「若い女性の人口が減少している」「消滅可能性都市に指定された」というニュースを聞くと、「地方の話題かな」と思ってしまいますが、4年前に東京23区で唯一の消滅可能性都市に指定されたのが豊島区です。
このショッキングな発表を受けて、豊島区は2016年に「女性にやさしいまちづくり担当課」を設置。「わたしらしく、暮らせるまち。」というキャッコピーを掲げ、女性だけでなく子どもやファミリー世帯、年配者や外国人の誰もが「自分らしく」暮らせる街を目指しています。
そこで、ウートピでは、池袋での一人暮らしの様子をつづったコラム「独身OLだった私にも優しく住みやすい街『池袋』」が話題となり、”豊島区長公認”の池袋愛好家となったフリーライターの小沢あや(おざわ・あや)さんと「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長・宮田麻子(みやた・あさこ)さんとの対談を企画。豊島区の取り組みや現在の豊島区の状況など豊島区のリアルに全4回にわたって迫ります。
女性にやさしいまち…「女性」って、誰のこと?
小沢あやさん(以下、小沢):会社員時代に池袋に住んでいたこともあって、「豊島区が消滅可能性都市に指定された」というのは個人的にもショックでした。ブログにも書いた通り、池袋はとても魅力的な街だと思うのですが、そういえば女子の間ではあまり人気がないなあと思い……。
そんな時に「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室の取り組みを知って、具体的にどんなことをしているのか宮田さんにじっくりお話を伺えればと思いました。もともと、「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室は、「女性にやさしいまちづくり担当課」という名称だったんですよね。「女性に」を「わたしらしく」に変えたのですね。
宮田麻子さん(以下、宮田):私が就任する際「女性にやさしいまちづくり担当課長」という名前だったのですが、「女性に」という限定的なフレーズに「えっ」と思いました。この肩書きを背負うの、つらいなって(笑)。
小沢:女性代表です! っていう、圧がありますよね(笑)。
宮田:そうですね。じゃあ男性はどうするの? という声も。でも、これは「女性に支持されない街は、生き残れないぞ」という、区の強いメッセージだと受け止めました。
小沢:「女性にやさしいまちづくり担当課」って、会議室で決められた名前のように感じたんです。名称に対しての疑問あったのですが、豊島区長とお会いした際に「これ、来月名称変更するんですよ。『わたしらしく、暮らせるまち。』推進室になります」ってご説明いただいて。すごく素敵だなと。「わたし」だったら、性別に関わらずみんなが使う一人称ですから。
少子化も待機児童問題も、女性だけの話ではない
宮田:待機児童問題や子育て環境について、街のみんなでカジュアルに話し合う場として作ったのが「としまぐらし会議」です。街で普通に住む人、働く人、学生さん、フラットに話し合います。もちろん、区の職員も参加しています。
小沢:「としま女性会議」とかになってないのがいいですね。少子化も、待機児童も、女性だけの問題ではないですから。
宮田:過去、そういう時期もありました。でも、性別で区切ると、結局掛け声みたいになっちゃうんですよね。「女性、集まってー!」って。
「女性が輝く」「仕事と育児の両立」って、つらくない?
小沢:民間企業での、女性社員の意見交換会などでもよく聞く話です。同じ企業で「女性」ってくくられても、育児中か管理職か一般社員かで、職場に求める要件も全く違うじゃないですか。「女性」は決して一枚岩ではないし、主語が大きすぎるんですよね。
宮田:そうそう、「働く女性」を取り上げる女性誌も、すごい人しか出てこない。「私はこうなれない」と読んでいるだけで苦しくなっちゃう。だから、「女性が輝く」という言葉は使わないと決めました。仕事も頑張って、キャリアも積んで、子育てもして、輝いて……って、疲れちゃう!
小沢:仕事と育児の「両立」っていうのも、強要されるとつらいです。男性にはあまり求められないのに。
宮田:どっちかでもいいんですよ。働きたいのに、子どもがいて働けないという状況は、行政としてもサポートしなければならない。けれど、子どもと一緒にいたい人に仕事を強いる必要もないですよね。あとは、子どもを産みたくてもできないとか、そもそも産む選択をしない人もいます。個人の生き方の問題なのに、一方的に「産んで」とか「輝いて」とか言われても、なんだか息苦しいですよね。
小沢:本当にそう思います。「女性」だって人の数だけ思考やライフスタイルがあるわけで。その点、「わたし」だと自分ごとにできる。とてもいいなと思います。あとは、イメージカラーが、よくあるダサピンクじゃないのもいいなって。
宮田:ブルーにする必要はないけど、ピンクは絶対にやめようね! と話していました。ロゴはダイヤモンドに見えるから、ちょっと輝いているのですが(笑)、これは様々な人や家の集合=まちをイメージしているんです。個人に「輝け」というのはしんどいけど、いろんな人が集まって、まち全体が輝くなら素敵だなって。豊島区は、それぞれが自然体で暮らせるまちになればいいなと思っています。
第2回は、池袋の魅力について語り合います。
※第2回は8月31日(金)公開です。
(取材:小沢あや)
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情報元リンク: ウートピ
消滅可能性都市の指定から4年… “わたしらしく”を大切にする豊島区の取り組み