頑張っていれば評価された20代に対して、30代は仕事で結果がシビアに求められるようになる年代です。ときにはプレッシャーで不安ばかりが膨らんでしまうことも。不安な気持ちに振り回されずに上手に仕事を進めるコツを、『マッキンゼーで学んだ感情コントロールの技術』(青春出版社)の著者で人材コンサルタントの大嶋祥誉(おおしま・さちよ)さんに聞きました。
全5回シリーズの第1回です。
仕事ができる人は感情に振り回されない
——ウートピの読者のなかにも、仕事で結果を出せないことに悩んでいる女性はたくさんいると思いますが、大嶋さん自身もそういった経験をお持ちだそうですね。
大嶋祥誉さん(以下、大嶋):まさに劣等生でした(笑)。最初に就職したコンサルティングファーム・マッキンゼーは優秀な人ばかり。先輩や同僚と比較しては、自分は全然ダメだと落ち込んでいました。もっとスキルを磨かなくてはとか、人とは違う分析をしなくてはとか、そう思えば思うほど空回りして思ったような結果を出せない。それがさらに焦りや不安を生み、成果があげられないという悪循環に陥っていました。
——それを乗り越えられたきっかけは何だったのでしょうか。
大嶋:あるとき、先輩にこう言われました。「目の前にある、やるべきことに集中しなさい。まずは自分ができることにエネルギーを注ぐことが重要」と。
当時の私は、仕事をする前から、「私には無理、できない」という負の感情に振り回されていました。つまり、目の前にある仕事ではなく、自分の感情にエネルギーを使っていたのです。でもマッキンゼーの優秀なビジネスパーソンたちは、どんなに忙しくても、トラブルが起こっても、イライラしたり焦ったり、感情を乱すことなく、淡々と自分がやるべきことに取り組んでいました。先輩の言葉によって、結果に結びつかない最大の理由は、スキル以前に感情の問題だったことに気づいたのです。
「不安=スキルが足りない」は間違い
——仕事で結果を出すためには、スキル磨きより感情コントロールのほうが大事だと。
大嶋:スキルは十分あるのに、いざというときに力を発揮できない人は大勢います。そして、多くの人は失敗すると自分の能力の無さに原因を求めてしまいがち。どんなにスキルを磨いても、不安に苛まれれば、結局本来持っている力を発揮できず、不安は増幅するという負のスパイラルに陥ります。もちろん、スキルを磨くことは大切ですが、それは2番目、3番目でいいんです。
——たしかに、不安を払拭する努力が、スキルアップに向いてしまう20〜30代の女性は多いですよね。
大嶋:そうなんですよ。これまで、2000チーム以上のコーチングやパフォーマンスアップのサポートをしてきましたが、できる女性ほど、「完璧主義者」であり「自己肯定感が低い」傾向にあると感じます。だから、スキルアップにばかり目が向いてしまうのでしょうね。
——スキルが足りないから不安になるのではなく、不安になるのはスキルが足りないからと勘違いしているということでしょうか。
大嶋:そういう女性は多いと思います。冷静に対応すればできるレベルの仕事でも、「私にはできないかも」とか「完璧にやらないと」と、まずは不安と焦りが先にたってしまう。感情が乱れていては、持っている力を発揮できるはずがありません。私自身もスキルがないからできないと勘違いしていたけれど、実はスキルと自分の感情を混同していたのです。
感情と事実を切り分けられる人の行動パターン
——なるほど。実際に持っているスキルと感情は別なケースもあるのですね。
大嶋:感情と事実を切り分けられる人は、適当でもいいからとにかく仕事を始めてしまいます。例えば、文章を書く仕事なら、まずは書いてみる。ざっくりと、適当でもいいから、とりあえず完成させる。ブラッシュアップしていくうちに、いいものに仕上がっていけばいいわけです。
最初から完璧なものを求めてしまうから、プレッシャーに負けて仕事に取りかかることさえできなくなってしまう。仕事にとりかかるのに時間がかかる人は、スキルより感情に目を向けることをおすすめします。
——わかってはいても、なかなかコントロールできないのが感情です。
大嶋:たしかに難しいとは思いますが、感情コントロールは誰にでも身につけられる「技術」です。不安が起こると人間の脳はそこでさまざまな「負」のストーリーを作ってしまいます。ですから、まずは不安など負の感情と事実は、実は違うということを認識することから始めてみましょう。
*次回は11月8日(木)公開予定です。お楽しみに!
(取材・文:塚本佳子、撮影:面川雄大)
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情報元リンク: ウートピ
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