日々の体調や仕事のパフォーマンスに大きく影響する「睡眠」ですが、睡眠に対する誤解や思い込みは意外に多いものです。そこで、よい睡眠を体感するためのヒントを睡眠行動科学研究の第一人者で、『1時間多く眠る! 睡眠負債解消法 日中の眠気は身体のSOS、能力を半減させている!』(さくら舎)の著者の岡島義(おかじま・いさ)さんに伺いました。第1回は、睡眠の基礎知識についてです。
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【質問1】睡眠不足は自覚しにくいって本当? 寝不足をキャッチするポイントを教えてください。
A:睡眠不足を自覚していない人は結構います。ポイントは「寝溜めの有無」と「眠くなる時間帯」です。
「寝不足かどうかくらい自分でわかる」と思う人もいるかもしれませんが、実は慢性的な睡眠不足は意外に気づきません。なぜなら、睡眠が足りていない状態が「普通」になっているから。
しかし、その影響は至るところに現れています。メールの宛名や文面の誤字・脱字などのケアレスミスが増えたり、本や資料を読んでも内容が頭に入らなかったり、やる気が出なかったり。これらは寝不足の典型的な症状ですが、性格や年齢のせいにしている人は少なくありません。
また、自分では変わらないつもりでも周囲の人たちにはパフォーマンスが落ちたと思われていたり、自覚はないのに「居眠りしていたでしょう」と指摘されたり。睡眠障害に陥る前に、次の2つのポイントで睡眠不足をチェックしましょう。
1)休日に「寝溜め」ができる。
2)午前中や夕方に眠気に襲われる。
「平日は睡眠時間がとれないけど、その分休日に寝ているから大丈夫」という人は要注意。基本的に「寝溜め」はできません。休日に長く眠れること自体が睡眠不足の証拠であり、睡眠不足が解消されれば、「寝溜め」はできなくなります。
またランチ後など、お昼頃の眠気は誰にでもあることですが、朝食を食べることで脳と体が目覚めるはずの午前中や、体温が上がって脳が活性するはずの夕方に眠気に襲われる場合は睡眠不足です。
【質問2】どれくらい寝れば、十分な睡眠がとれているといえますか?
A:適切な睡眠時間には個人差がありますが、時間だけに左右されないようにしましょう。
一般的に7〜8時間が平均的な睡眠時間といわれ、7時間を境にそれより短い人は免疫の低下を招くともいわれています。
ただし、これはあくまで平均値であり、適切な睡眠時間は人によって異なります。短くても長くてもよくありませんが、時間だけでなく「睡眠の質」に目を向けることも大切。
質とは、日中に支障の出ない睡眠がとれているかどうかということです。睡眠時間が6時間でも日中に集中力が落ちなければ、その人にとっての適切な睡眠時間は6時間だし、9時間は寝ないと頭が働かないという人は、9時間が十分な睡眠時間といえます。
適切な睡眠時間は目安程度に考えましょう。時間ばかりに気をとられると「早く寝ないと睡眠時間が6時間とれない!」とプレッシャーを感じてしまい、逆に脳が興奮して眠れなくなるケースもあります。日中のパフォーマンスを基準に、睡眠時間や質を判断してください。
【質問3】平日の睡眠不足は、休日の「寝溜め」で回収できますか?
A:「寝溜め」や「睡眠貯金」はできません。すればするほど、睡眠リズムが崩れていきます。
平日の睡眠不足を休日にたくさん寝ることで解消している人がいますが、これはあくまで解消であり、長く寝たからといって睡眠が貯められるわけではありません。逆に寝溜めをすることで睡眠リズムが崩れてしまい,平日も十分なパフォーマンスが発揮できないことが分かっています。
休日にたくさん寝ることで体力が戻ると感じる人もいるかもしれませんが、それは一時的なもの。そういった生活を続けていると、いずれ休日にどんなに睡眠をとっても体のだるさがとれなくなります。月曜日になると「会社に行きたくない」とうつに似た症状が現れ、ソーシャル・ジェットラグ(時差ボケのような症状)を引き起こします。
平日と休日の睡眠時間に差があればあるほど、睡眠リズムは乱れていきます。睡眠負債を解消し、日中に本領を発揮するためには、平日と休日の睡眠時間をなるべく平均化し、毎日必要な睡眠をとることが重要です(理想は2時間以内)。
【質問4】質の良い睡眠が実現すると、人はどう変わりますか?
A:本気が出せ、パフォーマンス力がアップします。免疫力があがったり、前向きになったり、心身にとっていいことしかありません。
睡眠の質をあげる方法は生活環境や習慣によって異なるため、一概に「こうすれば、質のよい睡眠につながる」とはいえませんが、睡眠の質が良くなったときに起こる変化は共通しています。それは「限界値が変わる」ということ。
寝不足の人は常に、体がだるい、頭の回転が鈍い、集中力が持続しない、やる気が出ないなどの症状を抱えており、十分に力を発揮できない状態にあります。
睡眠の質をあげることで潜在能力が発揮できるようになり、間違いなくパフォーマンス力はアップします。また、前向きになり、マイナスな出来事が起こっても切り替えが早くなるなど、不安ケアにもつながります。
第2回は12月26日(土)公開予定。現在の自分の睡眠状況を把握する方法について回答していただきます。
(構成:塚本佳子、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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