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最初はイヤイヤだったけど…運動音痴のわたしが40年目に見つけた新たな趣味

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お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコさんによる連載「今日も今日とて、もがいてます」。川村さんの日常に巻き起こる小さな出来事から、衝撃の事件(!?)まで。川村さんのユニークな視点で綴っていただきます。第3回は、仕事で(ほぼ)強制的にはじめることになったランニングが趣味になったお話です。

運動音痴の私に新しくできた趣味

みなさん、趣味はありますか? 私は40歳を過ぎて趣味ができました。

最近は多い時で1週間に一回、少なくとも10日に一回走っています。

そうです。ランニングです。エッサホイサ! エッサホイサ! ホイサッサ! の音がぴったりハマる程スピードは遅いですが、ほぼウォーキングよりのランニングですが、趣味、ランニングです。

100メートル23秒を叩き出し、中学の体育の時間「お前みたいな遅いやつ、見たことないわっ!」と体育教師に怒鳴られた私に運動の趣味が足されるなんて、夢にも思いませんでした。

「川村エミコ」と書いて「運動音痴」と読むくらい運動が苦手です。川村・音痴・エミコ。です。あ、これじゃあ、ただの音痴になっちゃいますね。川村・運動音痴・エミコ。です。んー。兎にも角にもミドルネームで入れたいくらい運動ができません。

バトミントン倶楽部で羽根に一度も当たらず1年間の倶楽部活動を終えたこともあります。あの虚無感は未だに忘れられません。羽根は見えているのに、ラケットに一度も当たらずでした。

そんな私ですが、まさか40過ぎて趣味が増えると思っていなかったので儲けもんです。ラッキー!!です。

走り始めるまでは死ぬほど行きたくないのですが、あら、不思議。走り出したらこっちのもん!です。

「き、き、気持ちいいー!」風が吹いたもんなら「風、ありがとう!」「私、風を受けています。生きています!」な実感もゲットできます。

「来年、フルマラソンやることになったから」

そもそもの始まりは、2019年に遡ります。

2019年春。某日。下町育ちで、携帯のロック解除番号を「人生最高!」をもじって3150にしちゃう錦糸町育ちの明るいチーフマネージャーさんから電話がありました。

「川村、来年フルマラソンやることになったから! いやー、嬉しいよ」

その少し前に担当のマネージャーさんから「どうします?」とお話があり、「そうですねぇ、少し考えます」と答えていたのですが、チーフマネージャーさんは「やることになったから」とすでに決まっている状態でした。

「あれ? やりますって言ったかなぁ」と一瞬考えましたが、挑戦できるのはありがたいなぁと思い、「よろしくお願いします」とお伝えしました。

多少押されたらなびきます。

エミコ、なびきます。恋愛もそうですが、多少押していただけたらすぐなびくんです。恋愛における「なびき」の準備はできています。丁寧に正座をし、殿方を待ってる次第でございます。

ウェアに着替えただけでエライぜ! 私!

話は戻りまして、「よろしくお願いします」と言ってから夏まで一旦マラソンのマの字も思い出さないくらい伸び伸び過ごしました。夏が終わりに近づく頃、そろそろ練習しなくちゃだなぁなんて思いつつ、2019年9月1日マラソン初練習。運動がどうにもこうにも苦手なのでウェアに着替えただけでエライぜ!私!と思いながら、いざ皇居へ。

この時は、着替えただけだけどエライぜ!私100パーセントの気持ちと本当は走りたく無いぜ!100パーセントで皇居に向かった次第です。

嫌だ!嫌だ!けど、やる!!で動くのもアリでして、嫌だけど、やらなきゃしゃーない!でやるのも、やる事には変わらないです。

嫌な気持ちを確認しつつ、行動だけ前向きに走り出してみました。

走り出してみたところ、ウォーキングから、ほんの少し、本当にほんの少し飛び跳ねるという行為すなわちランニングになった途端に身体が重くて熱くて、一歩一歩ビタンっ! ビタンっ! と地面に粘土を思い切り叩きつけるような衝撃を身体に感じ、びっくりしました。

1キロビタンビタンで限界。そして500m歩き、また1キロビタンビタン突入。また500m歩く、そして1キロビタンビタン、最後1キロ歩く。目の前がモヤモヤしてきました。限界です。膝が笑い出し、1回目のランニング(というかほぼほぼウォーキング)は終わりました。

年明けに10キロ完走できたけど…

しかし、根っからの真面目っ子倶楽部のわたくしは、そこから週1ペースで500mずつ走る距離を伸ばしていき、2020年年明けすぐの小牧10キロマラソンを完走。運動は相変わらず苦手意識がある中、皇居の5キロの流れを知ったら、「あ、ここはもう2.5キロ」、皇居の周りは日本の県が書いてあるのですが、「おっと、四国突入、後半です!」とか楽しみ方を少しわかってきました。

「ハマりはしないけど、その場は楽しめばいいじゃん!」に変わってまいりました。

そういえば、バイトなども行くまではものすごく嫌で嫌で仕方なかったですが、いざバイト先に到着するとこれ、不思議。楽しくなっちゃうタイプです。性格が暗く見られがちで、たしかに基本ネガティヴモンスターですが、楽しめちゃう自分がいるわけです。

居酒屋バイトでは、「次のお客さんの注文ビンゴ」なるものをして楽しんでいたりしました。マス目に居酒屋のメニューを記入し、注文が入ったらそのマスを消せる。一列先に揃った方が勝ち! おつかれ一杯を奢る。というのをやったりしていました。割と楽しみ上手だったりします。

また話を戻します。フルマラソン本番まで1週間をきり、18キロを走れるようになった最終調整当日。走り終わったと同時にニュースが飛び込んで来ました。

「2020名古屋ウィメンズマラソン中止になりました」

悔しさ9割、ニヤニヤ1割

そうです。コロナです。コロナによるフルマラソン中止のお知らせ。

「え!」

結構大きめの声が出ました。

心にぽっかり穴が空きました。地面に穴を空けるのは大変ですが、心の穴は一瞬で空きますね。オープンテラスのある喫茶店でアメリカンサイズのアイスティーをガブガブ飲んでその穴を埋めようとしたのですが、なかなか埋まらず飲み干しました。

真面目っ子倶楽部部員の私は兎にも角にも練習してきたので、全身のチカラが抜けまして、小さくなって横になりたいと空を見つめながら思いました。

中止を楽しもうとはさすがに思えずで、完走できたとしてもできなかったとしても、挑戦したかったというのが本音で、その本音9割と中止になってニヤニヤする気持ちが1割ありました。その1割の気持ちがどこかにあって良かったです。

真面目っ子倶楽部に入らない、「運動はそもそも苦手だし、ないならないでね!」のニヤニヤ倶楽部の部員もいてよかったです。そのニヤニヤに救われる事もあります。気持ちって一つでないです。気持ちを伝える時は量が多めの方優先で良いと思っている次第です。

不完全燃焼で2020年のマラソンは終わり、そして、全く走らなくなりました。

(完)

とエンドロールが流れてきそうですが話はまだ続きます。

もう仕事じゃなくなったけど

本番がなくなった代わりにオンラインマラソンなるものが開催されるとの情報を得ました。

ルールは、「日本のどこを走っても大丈夫です。家の周りを42.195キロ走っても大丈夫です。それで完走と見なします。期限は5月末」とのこと。

別にココからは仕事でもなんでもないですし、「そっかぁ。どこでもいいかぁ。でも、携帯の充電そもそも持つかなぁ」「指定アプリをダウンロードねぇ。大変だわねぇ」とかやらなくて良い理由はいくらでも出てきます。要するにどちらでも良いのですが、次第に私の中の貧乏根性がむくむくと出てきたのです。

「エミコ!勿体ない!」「せっかく走ったのに!無駄にする気か!」と期日ギリギリの5月末、42.195キロを10.5キロくらいずつ4日間毎日走るオンラインマラソンに参加。

これがものすごくキツかったです。あの練習の日々はいずこへ? 炎天下もあってか初練習並みのキツさでして、信号のある街中を走っていたのですが、信号の度に止まるためペースは作れないし、足はどんどん痛くなり、不織布マスクが酸素を奪い、足を動かしても動かしても前に行かず、4日目はゆっくりめの妊婦さんに追い抜かれ、鳩にすら追いつかず、手をひたすら振りながら進みました。

4日目の完走のゴールをお気に入りの珈琲屋さんにしていたのですが、オーナーが「えー、走ったの?すごいじゃん!」と褒めてくれたその一言が救いでした。言葉偉大っ!

アイスコーヒーを飲んでいると空にブルーインパルスが飛んで来まして(そう、あの日です)あっという間に去っていきました。

「あれは時速何キロなんだろう」「42.195キロ何分なんだろう」とふと思ったりしながら、医療従事者の方への感謝の気持ちと空で結構な音と速さの飛行機を見たことがなかったので、なんだかとても怖くもなり、平和を願いました。

11時間36分15秒

どうにかこうにか完走できた初のオンラインフルマラソン。タイムは、脅威の11時間36分15秒でした。

練習を無駄にしたくなかった気持ちで走りました。仕事でなく、誰からも頼まれたわけでもなかったのですが、それがすごく心の開放になりました。無駄じゃなかったよ。と自分で自分をギュッとしてあげられた時、なんだか走るのは悪くないなと2%くらい思えました。ただこの時もまだ趣味になる気配はなかったです。

私の中で終わったと思っていたフルマラソン挑戦は次の年もやってきました。会場は愛知県名古屋市。名古屋の町を走れるのはありがたい!でもまたあの練習の日々。

2020年の夏頃ふんわりとお話をいただき、ふんわりまたやらなきゃなぁと思い始めたものの、なかなか本腰入らず、12月の41歳の誕生日から練習をスタート!

始めたらやり抜きたいタイプでして、「中三日 開けたら 自分が辛くなる」と心に掲げて、どんなに疲れていようと練習。コロナもあり年明け1人で迎えた今年は元旦も走りました。

ホワイトデーの本番まで続け、制限時間7時間の中、6時間51分02秒というギリギリランで完走。

最後の35キロからは、練習してついた体力のお陰で運動が苦手な私でも走ることができました。

諦めなければ、ゴールは待っててくれました。

走った人達がゴールで迎えてくださいました。

そんなこんなでフルマラソンが終わりました。

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大人になってこんなに褒められるなんて

40代になってからでも何かに挑戦できる事に本当に感謝です。完走したら、「え? こんなに褒めてもらえるの?」ってくらい褒められたこともありがたかったです。大人になって褒めてもらうことってなかなかありませんよね。

走っていると、会う人会う人、褒めてくれます。

褒められたい人、マラソンするべし!です。

5キロをハァハァしないで走れるようになってから、とってもリフレッシュできるようになりました。ほんのり余裕ができてから楽しくなりました。

完走できた事で、この先違う挑戦をする時にも諦めず自分で「〇〇だから」と制限を付けず挑戦をすることができそうな気もしました。

そもそも私にとって「走る」なんてことは、待ち合わせに遅れるとか何かしらのトラブルに対処することで、生活の中で余裕を持って準備さえしていれば必要ないと思っていました。

けれど、今回挑戦したことで、走ることは邪悪なものを私の中から排除してくれて、考えをシンプルにしてくれることがわかりました。ランで邪気払いです。

走っていると、何がしたいのかどんな風に生きていきたいかむくむくとシンプルに整理されます。机の上でなんでも考えるタイプでしたが、ランしてスッキリアイデアラン!

これが分かってからもマラソンが好きになってきました。運動でリセットし、自分をコントロールしやすくなることが分かりました。そこからです。とうとう新たな趣味を手にしました。

走り出したら「こっちのもん!」

本番が終わって、数ヶ月経ちますが、エミコ、走っています。

先日、プライベートであおぞらリレーマラソンなるものにも参加してしまいました。

ハマっております。

今ではマラソンの良い出しがほいほい出てきます。手ぶらでできる。お金掛からない!←これ大事。

走り出すまでは億劫だけど、走り出したら「こっちのもん!」必ず走り終わった後リフレッシュ! 考えがシンプルになる、年齢関係ない! リレーマラソンなんか参加した日にはちょっとした運動会気分を味わえる、10日に一回走っておくと体重とくに減る訳ではないけど、太らない! 1人で過ごしていると一日中話さない日もあるけど、走ると挨拶できる! もしかしたら今後マラソンラブがあるかもしれない!

と良いことずくめで、エミコの趣味にマラソンが加わりました。たまにウォーキングの日もあります。決めつけず、自分のペースでできるのも良いです。

嫌だ!って気持ちで何かをしても良いんだとわかりました。嫌な気持ちのままスタートしてもいつか楽しいに変わることもあり、一つじゃない気持ち全部を抱きしめてなんでもやっていきたいなぁと思います。

それでは、今日も走ってきます。

みなさん、マラソン一緒にいかがでしょうか?

情報元リンク: ウートピ
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