花粉の飛散が本格的なシーズンとなり、市販薬や対策用のグッズが飛ぶように売れているというニュースが続いています。
また、耳鼻咽喉科専門医でとおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長によると、「今年(2019年)は、昨年の同時期に比べて受診する人が倍増しています。症状も重い人が多い」ということです。
そこで、少しでも花粉症の不快感を自分で軽くする方法はないものかと、遠山医師に対策法について聞いてみました。
花粉症は異物を取り除こうとする防御反応
はじめに遠山医師は、なぜ花粉症の症状が現れるのかについて、次のように説明をします。
「花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉が鼻や目、口、のどの粘膜に付着する、あるいは体内に入り込んだ場合、体がそれらを異物と認識し、取り除こうとして起こります。アレルギーの原因となる物質の花粉やダニを『アレルゲン』と呼びますが、これを体から追い出そうとして、くしゃみを連発し、多量に鼻水を出し、鼻をひどくつまらせて、涙を流させるわけです。つまり花粉症の症状は、体の防御反応と言えるのです」
どれもつらい症状ですが、防御反応であれば、くしゃみや鼻水を止めてはいけないのでしょうか。
「体から花粉を追い出す作業なので、無理に止めてはいけません。しかし、人によってはこの反応が過剰になり、心身に非常に大きな負担を与えるのが花粉症という病気です。
そうすると、花粉症の症状をできるだけ生じさせないためには、花粉を体内に取り込まないようにすることが最も重要なケアになります。服装や生活のありかたによって、花粉を自分に付着しにくくする、寄せ付けにくくすることができます」と遠山医師。
衣類についた花粉は、はたかない
花粉症と風邪の違いも理解したところで、ここで遠山医師に、花粉を寄せ付けない方法を挙げてもらいました。
(1)花粉症対策用のメガネを着用する
花粉は、目、鼻、口から体に入ってきます。そのため防ぐポイントは、とくに頭部と顔、首、襟、胸もとに注意をすることです。
外出時には、目を覆うメガネを着用しましょう。一般のメガネでも、かけていないときよりは50%以上の花粉をカットできることが明らかになっていますが、顔とのすきまが少ない、ゴーグルタイプの花粉症対策用のメガネを選ぶのがベストです。
(2)花粉症対策用のマスクは室内外ともに着用する
(1)に続き、マスクも花粉症対策用を使いましょう。外出時に、もし手元にマスクがない場合は、ハンカチやマフラー、衣類で口と鼻を覆うように工夫をしてください。また、室内でも着用しましょう。オフィスでは人の出入りやドア・窓の開け閉めが多く、自宅では玄関やベランダから花粉が流入します。それぐらいに、口と鼻から花粉を吸入しないことが重要になります。
(3)花粉症対策用のつばが広い帽子をかぶる
花粉は頭上から舞ってきて髪や顔に付着しやすいので、それを防ぐために花粉症対策用のつばが広い帽子を着用しましょう。髪はできるだけ束ねて帽子の中に入れ込んでください。
(4)衣服、帽子、ストール、バッグ、靴はツルツル生地を選ぶ
ニットやセーターなどウールは花粉が付着しやすく、また取れにくいため、ツルツルとした素材を選びましょう。バッグや靴は見落としがちですが、花粉は全身に付着します。部屋に持ち込むことになるので注意をしてください。
(5)玄関で帽子、コートを脱ぎ室内に花粉を持ち込まない
帰宅時は全身に花粉が付着しています。玄関より外で、帽子やコート、上着を脱いで、バッグや靴も、できれば湿ったタオルやおしぼり、ガムテープなどで拭き取るように花粉を取り除きましょう。
衣類をはたいて花粉を落とすと、舞い上がった花粉を吸いこむ場合があります。
マスクは玄関先で持参したビニール袋に入れて口をしばって捨てます。メガネはそっとはずしてすぐに洗いましょう。
(6)帰宅後は手洗い、うがい、洗顔、シャワー
帰宅すると、すぐに手洗い、うがい、顔を洗って花粉を落とします。髪にも花粉は多く付着するので、面倒でもシャワーで洗い流しましょう。
(7)目は洗眼薬で洗ってから目薬をさす
目のケアには、最近市販を開始した人工涙液の洗眼薬を使用しましょう。カップで目を洗うタイプではなく、目薬のように「点眼」すると洗うことができるタイプが安全で使いやすいでしょう。
帰宅時に目を洗う場合も、その洗眼薬を使いましょう。水道水で洗うと、水分中に含まれる塩素が目の表面を傷つけることがあるので避けてください。まずは目の粘膜に付着した花粉を洗眼薬で洗い流し、次に、目のかゆみや充血などをケアする目薬をさしてください。
(8)鼻うがいをする
鼻うがいとは、専用の洗浄液や生理食塩水を鼻の穴から注入をして、鼻の奥まで洗浄をする花粉症ケアのひとつです。慣れると手軽に、鼻の中に付着した花粉やほこりなどを洗い流すことができます。
その方法など、詳しくはこちらを参考にしてください。手軽にできる花粉症ケア「鼻うがい」の方法 【耳鼻咽喉科専門医が教える】
(9)ドアや窓の開け閉めは必要最低限に
玄関を開け閉めするときや窓を開けるとき、部屋に花粉が入ってきます。玄関の開閉はさっと行い、部屋の空気の入れ替えには換気扇を利用し、窓を開けるときは花粉の飛散が少ないときに開ける幅をせまくして、短時間にしましょう。
(10)部屋の掃除をする
部屋に入ってきた花粉は、カーテンやソファ、家具、カーペット、床に付着します。ホコリやダニなどのハウスダストの対策のためにも、毎日掃除機を丁寧にかける、ぞうきんでそっと拭きとるなどしましょう。そのときは、(1)で紹介したマスクとメガネを忘れずに。
(11)枕カバーなど寝具はこまめに洗濯を
寝具、とくに枕カバーには注意が必要です。こまめな洗濯を心がけましょう。
(12)洗濯物や布団は屋外に干さない
屋外に干すと花粉が付着して大変なことになります。必ず屋内で干してください。ただしベランダや窓際で干すと開閉時に花粉が入ってくるので、注意が必要です。洗濯乾燥機があるならそれを利用するのがベストです。
(13)部屋の乾燥を防ぐ
部屋を加湿すると、浮遊する花粉に水分が含まれて、重さで床に落ちていきます。加湿器で湿度を50~60%に保ちましょう。オフィスではパソコンから電源がとれる机上用のミニ加湿器を利用してください。鼻や口、のどの粘膜の炎症を抑えることもできます。
(14)花粉の多い日、時間帯の外出を避ける
カラっと晴れた気温の高い日や、風が強い日は花粉が大量に飛散しています。また、雨が降ったあとの晴れた日は、2日分の花粉が飛んでいると想定されます。とくに気をつけたい時間帯は、花粉が舞い上がり飛散している昼過ぎと、地面の近くに花粉が舞い降りてくる夕方ごろです。
(15)生活習慣を見直す
睡眠不足、栄養のバランスが偏った食生活、疲労やストレスの蓄積があると、自律神経のバランスが乱れて免疫力が低下するため、アレルギーの症状が現れやすくなります。睡眠や食事に注意をし、疲労やストレスケアを意識した生活習慣を心がけましょう。
さらに、遠山医師は、鼻のかみかたに、次のようにアドバイスをします。
「鼻づまりには蒸しタオルで鼻を温める、また、鼻をかむときはチーンと思いっきりかむことは避けてください。中耳炎など耳に悪影響が及ぶことがあります。やさしく片方ずつ押し出すようにかみましょう。症状がつらい場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診してください」
毎日の生活を振り返ると、自ら花粉を全身に付着させている、部屋に入れていることに気づく人は多いのではないでしょうか。15の方法は、一読すると細かく多く思うかもしれませんが、実はすぐに実践できることばかりです。少しでも「花粉を、寄せ付けない、持ち込まない、取り除く」ように着手したいものです。
なお、花粉症の市販の薬については「処方薬と市販薬のちがいは? 耳鼻咽喉科専門医に聞く花粉症ケア」を、シーズン中の治療法は「花粉症シーズン中のケア 医療機関での治療法を耳鼻咽喉科専門医に聞きました」、根治が期待できる舌下免疫療法については「新薬登場で治療しやすくなった! 耳鼻咽喉科専門医に聞く、花粉症のケア最前線」を参考になさってください。
(取材・文 藤原 椋/ ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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