出産を決意した仕事一筋37歳独身フリーランス女性の私に起こった心身の変化。妊娠を喜ぶ一方で、「これまでの自分の考え方や実績が消えてなくなるのではないか」という恐怖とどうやって共存していったかがこれまでの記事。最後に、自分の許し方について、自分へのメッセージも込めてまとめます。
働く女性にとって妊娠・出産はリスクなのか
まだ妊娠する以前のこと。「子どもを持つことはいいことだ」とか、「家族がいないと老後が寂しいよ」とか、まあいろいろ言われた時期もありました。実際にそういう側面もあると思うし、そうじゃない側面もあると思います。「誰かと一緒にいるから見える景色もあれば、一人だからこそ見える景色もある。何を選ぶかは自分次第だ」そう思って、今まで一人で頑張ってきました。
その気持ちは、今でも変わりません。「産むのは良いことだよ」なんて、軽はずみで言う気もありません。そのくらい人生への影響は大きいですし、背負うものも大きい。
今回の連載をウートピさんからご相談いただいた時に聞かれたのが、「妊娠出産はキャリア女性にとってリスクなのか?」ということでした。答えは、正直わからないです。短期的にはリスクだと言えると思います。特に私のような自営業者は、妊娠・出産が即無収入に繋がります。
今回は法律婚をせず出産することを決めましたが、シングルマザーとはいえ、保育園に入れる保証はありません。収入が減れば精神的にも困窮していくでしょうし、貯金が尽きれば子どもを食べさせていけません。貧困は心も痩せ衰えさせます。愛し合った人とその間に生まれた子どもを、愛せなくなる日が来るかもしれないという恐怖と、そうはさせまいという誓いとの戦いです。
「子どもを産み育てることで、心が豊かになる」「仕事の幅が広がる」という意見もあります。そういう側面は確実にあるでしょう。ただこれは、結果論だと思っています。そんな無責任なこと、私にはとてもじゃないけれど言えません。
結局、「キャリア女性にとって妊娠出産がリスクかどうか」は、自分が決めることなのだと思います。中絶だって立派な判断のひとつ。だいぶ昔、その辛さも経験しました。深く悩み考えて、このまま産んでも、自分も子どもも不幸にしてしまうと判断したから。だから、その判断を非難する人がいたとしても、私は動じない。
きっとこの瞬間も、自らの妊娠にどう向き合うか悩んでいる人もいるでしょう。そういう人はとにかく、素直な気持ちで自分とよく会話してほしい。どうせ答えなんかないんですから。自分で選べばいいんです。
正解も不正解も、エラいもエラくないもない。誰かの評価なんて気にしなくていい。大事なのは、自分で自分を幸せにすると決めること。それが揺るがない自分を作っていくのだと思います。
予測不能のものは怖くて当然。そんな自分も受け入れる
歳を重ねれば重ねるほど、先の見通しを立てるのがうまくなります。でも、妊娠・出産・育児はそうは行きません。自分自身も大きく変化しますし、多かれ少なかれ仕事にも影響があります。生まれてくる子どもが健康だという保証もないし、何より一度産んだら戻せません。そりゃあ、怖くなって当然です。
私自身、変化する自分の心身に頭が追いつけず、混乱したり、泣きわめいたり、パートナーに理不尽に当たることもありました。これからもあるでしょう。でも、それが当然なのだと思います。自分の強さも弱さも受け入れながら、少しずつ、母親になっていく。なっていきたい。
一方で、無理に「母親」になる必要もないと思っています。出産を選んだものの、どうしても心がついていかない、仕事から心が離れず子育てが億劫になる、そういうこともあると思います。気持ちがどうしても「母」になれなかったら、「自分の身体は、子どもがこの世界に出てくるための門だった」くらいの感覚でいいと思うのです。そもそも、母親に正解もお手本もありません。これだけ生き方が多様になった時代ならなおさらです。そこで無理に自分を型にはめるよりも、自分が出来る形で子どもと向き合っていったほうがいいと、私は考えます。
妊娠・出産に限らず、女性の人生は常にダイナミックです。結婚にしたって、今の日本ではどうしても女性の方が激しい変化を伴うし、理不尽に思うことも多々あります。妊娠・出産となればなおさらです。ただ、幸いにして妊娠の場合、産むまでに時間の猶予があります。仕事に不安があるのなら、産休産後に備えて準備をすることもできますし、家計に不安があるのなら金銭面を見直す事もできますし、暮らしに不安があるのならパートナーと話し合うこともできます。
結局私たちにできることは、必死に考え、選択し、今を精一杯生きること、ただそれだけです。悩んで当然なんです。間違ったと思ったら道を替えればいいし、そんな自分を許しながら進めばいい。その先に、誇りある「私なりの正解」を見いだせたら、それでいいと思うのです。
<この連載を最初から読む>
第1回:妊娠中だから書けるリアルな感情を残したい
第2回:私の仕事、どうなっちゃうの?
(落合絵美)
- 想定外の妊娠・出産が気づかせてくれたこと。坂井真紀『駅までの道をおしえて』に出演
- 転職後、すぐに妊娠。復職を支えてくれたのは“制度より風土”だった
- うっかり妊娠、4ヶ月で妊娠中毒症に。子どもを諦めた私に腎移植が見せてくれる夢
- 妊娠したとたん弱体化した…私が『マジカルグランマ』を書いた理由
- 「妊活自粛宣言」をしてみたけれど…あの人の仕事と妊娠のタイミング
- 予期せぬ妊娠で夢を見つけて起業「神様が意地悪するはずがない」
情報元リンク: ウートピ
怖くて当然。ためらって当然。そんな自分を許しながら母になる