肌の手入れの方法はその時々の環境に応じてと言いますが、春は目や鼻、口の周囲をはじめ、額や頬などにムズムズ、カサカサとしたかゆみを感じることはありませんか。
臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長によると、「春の妙なかゆみにはそれなりの原因があります。かゆい間は肌の状態はよくありません。なぜそうなるかを理解して適切なケアを行いましょう」ということです。
3回に分けて、春のかゆみ対策について紹介します。今回の第1回は、その原因と症状について正木医師に詳しく尋ねました。
乾燥で肌のバリア機能が損なわれてかゆくなる
はじめに正木医師は、「春のかゆみの原因のひとつは乾燥」であることを告げ、こう説明をします。
「春は湿度が低い状態で気温が上昇します。その影響で実は乾燥しているのですが、冬のような自覚がなく気づきにくいのです。春の天気が良い日に、部屋の湿度計を確かめてみてください。すると、観測場所にもよりますが、湿度は30~40%台で冬と同じようにかなり低いことがわかるでしょう」
さっそく部屋の湿度計を確認すると、40%前後でした。これに伴う肌の状態について、正木医師は次の説明を続けます。
「乾燥によって肌がかゆくなるのは、肌に備わっているバリア機能が関係しています。皮ふのもっとも外側にある角質層には、花粉などの異物や大気中の有害物質が侵入するのを防ぐ重要な働きをしています。
角質層には潤いを含む角層細胞がすき間なくつながっていて、さらにその表面を皮脂の膜が覆っています。そうして肌の内側の水分が蒸発するのを防いで潤いを保っているわけです。
しかし空気の影響で肌が乾燥すると、角質がはがれる、また角質層にすき間ができてバリア機能が損なわれます。すると内側の水分が蒸発し、外部からの刺激にも弱くなり、神経が刺激されてかゆみが生じるのです」
そうすると、かゆみは肌あれのサインと言えそうです。
「そのとおりです。顔や腕、胸、背中などがかゆいときは、全身の肌が乾燥しているのだと察知しましょう」と正木医師。
花粉を追い出そうとする防御反応でかゆくなる
正木医師は次に、「春はとくに花粉もかゆみの原因になる」と言います。
「春はスギ花粉をはじめとした花粉の飛散量が増えます。花粉症でなくても、花粉が原因で目や鼻、肌がかゆくなることはあります。
花粉症で目や鼻がかゆくなるのは、花粉によって粘膜の表面の神経が刺激されるからです。また、花粉が目や鼻から体内に侵入するのを防ぐための体の防御反応でもあります。体は花粉を異物だと判断しているのです」
防御反応として肌にかゆみが生じる仕組みには「やはり乾燥が誘因になる」と、正木医師は説明を続けます。
「肌の角質層は花粉やウイルス、ホコリなどの異物をブロックします。ところが先ほど説明したように、乾燥によって角質層にすき間ができると肌のバリア機能が低下し、花粉が肌に侵入しやすくなるのです。それを感知して、あるいは防ごうとして、かゆみが生じます」
春に急増する紫外線も原因
春のかゆみにはもうひとつ重大な原因があり、それは「紫外線」だと正木医師は指摘します。
「紫外線の量は、2月後半から4月にかけて、冬よりも急に増え出します。しかし春の陽気を待っていたからか紫外線を意識せずに日光浴をしたくなることがあるでしょう。
冬の間は紫外線量が少なく、肌は衣服に覆われていたので受ける刺激が少ないのですが、薄着になって春の紫外線を大量に浴びると、肌のバリア機能が低下して肌は炎症を起こしがちになり、かゆみが出ます。
また、夏のように紫外線対策を入念に行わないことも、春に紫外線の影響を受けやすい原因と言えます」
少しの刺激でダメージを受けてかゆみが生じる
ここで正木医師は、春のかゆみが肌にもたらす症状について次のように挙げます。
「乾燥による症状は冬と同じで、指先や手の甲、おなか、背中、すねなどがカサカサになりかゆくなる、皮ふに亀裂が入るなどします。
花粉では、花粉を付着しやすい顔や首に、かぶれや赤み、ぶつぶつ、湿疹が発生して、くすぐったいかゆみが出ることがあります。
日焼けの場合は、赤くなる、ヒリヒリと痛みが生じる、ホコリや衣服などのちょっとしたこすれでもかゆみが生じます」
さらに正木医師は、かゆみがひどい場合についてこうアドバイスを加えます。
「あまりに乾燥がひどくてしもやけのようになる、湿疹ができる、赤みが強い、肌がひび割れしている、カサカサがひどい、白い粉をふいたようなどで日常生活に差し支える症状があれば、皮脂欠乏性湿疹という皮膚の病気かもしれません。高齢者にはとても多いケースですが、若い世代でも、肌が敏感な人や仕事で手を洗うことが多い、よく消毒するなどの人は注意が必要です。この場合は治療が必要なので、早めに皮膚科や内科を受診しましょう」
春のかゆみの三大原因は、「乾燥・花粉・紫外線」であり、冬や夏には注意していても春にはケアを忘れがちなことがあるということです。症状の原因を理解して、予防をしていきたいものです。続く後編では、その予防法、対処法について紹介します。
(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)
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春のかゆみをどうにかしたい! その原因と症状を臨床内科専門医に聞く