コラムニストの桐谷ヨウさんによる新連載「なーに考えてるの?」がスタートしました。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第14回目のテーマは「O=Ossan(オッサン)」です。
※画像はイメージです。
憧れていた人がいつの間にか「ウザいオッサン」になっていた
「オッサン」は世間で嫌われる存在である。いや、正確に言うと「ウザいオッサン」が嫌われているようだ。反面、少数の「ナイスなオッサン」は、若者にはない知性と色気を武器に、独特の魅力をちらつかせているように見える。
近頃のコンプライアンス的なノリで「オッサン」という言葉を使うのはぶっちゃけ憚(はばか)られる。しかし、この愛しさと憎らしさを同時に表現するには、「中年以上の男性」と呼ぶのは、ちょっとちがう。「オジサマ」と言葉尻だけをキレイにしても、気持ちわるい。やはりここは、「オッサン」という愛称を使わせていただきたい。
俺も36歳になった。自分のことを「立派なオッサンになったなー」と思っている。
そう、せっかくオッサンになるのだから、できるかぎり「ナイスなオッサン」でありたいと考えている。そんな動機があって、自分ごととして、ここ数年身近なオッサンたちをしっかり観察するようになった。そうすると面白いことに気づくようになった。
オッサンとして完成されている年齢、イメージでは50代とかですかね。そのあたりはジェネレーション・ギャップがあって、おまけに良くも悪くもオッサンとして完成されているので、なぜそうなったのか過程がイマイチわからない。
なのだけど、5歳上くらいの友人を見ていると、徐々に見かけるようになってきたんだ……。リアルタイムでウザいオッサン化している人たちが……。これに気づいたときは、寒気がした。
というのも少し前まで「カッコいい兄ちゃん」と思っていた人たちが、いつのまにか「ダサい」「ウザい」「キモい」と言われる(そこまでか?w)オッサンの発言をするようになり、行動を取るようになっていくのを見かけるようになってきたのです。この怖さが伝わりますか?
俺はどこかで「若い頃からウザい人間が、ウザいオッサンになっていく」と勝手に思っていたんです。そうじゃない。
俺が俺の目で見てナイスな兄ちゃんだと思っていた人(そしてまわりからも憧れられていた!)が、俺が苦手なウザいオッサンにトランスフォーム(変容)している姿を見かけるようになってきたのです。怖いだけでなく、寂しかった。
ちなみにもともとウザいタイプの人間は、やはりウザいままである。ウザくないオッサンの人口って少なすぎやしないか。。(今回の記事は主観が入りまくりなので、そこはご容赦ください。。)
ウザいオッサンの特徴
ここからは俺が気づいたウザいオッサンポイントを列挙していきたい。同時に、なぜそうなってしまうのかを考察していきたい。女性に関してはそれを見て優しくスルーしていただけたら幸いである。男性に関しては、一緒に気をつけていこう。
1. 独演会をおこなう(人の話を聞けない)
一緒にいてしんどいなと思うオッサン、ひとりの例外もなく独演会をかますのです。これ自体はまぁ良いわけです。真っ当な上下関係を分かっている人なら、もちろん目上は立てるわけで、なるべく相手に気持ちよく話してもらうおうと思うわけです。
が、話がとにかく長い。そのうえ話が絶望的につまらない。いや、同世代ならばそれなりに楽しめるトークかもしれないけど、世代を超えた話題じゃないのに、そこに対する考慮がないだけに、こちらは相槌マシーンにならざるをえない。これ特に上司の相手をしている女性は頷きまくってくれてると思うんですけど。
特に厄介なのは「知識と経験を押し出してくる」パターンで、たとえば食通なオッサンは「君たちは本当に上手い肉と酒を知らないよ」というトーンで、わりとベタなものをドヤ顔で語ることが往々にしてある。そもそも人の食った美味いもの自慢ほど全人類が興味ないものはないのに、横から見ているとやっぱり知識と経験のマウントとしてやってしまうっぽいんだ。(そもそも都内の飲食店のだいたいは不動産代が入っていることを考慮していない時点で、価値を分かっていない証拠である)
そしてもっときついのが、年下が話を持ちかけたときに最後まで聞けない人。俺からすると面白いネタを提供しているのに、「そんなのつまらないよ」とばかりに一蹴して、自分の話に戻してしまう。これは社会的にそれなりに成功しているオッサンに多い。というのも、それなりに成功(サラリーマンならば出世)している人は、自分がデキるという自負があるうえに、つまらない話でも良い反応で聞いてもらえる環境に甘んじてしまっているのだ。すなわちトーク力が欠如している(ビジネス以外の)。
そして、若者に対する敬意が足りない。未熟でもいまの世の中の感覚を誰よりも感じ取っていて、5年後に社会のメインストリームがどういうふうに動いていくかを肌感覚で持っている世代(特に20代)をナメているんだと思う。
2. 他人と比較した幸せに価値を置いてしまう
たとえば美食、高級時計、高級車、マイホーム。
それらを所有することだけが素晴らしいと考えているのは、前時代の価値観というのは常識になってきていると思う。純粋にそれらが好きな人が求めるのはかまわないけれど、それは趣味の領域であり、もはやみんなが欲しがるものではないよね、という。
それがダサいオッサンになってきてる人たち、自分が買えるようになってくると、なんか買うんだわ……。そしてSNSにアップするんだわ……。結局は欲しかったんだなぁって。世の中的にはあまり露骨に自慢できなくなってきたけど、それでもいまの40前後の人たちってそう言うのに憧れてきた世代なのかもしれない。
いや、もちろんそれ自体は全然良いんです。他人がケチをつけるようなことじゃありません。なんだけど、興味がない(そこに価値観を持っていない)人たちにも、遠まわしにそれを話題として出してくるんですよね。要は褒めてもらったり、羨ましがられたい。もうストレートに言ってくれたら良いのに!(笑)
ただこれに関しては別の考え方もできて、いまの40前半の人たちって就職氷河期で大変な思いをした人たちが多くて、そのなかで成功できた人たちって自分に自負を持って当然だと思うし、もう少し上のバブル世代とのギャップを感じやすい世代なのかなぁって思ったりもする。このあたりはいまの30半ばとは少し、感覚がちがうのかもしれない。
3. 価値観のアップデートがない
そしていちばんの問題は、価値観のアップデートがないことである。言ってしまえば、1も2もここに端を発した問題と言える。
たとえば
「カッコいい」「ダサい」
「言っていい」「もう言っちゃダメ」
このあたりの感覚というのは、時代とともに変わっていくものである。そしてこれを更新することは、意外に難しい。
なぜならその感覚を持っている中心の世代は年齢が離れすぎていて、肌感覚として捉えることができない。立場のちがいがあってフラットに話を聞く機会を得ることが難しい。あるいは前述のように、話をそもそも聞こうとしない人も多い。
あるいは30歳を超えると同世代の集まりと言うのもかなり細分化されてきて、限られた人間関係しか持たない人が増えてくる。接している人の数というよりは、ちがう価値観も持った人との交流を持つことが、難しくなりがちなのだ。
そうなってくると古い価値観がそのまま更新されずに温存されている人が出てくる。というか、気をつけないとそうなってしまうってことなんだろう。俺にとっても、これを読んでくれている人にとっても、まったく他人事ではない話である。
どうしたら若さに憧れないオッサン/オバサンになれるんだろう?
さて、30代後半になると世間的に男性はオッサン、女性はオバサンと呼ばれる存在になっていく。でも、年齢なんてただの数字だ。心身ともに美しく歳を取っているオッサン(オバサン)は本当に素晴らしい。俺はそうなりたい。自分の仲がいい人がそんな人でいてくれたらもっと好きになってしまうと思う。
そして、年齢とともに知性とユーモアの年齢を豊かにしていくことができたら、若さに憧れを持つことなんてないだろう。どうすれば美しく老い、楽しく老いていくことができるか、老新人として興味が尽きないのである。120歳まで生きたいという最近の願望、健康オタクっぷりも、これを追求していく時間が欲しいからなのだ。
そう、結局は「愛される存在」になれるか、という問題なのかもしれない。チャーミングなオッサン、チャーミングなオバサンは誰の目から見ても魅力的じゃないですか。
今日書いたオッサンのウザさとかダサさの特徴についても、オッサンだからウザいって話じゃなくて、誰がやってもウザいノリなわけで、それが悪目立ちする年齢とか立場になっちゃってることに気づけないことが問題って話だと思う。
俺が出会うことができた魅力的なオッサン(オバサン)は、いつも機嫌が良さそうにニコニコしていて、立場や年齢に関係なく気さくに接してくれて、それでいてこちらが無遠慮でいることに恐縮してしまう雰囲気を放っていた。外見は無理をしない若さを保ちながら、それでいて貫禄を持ち合わせていて。会話についてはこちらの話にいったんは耳をひたすら傾け、価値がある話はいくらでも聞き続け、自分のほうが知っている場合にはそれとなく嫌味なく、含蓄のある話を聞かせてくれていた。いま、何人かを思い浮かべながら書いてるんだけど。
そういう人になっていきたいし、そういう人に会ってもらえる自分でありたいと思います。
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情報元リンク: ウートピ
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