以前、「ストレスや不安で眠れない…漢方薬という選択肢はあり?」という記事を配信したところ、好評を博しました。その際に、「カリカリして怒りが強くて眠れないとき」はどうすればいいですか、という質問が複数、寄せられました。
そこで今回は、「カッカとして目がさえる」などで寝不足が続くという場合に試したい漢方薬について、前回同様、漢方専門医で臨床内科専門医、また消化器内視鏡専門医でもある吉田裕彦医師に聞いてみました。
「気」の巡りが滞り、過剰になって眠れない
はじめに吉田医師は、眠れないときは、「例えば、寝る前のスマホやパソコンの長時間の操作や生活リズム、また周囲の騒音、寝具の状態など睡眠前後や寝室に関する環境を見直して、その要因を取りのぞくことを優先するべきです。
しかし、怒りでカッカとする、イライラが止まらないなどで眠れない場合はそれではおさまらず、ストレスが脳に大きく影響していると考えられます。その場合は、簡単に解消するのは難しいでしょう」と話します。
日々、ストレスとつき合いながら暮らしていかなければならない現実にあって、よりよい眠りを得るヒントとして吉田医師は、「漢方の考え方を参考にしてみてはどうでしょうか」と、次のようにアドバイスをします。
「漢方では、人間の心身の活動は『気(き)、血(けつ)、水(すい)』の働きのバランスで成り立っていると考えます。『気』とは元気や気力の気で、『血(けつ)』は血液など栄養を与えるもの、『水(すい)』は水分など潤いをもたらすものとイメージしてください。
ヒトは、『気(き)、血(けつ)、水(すい)』の働きが充足しているときは、昼間の活動的に動き回る『陽』の状態から、心身が十分に休養できる『陰』の状態に自然に移って、健やかな眠りを得ることができるでしょう。
怒りやイライラで眠れない状態は、おもに『気』のめぐりが滞って熱が頭に昇り、疲れをもたらしていると考えます。それが『血(けつ)』や『水(すい)』の状態に複雑に影響するわけです」
西洋医薬の睡眠薬とは違った働きでしょうか。
「そうです。漢方薬は、心身のバランスを整えて、健やかに眠れる心と体にするように働きます。また、外から受けるストレスをなくすというより、ストレスを受けても、バランスを保てる心身を目指そうというとらえ方になります。
漢方薬の場合は種類によって、怒りやイライラにともなう不眠の改善とともに、便秘や胃重感など胃腸の不調や、顔や頭がカッとするのぼせ、また頭痛や肩こり、動悸(き)、更年期の症状などの改善が期待できます」と吉田医師。
カッカに対応するいくつかのタイプから、体力や症状別に選ぶ
次に、どのような漢方薬が挙げられるのか、吉田医師は次のように説明を続けます。
「漢方薬は、体力や体格、関連するほかの症状も含めて、適切な処方が選択されます。市販薬から選ぶ場合、パッケージに対象となる人の傾向が記載されているので、必ずそれを参考にしてください。
代表的なものを以下に挙げました。怒りやイライラがある不眠症の場合で、体力やほかの症状に注目して、自分に合う種類を選びましょう」
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
体力は中等度以上、のぼせがあって顔色に赤みがある、イライラして落ち着かない。めまい、動悸、更年期障害、湿疹など皮膚(ふ)炎、皮膚のかゆみ、口内炎ができやすいなどに。「気」の停滞により体の上部に熱がこもり、「水(すい)」と「血(けつ)」のめぐりも悪化し、湿疹や皮膚炎や口内炎もその症状とみます。
紫胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうことぼれいとう)
体力は中等度以上、ストレスや更年期障害からイライラして緊張が強い、不安感や落ち込みがある、便秘がち、動悸がある、血圧が高めなどの場合に。頭が興奮しているため、「気」のめぐりを改善して気分を安定するように働きます。
抑肝散加陳皮半夏(よくさんかんかちんぴはんげ)
体力は中等度、神経が高ぶり、興奮しやすい、些細なことでも怒りやすい、イライラが強い、また、ストレスで胃腸が弱い傾向があるなどに。不足している「血(けつ)」を補って、「気」と「血(けつ)」のバランスを整える、自律神経を安定するように働きかけます。
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)
体力中等度以上で、のぼせ気味で顔色に赤みがあり、精神不安、みぞおちがつかえて胃が重い、便秘がち、高血圧にともなうのぼせ、肩こり、耳なり、頭重、鼻血、更年期障害、月経困難などに。体の熱や炎症をとり、イライラを鎮めるように働きます。
さらに吉田医師は、「どれが自分に合っているか迷うようなら、薬局に常駐する薬剤師に遠慮なく相談しましょう。わからないままに自己判断で選ぶと、飲むだけ無駄ということもあります。
また、2週間程度服用して改善が実感できない場合は、漫然と続けずに、漢方薬を扱うクリニックや不眠を専門とするクリニックを受診してください。ウエブサイトなどで検索すると見つけやすいでしょう」
怒りやイライラで眠れない理由は、心身に熱がこもって、脳や精神の活動が停滞しているからであり、そのようなときには、「気・血(けつ)・水(すい)」のめぐりを整えて熱を抑え、不眠の改善に働く漢方薬を試してみては、ということです。参考になさってください。
(取材・文 ふくいみちこ・品川 緑 / ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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