梅雨の時期になると体がだるく重いうえに、むくみやすいように感じます。リモートワークで座りっぱなしの時間が長いこともあるでしょう。
臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長によると、「梅雨のころに体がむくむのは、全身の水分代謝の悪化が影響していると考えられます。座る時間が長いと重力の関係で、とくに足がむくみやすくなります。また、一年を通して塩分の取りすぎなど食生活も原因となります。この機会に、栄養素に注目して食事を見直しましょう」ということです。詳しいお話を聞きました。
気圧の低下で水分代謝が悪化してむくむ
はじめに正木医師は、梅雨時にむくむ原因についてこう説明をします。
「梅雨は気圧が低い日が続くので自律神経のバランスが乱れ、全身の血流に影響します。余分な水分を排出するようにも働く静脈やリンパ液の流れが鈍くなることがあるのです。すると、老廃物の排出が正常に行われにくくなって皮ふの下や血管に血液中の水分がしみ出します。
しみ出した水分は通常、静脈に再吸収される、あるいはリンパ液とともに流れるのですが、何らかの理由でその働きがとどこおるとむくみが生じ、ひどくなることがあります」
座りっぱなしや同じ姿勢はむくみの原因に
リモートワークによる長時間の座りっぱなしも影響するのでしょうか。正木医師は次のように説明を続けます。
「影響します。同じ姿勢が続くだけで血流やリンパの流れは悪化するからです。とくにむくみが目立つ足は、心臓から遠い位置にあること、重力の関係で血液循環が悪いため、血液中の水分が血管からしみ出しやすい、またその水分が再吸収されにくくなります。
デスクワークだけでなく、立ち仕事や運転、飛行機や長距離バスで座っている時間が長い、入院中で寝ている時間が長いなども同じことです。運動不足ということです」
塩分の取りすぎはむくみやすくなる
よく「塩分を取りすぎると体がむくむ」と聞きます。食事とむくみにはどういった関係があるのでしょうか。
正木医師は、「私たちの体には、体内の塩分濃度を一定に保とうとする働きがあります。塩分が過剰になった場合は、薄めるために水分を取り入れようとします。すると体内に水分がたまってむくむわけです」と話し、具体的に次の食事に注意を促します。
「ハムやウインナーなど塩分を使用した加工食品、インスタント食品、ファストフード、外食などでの塩分が多くて濃い味付けの食事は、むくみの原因になります
厚生労働省による『日本人の食事摂取基準』(2020年版)では、成人の1日当たりの食塩摂取目標量の目安を、男性は7.5グラム未満、女性は6.5グラム未満 と推奨しています。しかし実際には、厚生労働省による平成30年の「民健康・栄養調査」の結果では、食塩摂取量の平均値は10.1グラムで、男性は11.0グラム、女性は9.3グラムになっていて、目標よりも過多だということがわかります。
気圧の変化、運動不足に加えて食生活が乱れていると、むくみは悪化するでしょう」
お酒を飲みすぎたなと思う翌日には顔がむくんでいます。正木医師は、「お酒の飲みすぎ、水分の取りすぎ、精神的なストレス、冷えも血流やリンパ液の流れに影響し、むくみやすくなります」と指摘します。
もうひとつ気を付けたいこととして、「水分不足が原因になることもあります。むくみが気になるから水分を控えるという人は多いのですが、水分が不足すると尿量を減らすホルモンが分泌されて、体は水分を溜めこもうとします。水分は1日に1.5~2リットル ぐらいの摂取が適切です。それぐらいは毎日取り入れて、自然に排出しましょう」
体内の水分や塩分を調節する食品を積極的に取る
では、どのような食生活を心がければいいのでしょうか。正木医師は、「塩分を控えると同時に、体内の水分や塩分を調節することがポイントです。それらに役立つ栄養素をご紹介します」と話し、次の7つを挙げます。
(1)カリウム
体内の水分や塩分を排出、調節する働きがあります。カリウムが不足していると、余分な水分が排出されずに溜まるようになります。生野菜や果物、とくにアボカドや長芋、キュウリ、ホウレンソウ、バナナ、海藻やキノコ類、小豆などに多く含まれています。
(2)タンパク質
血液中のタンパク質の一種であるアルブミンは、血液中の水分の量を調節する働きがあります。このアルブミンが減少すると血管から水分が漏れ、むくみの原因になります。タンパク質は牛肉や豚肉、鶏肉などの肉類、魚類、牛乳、チーズなどの乳製品や大豆製品に多く含まれます。
(3)食物繊維
老廃物が排出されなければ腸に溜まり、腸内環境が悪くなります。すると体内で水分が吸収されずに、むくみにつながります。玄米やサツマイモ、ゴボウ、ホウレンソウ、長芋、キャベツ、セロリ、納豆、トウモロコシなどに多く含まれています。
(4)クエン酸
体内の老廃物を分解し、排出する働きがあります。また、新陳代謝を促す、冷え予防に働きかけるなどして、血流促進にも働きます。多く含まれる食材には、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類、キウイ、パイナップル、梅干し、酢などがあります。
(5)ビタミンE
血流を促す、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。キャベツ、モロヘイヤ、アボカド、ナッツ類、イクラやタラコに多く含まれます。
(6)ビタミンB1
ビタミンB1は、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。脚気は、現代ではめったにかかる病気ではありませんが、ビタミンB1が欠乏すると全身倦怠感やむくみを発症します。
豚肉や豆腐、ウナギ、栗などに豊富に含まれています。
(7)ビタミンB6
ビタミンB6は、補酵素として多くのアミノ酸の代謝を助けています。赤血球のヘモグロビン合成などの作用もあり、また、ホルモンバランスの乱れを整えることでも知られています。ニンニク、マグロ、カツオ、サンマ、サバ、レバー、大豆、バナナ、パセリ、抹茶などに含まれます。
むくみ対策の食事について正木医師はこうアドバイスを加えます。
「なかでも予防のポイントは、『塩分を取りすぎないこと』『カリウム』『タンパク質』です。これらに注意、注目して、全体として栄養のバランスが整っている食事をとってください。味付けには塩分を控えめにし、素材の味を楽しみましょう。むくみだけではなく、腸の不調も改善されるでしょう。
さらに、むくみが長く続くようなら、腎臓や心臓、肝臓、のどぼとけの下にある甲状腺などの病気が隠れている場合があるので医療機関を受診しましょう」
梅雨の時期のむくみに気づいたら、塩分過多やお酒の飲みすぎ、食事の栄養バランスが偏っているサインかもしれません。これらの栄養素を取り入れた食事でむくみも体調も改善したいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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