売されました。
“人生100年時代”を念頭に、蛭子さんが「老い」「家族」「死」に真面目に向き合ってみた内容です。
蛭子さんが「死にたくない!」と思う理由は?
とにかく生きていれば面白いことがある
——蛭子さんが「死にたくない!」と強烈に思っていることを知って、ちょっと意外でした。「死にたくない!」と心底思っている人ってギラギラしているイメージがあったので……。
蛭子能収さん(以下、蛭子):これはもう子供の頃から思っていることなんです。とにかく生きていると、それなりに悲しいこともあるけれど、楽しいことのほうがちょっと多い気がします。生きていたら面白いことばかりなので死にたくない。でも、みんなはそうは思っていないのかなあ……。
——うーん、すごく個人的な感覚ですが、心が弱っているときに悲しい事件やつらいニュースが続くと「こんなひどい世の中なら、もう生きていたくないな」と思っちゃうことはあります。
蛭子:それは分かります。でも、とにかく生きていれば面白いことがあるし、退屈しないんですよね。死んじゃった人は退屈だろうなって思います。だって何もやることがないんだもの。生きていれば、いろいろなものがこの目で見られる。良いことも悪いことも。僕もそれなりにつらいことがあったけれど、死んでしまったらそう感じることすらもできなくなるから。
——子供の頃からそう思っていたんですか?
蛭子:子供の頃はこんなふうに人間や世の中を見ることはなかったけれど、でも、星はよく見ていました。長崎の実家には今で言うベランダのような“やぐら”があったんです。夏になったらそこに寝っ転がってずっと星を見ていた。すごいんですよ? 流れ星が一晩に何回も見られるんです。その星がきれいでいつまでも眺めてられたんです。
でもある日、流れ星を見ていたときに突然「死にたくない」って思ったんです。
僕が死んだら、あの流れ星みたいにどこかに消え去ってしまうのだろうか? 消え去った後はどうなるんだろう? 「無」になってしまうのだろうか? でも「無」ってどういうこと? って。そんなことを思い始めたら、「死」が急に僕に近づいてきてすごく怖くなったんです。それ以来「死なないこと」が僕の最優先事項になりました。
僕は“ひとりぼっち”でなかったと気付いた瞬間
——今回、本を書いて「死」に向き合ってみていかがでしたか?
蛭子:「向き合った」って言うのかなあ? でも、僕が死にたくないのは妻とずっと一緒に生きていたいからだと思い至りました。もちろん、仕事やお金も僕にとってすごく大事なものだけれど、自由も時間もお金で買えることはあったけれど、愛だけはお金で買えないって分かったから。
——蛭子さんは前の奥様をご病気で亡くされて、週刊誌の企画で出会った奥様と再婚されたんですよね?
蛭子:そうです、前の妻を亡くしたときはすごく寂しかった。それまで僕は「誰とも争いたくないからひとりぼっちでいい」って思っていたし、それは今も変わりません。でも、妻がいなくなったときに「僕は“ひとりぼっち”ではなかったんだ」と気付いたんです。
だから、恥ずかしかったけれど、行動して今の妻と出会いました。
もしかしたら、「亡くなった奥さんを捨てるのか?」と言う人もいるかもしれない。でも、もういない人をいつまでも思い出して泣いているよりは、新しい人生に向かって生きたほうがいいと思うんです。それが生きているっていうことだと思います。
※後編は10月30日(水)公開です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、撮影:宇高尚弘)
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情報元リンク: ウートピ
生きてれば、楽しいことのほうがちょっと多い。蛭子さんが「死にたくない!」と思う理由