残暑といえども強烈な暑さと陽射しが続きます。9月になったからとつい紫外線ケアに手を抜いたところ、「マスク日焼け」を経験して驚きました。
臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長によると、「9月になって紫外線が少し緩んだかなと思い、日焼けに油断をしていませんか。そのために日焼けや肌荒れがひどくなってクリニックに駈け込まれる方も多いのです」ということです。残暑の日焼けケアについて、前後編で正木医師に詳しくお尋ねします。
9月の紫外線量は5・6月並みで横からも降り注ぐ
はじめに正木医師は、日焼けが肌に与える影響について次の説明をします。
「日焼けには、赤くなる『サンバーン』と、黒くなる『サンタン』があります。サンバーンは、紫外線を浴びることで肌に炎症が生じ、『軽いやけど』といえる状態です。その後、ヒトの体の防御反応として分泌されるメラニンという細胞が活性化し、大量につくられます。これが肌の表面近くに移動して沈着し、黒くなります」
メラニンは、髪の毛の色素としてもよく耳にします。
「そうです。メラニンは肌だけでなく毛髪や瞳の色を構成する黒色の色素です。紫外線を非常によく吸収し、皮膚(ひふ)の内部に悪影響を与えないようにする働きがあります」と正木医師。
暑さが和らいでも日焼けケアに油断は禁物とのことですが、どうしてでしょうか。正木医師は、
「大きく分けて2つあります。まずひとつめは、日本の都市では9・10月の紫外線の強さは、5・6月並みだからということです。それに夏は太陽の位置が高くて真上から紫外線が降り注ぎますが、秋には太陽の位置が低くなり、横からも紫外線を浴びることになって顔や肌全体が日焼けしやすくなります。肌のダメージは夏と変わらないほど強くなるわけです」と9・10月の紫外線の弊害を強調します。
紫外線カットの日傘、サングラスを着用する
次に、残暑の日焼けから肌を守る方法について、正木医師は次のようにアドバイスをします。
「夏と同様に外出時は、紫外線カットのUVクリームを顔や首、腕、足など露出する部分のすべてに塗りましょう。
さらに、紫外線カット99.9%以上の日傘を使用してください。日傘の使用は環境省が2019年の夏から老若男女問わずに推奨していて、使うことで暑さ指数(WBGT)が1~3度低下すること、帽子だけを着用している場合よりも汗の量が17%減少すると発表しています。
さらに、帽子をかぶり、メガネかレンズの色が薄いサングラスを着用しましょう。サングラスの選びかたとして、太陽光線を集めやすい色の濃いレンズは避けてください。目からも紫外線が入ってきて、角膜が炎症を起こして目が痛む、充血する、視界がゆがむ、視力が低下するなどの症状が出ることがあります。また、後編でも詳しく話しますが、目から紫外線が体内に侵入すると顔や体の皮膚を黒くすることもわかっています」
夏のメラニンの蓄積で秋にシミができる
続けて、「残暑の日焼けケアに手を抜いてはいけないもうひとつの理由」について、正木医師はこう説明をします。
「春や夏に浴びた紫外線による影響で、メラニンの生成が9月に進みます。メラニンが皮膚の内部に蓄積してシミになるのです。シミは1日でできるのではありません。日々の日焼けの積み重ねによってできるということを覚えておきましょう。
先ほどお話しした紫外線ケアを実践したうえで、肌のケアも丁寧に毎日実践しましょう。ポイントは、洗顔後は化粧水、乳液、クリーム、美容液などで保湿することです。保湿を怠ると、皮膚の表面のバリア機能がダメージを受け、さらに紫外線の影響を受けやすくなります。
そして、栄養バランスの良い食事、水分補給、充実した睡眠、1日30分ほどのウォーキングやヨガ、筋トレなどの軽い運動を熱中症に注意したうえで行いましょう。肌の調子も、医学的にはこうした生活習慣が重要になります。肌ツヤが良い状態は健康のシンボルとも言えます」
ここで正木医師は、紫外線対策をさぼったときにできるシミやそばかすについてこうアドバイスを加えます。
「紫外線対策をしないと、30代後半から、『日光性色素斑』、通称『老人性色素斑』という直径数ミリメートルから数センチの目立つ斑点ができるようになります。その色調はベージュから濃い茶色までいろいろなタイプがありますが、肌との境界は明瞭になり、大きく目立つシミとなってとれにくくなります。
老人性色素班は、顔だけではなく、手の甲や腕にもできてきます。近い将来の肌の状態を想像すると、いまのケアの重要性が理解できるでしょう」
聞き手によるまとめ
老人性色素斑のお話しにどきっとし、9月に入ったからといって紫外線に油断すると、近いうちに大きなシミになりやすいことがリアルにイメージできました。「紫外線対策+保湿」のケアを真夏と同じように毎日実践しようというモチベーションもアップしました。シミも美肌も一日にしてならず、ということです。
次回・後編では、「シミ・日焼け対策のウソホント」についてご紹介します。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
残暑日焼けに気を抜いてはいけない理由2つ【臨床内科専門医が教える】