猛暑だった夏も過ぎ、すっかり秋模様。BBQやアウトドアなど、外で過ごすのにもぴったりな季節になりました。
BBQと言えば「肉」ですが、ちょうど去年の年末にTPP(環太平洋経済連携協定)が発効され、オーストラリア産やニュージーランド産などの「輸入牛」をスーパーでも多く目にする機会が増えました。
一方、お手頃な価格で牛肉を買えるようになっても、「輸入牛はなじみがない」「赤身が多くて硬い」「独特の風味が気になる」といったイメージもあり、なかなか購入することがないという声も……。
そこで、今回は、「お肉は人を幸せにする」と断言するエバラ食品の田中敬二さんに、「輸入牛のおいしい食べ方」を聞いてみました。バーベキュー上級インストラクターとお肉検定1級の資格を持つ田中さん直伝のアドバイスは必見です。
輸入牛と国産牛の違いは?
——最近、スーパーで「輸入牛」が目に入ることが多くなりました。正直、国産牛との違いがよく分かりません。
「輸入牛」は「国産牛」と比較すると、赤身が多いことと、厚切りのお肉が多いことが特徴です。特に、注目したいのがオーストラリア産とニュージーランド産の「輸入牛」です。2019年は、輸入量が大幅に拡大すると予測しています。
——「輸入牛」と「国産牛」の一番の違いは何ですか?
まず、「輸入牛」は「国産牛」よりも価格がリーズナブルという点が挙げられます。
それと、「輸入牛」が身近になることにより、肉のバリエーションが増えることにも注目してほしいですね。肉の種類や部位の選択肢が増えるということは、栄養面においても選択の幅が広がることにもつながります。
例えば、サシ(脂身)が多い「和牛」に比べて、赤身(筋肉)が多い「輸入牛」は、タンパク質や鉄分が豊富で、脂質が低い。ステーキでよく食べるサーロインやリブロースの栄養成分を見ると、「和牛」よりも「輸入牛」のほうが、約1.5倍もタンパク質や鉄分が多く含まれていることが分かります。ステーキといっても、種類や部位によって、栄養成分が大きく異なるのです。
これからは、価格だけでなく、栄養面のことも考えて、自身の体調やシーンに合わせてお肉を選んでみてはいかがでしょうか?
家で輸入牛をおいしく調理するコツ
——確かに「輸入牛」は「肉質が硬い」というイメージがあります。というのも、この前「輸入牛」を買って家で調理したのですが、焼き過ぎて硬くなってしまいました。おいしく食べるコツを教えていただけますか?
そうですね。確かに、サシが細かく入って非常にやわらかい「和牛」に比べると、サシが少なく赤身が多い「輸入牛」は、やわらかさにおいて劣るかもしれません。一方で、先ほども言った通り、「輸入牛」のほうが栄養価が高く、脂肪分が少ないお肉なんです。せっかくなら、「輸入牛」に合わせた調理法で、新しい楽しみ方をしてほしいですね。
お肉の「漬け込ワザ」でさらにおいしく
——「ヘルシー」というのは意外でした!「輸入牛」に合わせた調理法というのは?
ビーフステーキやチキンステーキなどの「かたまり肉」を調理することが多い海外では、酢や油などを合わせた「マリネード」、塩や砂糖を溶かした「ブライン液」などに、あらかじめ漬け込む調理法がスタンダードです。漬け込むことによって、食感がやわらかくなり、お肉のうまみも引き出してくれます。
――なるほど。でも、漬け込むのって難しそう……。時間もかかりそうだし。
初めての方には、さまざまな調味料を混ぜて漬け込むのは、ハードルが高いかもしれませんね。そこで、一番簡単でおすすめなのが、市販されている焼き肉のたれ。ジッパー付きの袋にお肉とたれを入れて、袋の上から軽く押さえる程度にもみ込み、30分ほど常温で寝かせるだけでOKです。たれの割合は、お肉の重量の20~25%程度を目安にしてください。
——たった30分でいいんですね。
「輸入牛」のような赤身のお肉は、たれに含まれる有機酸の働きにより、筋繊維に隙間が生まれて、そこに糖やアミノ酸が入り込みます。すると、保水力が高まり、肉汁の流出が抑えられるので、ジューシーでやわらかいお肉になります。加えて、お肉に含まれるイノシン酸と、たれに含まれるグルタミン酸が合わさることで、うまみが何倍にも強く感じられる相乗効果もあります。
——漬け込んだステーキを焼くときのポイントを教えてください。
まずは、ステーキ肉を常温に戻して、たれをキッチンペーパーで拭き取ります。お肉を冷蔵庫から出してすぐに焼き始めると、内部の温度が上がらず、表面だけが焦げてしまうので要注意です。必ず、お肉を常温に戻してください。
フライパンを温めて薄く煙が出てきたら、一度火を止めて、サラダ油または牛脂を引きます。再度、火をつけて強火で30秒ほど焼き、弱火にして1~2分焼きます。その後、裏返してまた強火で30秒、弱火で1~2分焼きます。
両面を焼いたら、火を止めます。フライパンからお肉を取り出して、アルミホイルで包むか、火を止めたフライパンの上で、2分ほど休ませます。お肉を休ませることで、うまみである肉汁がお肉全体に行きわたり、よりジューシーなステーキに仕上がります。
ちなみに、この焼き方は、厚さ1.5センチのお肉をミディアムに仕上げる場合を想定しています。レアの場合は弱火の時間を短く、ウェルダンの場合は弱火の時間を長めにしましょう。お肉の厚さやご自身の好みによって、時間を調整しながら焼いてみてくださいね。
——強火と弱火を使い分けることが大事なんですね。
お肉をやわらかくジューシーに仕上げる焼き方のポイントは、お肉の中心温度が65度を超えないようにすること。お肉は加熱し過ぎると、コラーゲンが収縮して、肉汁が出てしまい、硬く縮んでしまいます。焦がさず中心までゆっくりと熱を伝えるために、強火と弱火を上手に使い分けてください。お肉内部の温度を測ることができる「肉芯計」があれば、ステーキや大きな「かたまり肉」を焼くときに便利ですよ。
——ありがとうございます。最後に、田中さんからメッセージをお願いします。
「輸入牛」は「国産牛」よりも価格がリーズナブルですし、栄養面でも利点があるので、ぜひ召し上がっていただきたいですね。
また、お肉を焼いたときに生まれる食欲をそそる香りは、アミノ酸と糖が引き起こすメイラード反応によるもの。そして、メイラード反応は、たれに漬け込んだほうが活発に起こります。お肉がやわらかくジューシーになる“漬けワザ”をぜひ実践してみてください。
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情報元リンク: ウートピ
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