「数時間マスクをつけていると、口臭がうつってつらい」という読者の悩みがいくつも届いています。そこで、口腔衛生や口臭に詳しく、『すべての不調は口から始まる』(集英社新書)という著書が話題の歯学博士・江上一郎医師に、口臭あるあるの原因とケア法について、連載にてお話しを聞いています。
これまでの回はどれもアクセス数が高く、口臭対策への注目度の高さがうかがわれます。次の記事を参考にしてください。
【第1回】口臭の原因はアレだった! 自分で確認する方法は?
【第2回】だ液と緑茶で…口臭の発生源『舌苔』のセルフケア法
【第3回】タマネギ、ニンニク…口臭が発生しやすい食材は?
【第4回】お酒の飲みすぎで口がくさい…歯学博士が教える原因と予防法
【第5回】おなかがすくと口臭が強くなるのはなぜ? 即効ケア法は?
今回・第6回では、「更年期で口臭がきつくなってきたかも…」という読者のお悩みについて尋ねました。
更年期に口臭が強くなる理由
江上医師は、「『自分の加齢臭に気づくきっかけになったのは更年期のころの口臭だった』という患者さんはとても多い」と話し、その原因について次のように説明します。
「ホルモンバランスの変化で口臭が発生することがあります。女性は妊娠期、思春期、更年期のころにみられます。とくに更年期には、女性ホルモンの減少や、自律神経のバランスの乱れでだ液が減少します。
これまでにもくり返しお話ししたように、だ液には消臭や抗菌の機能が備わっています。つまり、だ液が減少すると、口内でそれらの機能が低下するため、口臭が生じやすくなるのです。
また、『更年期の女性の口内では、自律神経の機能によってだ液中の特定のタンパク質が変動する』という研究報告もあります」
前回(第5回)のお話しでは、口臭の分類として、「病的口臭」と「生理的口臭」があること、そして生理的口臭には空腹時や起床時の口臭などがあるということでした。では、更年期の口臭はどちらに分類されるのでしょうか。
「更年期のホルモンの変動による口臭は生理現象であるため、生理的口臭に分類されます。つまり、誰でも起こりうることです。セルフケアはあとで紹介しますが、何らかの病気や、ストレスが強くて不眠や情緒不安定が見られる場合以外はとくに気にする必要はありません」と江上医師。
男性の更年期に口臭は関係する?
男性も更年期に口臭が強くなるのでしょうか。
「男性は年齢による男性ホルモンの急激な変化はないため、口臭との関係は報告されていませんが、加齢による生理的現象と、生活習慣は強く影響していると考えられます。
更年期のころには、肉に偏った食事の内容や、お酒、タバコ、歯周病、水分摂取不足、ストレス、加齢などによってだ液が減少してきます。歯磨きをあまりしない人もいます。その時期と、口臭を発していると自覚する時期が重なっているために、更年期口臭だと認識する人が多いようです」(江上医師)
ストレスがあると口臭がする?
次に江上医師は、「多くの患者さんに、『ストレスがあると口臭が強くなるというのは本当か?』と聞かれますが、実際にストレスと口臭は強く関係しています」と話し、その原因についてこう答えます。
「だ液が減少して口の中が渇いた状態をドライマウスと呼び、これは口内の疾患です。そして、口臭外来の患者さんの8割はドライマウスであることがわかっていて、口臭の原因になっている場合が多いのです。
そしてそのドライマウスの原因は、何らかのほかの病気がある場合や特定の薬を服用している以外は、ストレスである場合がとても多いのです。
ストレスが強い、継続している場合は緊張状態にあり、自律神経のひとつの交感神経が優位に働いています。例えば、人前で話すときには緊張でのどが乾くように、交感神経はだ液の分泌を抑えるように働きます。するとだ液中の成分が濃縮され、においを発する菌にとっては増殖や活動にもってこいの環境になり、口臭が発生します」
では、ストレスによる口臭は気にする必要がありそうです。
「口臭そのものより、原因となるストレスは脳と体の健康に悪影響を及ぼします。口臭やだ液の減少を自覚したときはそれを機に、ストレスが溜まっていないかを見つめてみてください」と江上医師。
更年期口臭、ストレス時口臭のケア法
では、更年期やストレス時の口臭をセルフケアするにはどうすればいいのでしょうか。江上医師は、「口臭の原因が更年期のホルモンの変動でも、生活習慣でも、ストレスでも、加齢であっても、これまでも話してきたように、自分でケアする方法の第一は『だ液の分泌を促すこと』です。次の方法を試みてください」
□起床時、就寝前には必ず歯を磨く。
□だ液の原料である水を1日1.5~2リットル飲む。
□第2回で紹介した、舌苔(ぜったい)を専用ブラシやコットンなどで週に3~5回、やさしくふき取る。
□第2回で紹介した、口や舌の運動をする。
□第5回で紹介した、だ液の分泌を促すため、ガムを噛む。むし歯予防のため、キシリトール含有で砂糖0%のものを選ぶ。
□ストレス時口臭の場合はとくに、これを機に栄養バランスの整った食事や質の良い睡眠を心がけるなど生活習慣を見直す。
□笑うことは緊張やストレスを緩和してだ液を分泌することがわかっている。「笑う」、あるいは面白いことがなくても、「わっはっはと笑う運動」をする。
□早口言葉を続けて言う練習をする。「パ」「タ」「カ」「ラ」を早口でくり返すパタカラ運動なども有用。
聞き手によるまとめ
更年期の口臭は生理的口臭であるため、過剰に気にする必要はないとのことで安心しました。しかしながら、ストレス時の口臭は健康状態を表すサインと言えるようです。日ごろからストレスが溜まらない生活を心がけ、だ液の分泌を促す方法を実践して、口臭ケアを続けていきたいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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