猛暑から解放されて、朝晩は涼しい秋になってもなお、体がだるい、元気が出ない、睡眠は浅くて日中に眠いなど体調や睡眠に影響が出ていませんか。夏バテの延長なのか別の不調なのか……、その原因や対策がわかりません。
そこで、「秋に起こる体の不調」について、臨床内科専門医で女性外来がある正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長に尋ねました。
猛暑の疲れは一気に回復せず、気温差が影響する
正木医師はまず、「秋の始まりから中ごろに覚える多様な不調は近ごろ、『秋バテ』と呼ばれるようになりました。猛暑が続くようになって久しいですが、それと同時に、夏の疲労に続いて秋バテにも悩む人が急増しています」と話し、秋バテの症状について次のように説明を続けます。
「初秋のころはまだ日中は暑くて湿度も高い日が続きます。朝晩は涼しくなっても、猛暑による疲れの蓄積は一気には回復しないため、『長い夏バテ』、『夏の疲労を引きずる秋バテ』が考えられます。
また、秋になって朝晩と昼の気温差や湿度差が大きくなる中、夏の生活習慣を続けていると、心拍や血圧を調整する自律神経に負荷がかかってバランスが乱れやすくなります。これが原因で、胃もたれ、下痢と便秘をくり返す、睡眠トラブル、けん怠感、めまいや立ちくらみ、頭痛、微熱、肩こりなどの症状が現れます。
オフィスで強い冷房が効いている、冷たいドリンクや食べ物をとる、入浴はシャワーで済ます、薄着や夏用の布団で過ごすなど、夏の習慣を続けていませんか。梅雨のころからそのような生活を長く続ける人が多いようですが、実は気づかない間に体の内側から冷えてさまざまな不調をもたらす原因になります」
夏バテと秋バテの原因は同じ
次に、秋バテと夏バテとの違いについて、正木医師はこう話します。
「夏バテは、夏の高温多湿に自律神経が対応しきれなくなって生じます。つまり、夏バテも秋バテも原因は同じで、自律神経のバランスの乱れによります。
ただし、症状は違います。夏バテの場合は、秋に比べて胃重感や下痢など胃腸のトラブルや、過剰に発汗して体温調節が普段よりできなくなる、体の水分が不足するといった症状が多くなります。熱中症につながる可能性も高いでしょう」
温かいものを食べる、運動の継続、秋も紫外線を予防
秋バテのケア、予防はどのようにすればよいのでしょうか。正木医師は、「自律神経のバランスを整えるために日ごろの生活習慣を見直しましょう」と、気をつけるべき次の5つのポイントを挙げます。
(1)食事
夏に食べていた冷たいものを秋になっても同じように食べていると、胃腸が冷えた状態が続き、全身の血流の悪化や免疫機能の低下につながります。温かいドリンクや食事をする、体が温まる根菜類、またビタミンやミネラルが含まれる食材を選びましょう。水やお茶も、なるべく温めるか常温で飲みましょう。
(2)適度な運動
夏は高温なので少し歩くだけでも十分な運動になりますが、涼しくなるとそうはいきません。運動不足にならないように、1日に20~30分ほどのウォーキングやストレッチ、また数分の筋トレを継続して行いましょう。
(3)入浴
38~40度のぬるめのお湯に5~10分程度つかりましょう。自律神経の1つでリラックスモードのときに働く副交感神経が優位になり、血流の循環もよくなります。入浴前後にはコップ1杯を目安に水分補給をしましょう。
(4)冷房の設定温度
夏と同じにしておくと、気づかないうちに体が冷えて体調の悪化をまねきやすくなります。設定温度は、屋外との温度差が5度以内を目安にしましょう。
(5)紫外線
夏が終わったからといって、紫外線対策を怠らないようにしましょう。紫外線を浴びると、自律神経の中枢(ちゅうすう)がある脳の細胞が酸化する、また体力が奪われて疲労が溜まりやすくなります。紫外線は年中降り注いでいるため、紫外線カットの機能がある帽子や日傘、サングラス、クリームなどで対策をしましょう。
睡眠時にアロマオイルを活用
もうひとつ、メディカルアロマセラピーに詳しい正木医師は、「日ごろの疲れをとり、快調へ導くポイントは質の高い睡眠です」と話し、快眠に向けたアロマの活用についてアドバイスを加えます。
「秋バテで寝つきが悪い、夜中に目が覚めるといったときは、ラベンダーやベルガモット、カモミールなど、緊張や興奮を抑える作用があるという精油から好みの香りを選び、ティッシュペーパーやコットン、ハンカチに2~3適たらして枕もとに置いてみてください。リラックスができて眠りにつきやすいことがわかっています」
秋の到来で涼しくなっても、気温差の影響や夏の疲れを引きずっていることを意識して、体調管理を心がけようということです。生活習慣を見直す機会と考えて体調を整え、快適な秋を過ごしたいものです。
(構成・取材・文 藤原 椋/ ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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