今年は「平成最後の夏」。すでに夏休みを満喫している人も多いのでは? 帰省したり、旅行に行ったりするのもいいですが、おうちでゆっくりと映画を見るのもなんとも贅沢な時間。そこで、ウートピでは、「ホラー映画について語り始めたら一晩と言わず三日三晩語れる!」という映画ライターの石井隼人さんにウートピ読者にオススメのホラー映画を紹介ピックアップしてもらいました。コメディやヒューマンドラマは好きだけれど、ホラーはちょっと……という貴女にこそ見てほしい映画を紹介していただきます。
「平成最後の夏に観たいホラー映画・平成編」では、夏季休暇中に自宅でまったりしながらひんやりとできるJホラーの代表的3作品を紹介します。
日本独自の怖がらせ方として世界中の観客の背中をゾッとさせ、“Jホラー”という名称を与えられた作品の中でも、日本代表選手といっても過言ではない最怖の3本。学生時代に映画館で目撃してトラウマ的恐怖を植え付けられたという平成生れのウートピ読者も多いのではないでしょうか? 社会人として様々な人生経験を経た今だからこそ、その“トラウマ”に立ち向かってみませんか。
ブラックならぬゴースト職場での恐怖
『女優霊』(中田秀夫監督、平成8年/1996年公開)
最悪ですよ……。何がって、自分の職場に地縛霊のようなものがいて、そのオバケが呪い襲いかかってくるんですから。せっかく好きで選んだ仕事や会社なのに、人間関係や環境ならば改善の余地はありますが、人間ならざる者の脅威が原因となると……退職以外の選択肢ナシの絶対絶命です。そんな恐怖的状況に追い込まれた男の悲劇を描くのが、この『女優霊』。
舞台は、新人監督・村井の長編映画監督デビュー作の撮影が行われている映画撮影所。和気あいあいと撮影が進む一方で、ヒロインの転落死、撮影済みのフィルムに写り込んだ謎の映像など、次から次へと起こる怪現象。村井はその映像の真相を探るべく、調査を始めるが……という展開。
公開当時、大きく注目されることはなかったものの、監督が中田秀夫、脚本が高橋洋というJホラーを知らしめた映画『リング』コンビということもあり、Jホラーの原点的作品として後々再評価。直接的な暴力や音響や特殊メイクで恐怖を表すような欧米スタイルとは異なり、ふとした瞬間にこの世ならざるモノがボンヤリと佇(たたず)んでいたり、部屋の片隅や写真など日常的一コマやアイテムを使って怪異を仄(ほの)めかす怪談噺的ヒュ~ドロドロな恐怖演出はお見事です。
販売元:バンダイナムコアーツ
価格:3800円(税抜き)
クレジット:(C)バンダイビジュアル/WOWOW
ヒロインはシングルマザー 最怖キャラを生んだエポック作
『リング』(中田秀夫監督、平成10年/1998年公開)
最悪ですよ……。何がって、偶然観たビデオが“観たら1週間で死ぬビデオ”なんですから。そうです、ホラー映画嫌いもご存じ、日本が生んだ最恐最悪キャラクター・貞子の登場です! 観たら1週間で死ぬという呪われた謎のビデオテープを巡る恐怖の物語で、ホラー作家・鈴木光司による同名小説を松嶋菜々子、真田広之、中谷美紀ら超メジャーなキャストを配して実写映画化しました。
本作の功績はなんといっても、呪いの発信源である山村貞子を生んだこと。長髪を顔の前にたらし、白装束のような衣装で井戸から這い上がってくる様のビジュアルショック! 髪の毛の間から覗く無毛のギョロ目! テレビモニターから這い出てくる貞子の姿は、バラエティー番組などで無数のパロディーを生みました。
恐怖だけではなく、物語の根底には母性にまつわるドラマが流れており、物語の深みがきちんとあるのも時代を超えて語り継がれる理由。松嶋菜々子が演じるのはテレビ局のディレクターであり、一児のシングルマザー。キャリアウーマンが珍しくなくなった平成ならではのキャラクター設定であり、仕事一筋だった女性が呪いのビデオを見てしまった息子のために立ち上がるという、泣ける“母強し”映画でもあるのです。
作品名:『リング』
Blu-ray発売中
発売元:角川書店
販売元:ポニーキャニオン
価格:3800円(税抜き)
(C)1998「リング」「らせん」製作委員会
大人になった今こそ見たい! 引っ越しホラー
『呪怨』(清水崇監督、平成15年/2003年公開)
最悪ですよ……。何がって、せっかく引っ越した場所が呪われているんですから。どうする引っ越し代! どうする手数料! どうする住宅ローン! 引っ越しを予定されている方に、まず観てほしい作品です。霊的なものゆえに、事前に物件を下見したってわからないという不条理。「これは怖い!」と口コミで大ヒットを記録したのも納得です。
過去に惨劇のあった一軒家に関わる人々に襲い掛かる恐怖を描いた内容で、次から次へと飛び出してくる怖いシチュエーションの連続は、恐怖のデパートさながら。恐怖の元凶である全身白塗りブリーフの子供・佐伯俊雄くん、その母で貞子と双璧を成す平成ニッポン生まれのホラーキャラクター・佐伯伽椰子は大人気に。
顔面蒼白の血まみれ伽椰子らに家中を追いかけられるのは、確かに怖い。しかし最悪なのは、そんな家を労力をかけて買ってしまったり、借りてしまったりしたということ。買うにしたって中古住宅購入のためのローン審査にヤキモキしたり、多額の金が動く不動産屋や売り主との折衝を繰り返して、購入前から疲弊したり。ややこしい作業が終わって、晴れて新居で心機一転と思った矢先に呪い死んだら……死んでも死に切れませんよね。一人暮らしの女性ならわりと身近な「引越し」をめぐるホラー映画です。
作品名:『呪怨』
発売日:発売中
価格:2500円(税抜き)
発売元:東映ビデオ
販売元:東映
(映画ライター・石井隼人)
- 「怖い」「グロい」だけじゃない…!平成最後の夏に観たいホラー映画【昭和編】
- 「帰省は義務ではありません」 “家族の絆”がしんどいあなたへ
- よくも悪くも厄介な「母親」という存在 かつて“レディ・バード”だった私たちへ【鈴木涼美】
- 「平成最後の夏」にやりたいコトは何ですか? 働き女子に聞いてみた
- 帰省しなくてもコミュニケーションは取れる ミゾイキクコさんに聞く、親との付き合い方
- 21年ぶりのパルムドール『万引き家族』 是枝監督に聞く、“家族の絆”の居心地悪さの正体
情報元リンク: ウートピ
怖いけど懐かしい…!平成最後の夏に観たいホラー映画【平成編】