かつては“女の園”と揶揄(やゆ)されることもあった、キャビンアテンダントの世界に挑む男性が増えているのだそうです。
そんな世相もあいまってか、2019年秋、アイドルグループ「King & Prince」の永瀬廉さんが男性キャビンアテンダント役で主演を務めるスペシャルドラマ『FLY!BOYS,FLY! 僕たち、CAはじめました』が放送決定。このドラマに全面協力をしているのがジェットスター・ジャパン(以下、ジェットスター)です。
他社に比べて男性の割合が高いジェットスターですが、それでもその人数は約400人中60人ほど。まだ圧倒的に女性が多い環境です。
その中で働く、庭本太郎さん(41)。どうしてその仕事をしようと思ったの? 実際のところ働きやすさはどうですか? そんな素朴な疑問を携えて、キャビンクルーの仕事についてお話を伺いました。
月80時間、空の上
——前回、一度は「性別を理由に客室乗務員になることを諦めた」と話されていましたね。
庭本太郎さん(以下、庭本):はい。「男性である自分には無理だ」と思い込んでいて。それでもやはり空の上でお客様にサービスがしたいという気持ちを捨てきれず、ジェットスターの採用試験を受けました。
——そのとき、34歳。大きな決断だったと思います。キャビンクルー*になってみていかがですか? 働き方もずいぶん変わったのでは?
*ジェットスターではキャビンアテンダント(客室乗務員)をキャビンクルーと呼んでいる。
庭本:働き方については、1ヶ月のスケジュールが発表されて、それに従って乗務をしています。日帰り、(宿泊を伴う)ステイ、深夜のフライトもあるので、24時間体制で働いています。
——えっ。大変そう。月にどのくらい搭乗するんですか?
庭本:私たちは回数ではなく、フライト時間で見ていて、約80時間から90時間を上空にいる計算です。日数にすると17日ほどです。
ジェットスター・ジャパンが就航している路線には全て搭乗していて、現在だと国内16都市・24路線、国際4都市・7路線を、私は成田空港を拠点に各地に搭乗しています。
性差を特長と捉えてサービスに活かす
——転職前に気にされていた、性別が壁になることはありますか?
庭本:壁を感じることはありませんが、男女の違いは、意識するようにしています。悪い意味ではなく。業務には男性に向いているものとそうでないものがあるんです。例えば、手荷物を収納棚に入れるサポートだったり、急病で動けないお客様の体を支えたりという力仕事は、男性が行うほうがスムーズ。
逆に、女性の特有の事情で気分が悪くなったお客様や授乳しているお客様のフォローは、女性のキャビンクルーに任せます。このように、状況に応じて男性である自分が動くべきかそうでないかを判断しています。
——“女性らしい感性”なんて言われることもありますが、サービスの質で違いを感じることはありますか?
庭本:人による、と思いますね。私は、前職でホテル業界にいて、マナーは相当厳しく教え込まれてきました。そこで身につけたことが、現職でも活きている部分もある。それは私の特長のひとつだと思います。
サービスのクオリティーを高めるためには、おのおののキャビンクルーが自分の特長を理解することが必要で、性別もそのひとつとして捉えればいいのではないでしょうか。
——あの……。愚問ではありますが“女性のタテ社会”みたいなことは感じますか?
庭本:ありませんね。みんなプライドを持って仕事をしている印象があります。厳しい選考や訓練を通過して、キャビンクルーになっているので。私はもう7年目になりますが、他のキャビンクルーから毎回新しい刺激を受けます。
——お客様の安全で快適な旅をサポートするという目的は同じですもんね。休日は何をされているんですか?
庭本:体力勝負の仕事なので、ジムに通っています。それから、40代になっていっそう身だしなみに気を遣うようになりました。サービスをするときに、好印象をもっていただけるように見た目の清潔感を意識しようと。
——庭本さん、好感度も素晴らしいですよね。お話中ずっと口角が上がっていてそのような所作からもプロ意識を感じます……。
庭本:ありがとうございます。所作についてはグランドスクール(地上訓練)の最終段階で、グルーミング、アピアランスという外見や振る舞いについての分野があり、そこで「自分が思っている以上にお客様には見られているから、通路を歩くときは、ステージだと思って歩きなさい」と教えられました。私は身長が185センチあって、それだけでも目立っていると思うので、視線はいつも意識しています。
定年まで働き続けたい
——ステージ! お話を聞いているとお仕事の充実ぶりが伝わってきますが、客室乗務員ってあまり長く続けられるイメージを持っていなくて。次のキャリアについてはどう考えていますか?
庭本:憧れの職業に就けたということもあり、やめたいと思ったことは一度もありません。正社員として契約しているので、体力の続く限り飛び続けたいと考えています。
世間的には、客室乗務員は長く続けられる仕事ではないとか、契約社員だから会社を変えなければならないと思われていますよね。でも、ジェットスターには長期雇用制度も設けられていて、長い目で自分のキャリアを考えられる環境にあるので、限界まで続けていきたいです。
——いつか機内で庭本さんにお会いしたいです。
庭本:ありがとうございます(笑)。最近は仕事の幅も広がってきたんですよ。キャビンクルー以外に、イベントなどに参加してジェットスターの認知度向上などに取り組む「イベントサポートチーム」としても活動しています。
お客様に接する機会が増えるのはありがたいことですし、そのなかには「庭本さん、機内で見たことあります!」と覚えていてくださる方もいらっしゃって。そのようなうれしいことがあると、ますます頑張ろうと思えます。
キャリアをスタートしたときから、お客様の役に立てること、笑顔になってもらうことに喜びを感じる本質は変わりません。その気持ちを忘れずに、これからもキャビンクルーとして成長していきたいですね。
(聞き手:安次富陽子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
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