「決して毒親ではない。だけど、母との関係がしんどい」という女性は多くいるようです。
そんな悩める女性たちの背中を押すのは、世界最高齢のプログラマー若宮正子さん。82歳で高齢者向けのアプリを開発して一躍時の人になりました。
このたび『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』(ぴあ株式会社)を上梓した若宮さんに話を聞きました。今回は、「母と娘のあるべき距離感」です。
母娘の関係がこじれやすいワケ
——『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』の中で、若宮さんは「早く母から逃げて独立したかった」と、20代の頃を振り返られています。母親との関係に悩む女性は多いと思います。若宮さんはその後、お母さんとどのような距離感で過ごされてきたんですか?
若宮正子さん(以下、若宮):同居はしていましたが、幸いと言うべきか、私は銀行員として朝早くから夜まで働いていたので、母としみじみ語り合うような時間はほとんどありませんでした。
——一人暮らしの女性とほぼ同じ感覚だったんですね。お母さんはどんな方だったんですか?
若宮:やっぱりDNAなのか、母は人一倍好奇心が強い人でした。ただ、自分が考える世界以外の価値観があるとは微塵も思わないタイプで。表立ってケンカすることはありませんでしたが、離れて暮らしたほうが円満なのではないかな、というのは当時から思っていました。
——母と娘の関係って時代を問わずこじれやすいんですね。どうしてなんでしょう?
若宮:母親が過ごしてきた30代と、子どもが生きている30代では何もかも時代が違うんです。母親が自分の経験をコピーして娘に貼り付けるなんてできないし、たとえ貼り付けられたとしても、それで子どもが幸せになるとは限りません。たとえば「大きな会社に勤めなきゃダメ」と親が望んだとしたって、大企業が来年や再来年にどうなっているかなんて今はわからないですよね。
本当は子どもの方がそうした時代の変化に敏感なはずなんだけど、親世代はその事実を心情的に受け入れられないの。「娘のために一生懸命にやってきた」って自負があるだけに、かえってやっかいなんですよ。
——たしかに、親心から言ってくれているのがわかるだけに、親の言うことを無下にすることはできませんよね。
若宮:私と母にとって緩衝材となっていたのは父でした。父から言わせると、私も母も世間知らずで手前勝手。要するに未熟者同士だから、どちらかが社会訓練でも受けて成熟した人間になれば少しは落ち着くんじゃないかって。本当にその通りだと思います。
今となって思うのは、もっと母が育ってきた時代背景を汲んであげられればよかったのではないかということ。親も発展途上なんだから「一緒に成長していこう」と導くこともできたはずですから。
親子の立場は逆転する
——私もそんなふうに考えられる日が来るんでしょうか。なんだか未来永劫、母とは分かり合えないような気もして……。
若宮:自分が50歳を過ぎれば、親との関係はイヤでも変化しますよ。私の母は、私が60歳で定年退職した頃からポツポツ認知症の症状が見られるようになりました。とても同じ土俵でケンカをするような相手ではなくなりましたね。
——それってある意味、対等な関係ではなくなるということですよね。
若宮:「親が子どもに返る」って、根源的な価値観が覆るような出来事です。精神的にも肉体的にも依存していたはずの親が、子どもに戻って自分が扶養する立場になるわけですから。少なからずショックを受けるし葛藤もあるみたいですね。
——若宮さんもやはりショックでしたか?
若宮:私の場合はもともと鈍感にできているので、あんまりショックとかはありませんでしたね(笑)。
——え、そうなんですか?! どうやって割り切っていたんですか?
若宮:それは、いいとか悪いとか、心地いいとか心地悪いとかっていうこと以前に、「人間をやっていると、誰しも何時かはこういうことも体験するんだな」っていう風に考えていました。
——人間をやっているとそういうことも体験する……すごくいい言葉ですね!
若宮:人間をやっているからこそ体験できることだし、職場でも大切な「人間力」の育成にも役立つのよ。
(取材・文:武末明子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
母娘関係がしんどい貴女へ 「母と娘の関係はイヤでも激変します」