婚活サイト「キャリ婚」を主宰する川崎貴子さんが「令和の共働き婚」をテーマに、それぞれの分野で活躍するプロと対談する連載。第4回のゲストは、ちょうど1年前に株式会社ほぼ日のCFOを50歳で退任し、現在は“ジョブレス”な日々を送っている篠田真貴子(しのだ・まきこ)さんです。全3回。
自分の手を動かさなくてすむように家電に投資する
川崎貴子さん(以下、川崎):共働き婚の女性の間で、必ずと言っていいほど話題になるのは妻と夫の家事分担です。
ご夫婦が2人ともハイキャリアで多忙な日々のなか、経営コンサルティングのご経験も豊富な篠田さんが、どう譲り合って家庭を運営してきたのだろうかと興味がありました。家事はどう回されていましたか?
篠田真貴子さん(以下、篠田):いま高校1年生、小学6年生になる子供がいるのですが、2人目が生まれてからは、子供の面倒を見ながら家事もやってくださるお手伝いさんに毎週1回来てもらって、お掃除を中心にやっていただきました。だから掃除は週1回ですよ。
あとは「資本投資」です。ガス乾燥機を購入してお天気や時間帯にかかわらずお洗濯ができるようにして、引っ越しをするときはそれが設置できることを念頭に置いて物件を考えました。もちろん食洗機も導入して、ルンバも買って。自分がなるべく手を動かさなくてすむようにしました。
川崎:子供が小学校に上がったあとのほうが大変ではなかったですか? 私も最初はベビーシッターさんをお願いしましたが、そのあと保育園、小学校と進んでいくにつれて、どんどん大変になっていった。
篠田:大変でした! 保育園は夜8時まで預かっていただけたので、晩ご飯も保育園で食べて帰ってくるんですけど、上の子が小学校1年生になった年は、何をどうやって乗りきったのか記憶がないです(笑)。毎日お弁当を作らなければいけないし、夕方6時には学童(保育)から帰ってくるので、小学生になってからのほうが「早く帰らなきゃ」「ご飯を作らなきゃ」という暮らしになりましたね。
下の子が小学校に上がったくらいから、「みんな、自分の洗濯物は自分で畳みましょう」というシステムにしました。家族が好きなテレビ番組を録画しておいて、それを見ながら夫と子供たちが洗濯物を畳んでいる間、私が晩ご飯を作るというのが週末の夕方の「行事」になっています。
それ、本当に必要?「やらない家事」を決めておく
——(ウートピ編集部)妻が「食洗機が欲しい」と言うと、夫が「手で洗えるのに必要ない」と反対してもめる話をよく聞きます。“夫ブロック”のような……。
川崎:だったら通常の家事プラスオンでキミが洗えよなっていう(笑)。
篠田:それも「慣れ」ですよね。私は「食洗機を使わないなんて、あり得ないから」という感じで使っていました。思えば、結婚してすぐ夫婦でアメリカに留学した影響があるかもしれない。食洗機のある暮らしがデフォルトだったので、夫はそこでなじんでいたのかも。
川崎:それは夫に経験してほしいですよね。アメリカなんて食洗機は当たり前だし、ワンルームマンションにあらかじめ付いてたりすると聞いてます。結婚前の視察ツアーでも組みますか(笑)。
篠田:家事はすべて「死なない程度」でいいと思います。私は「お友達を家に呼ぶなんて、100年先まで無理」と思っていました(笑)。
川崎:私は料理が好きで、今の夫は掃除と洗濯が好きなんですよ。干し方とかいろいろこだわりがあるので、私は手を出しません。
篠田:お互い好きなこと、得意なことをやって成立するなら、それが一番いいですね。
川崎:あと、「やらない家事」をちゃんと決めておくことも大事かと。「自分の親がやっていたから」という理由でやっている家事も多いと思うんですよ。例えば料理でも、「買い物」という準備だけで1時間くらいかかる。「もうAmazonで買えばいいじゃん」というものもあるし、ホットクック(シャープが販売している、食材と調味料を入れるだけで自動調理できる鍋)とか便利な家電を使えばいい。家事のリストラを早急に進めないと!
篠田:ホットクック、いいですよね! 例えば、カレーの材料を入れてボタンを押せば、勝手に加熱して止まるので、その間に出掛けたりお風呂に入ってもいいの。
川崎:最新家電もいろいろあるし、昔からある普通のオーブンやレンジも意外と使いこなせていないので、使い方を見直して手間のかからないメニューを日々研究しています。
篠田:私も、家電を使ってなるべく自分が動かなくていいようにしていますね。
「料理は愛情」の不思議
——(ウートピ編集部)読者には専業主婦の母親を見て育った人も多いので、「手抜きはダメ」という固定観念や、「自分ができることをわざわざ他人や家電に任せるのは贅沢(ぜいたく)なのでは?」という「罪悪感」があるという声も聞きます。
川崎:購入時は高いけれど、減価償却的に考えたらありですよ。罪悪感も分からなくはないけれど、義務感にかられて料理をして「わざわざ作ったのに」というオーラを出す母親が家にいるのと、コンビニで買ってきた春巻きを食卓に出してもにこやかな母親がいるのと、家族にとってどちらがいいのか? 私や夫がゆとりのある心持ちで子供たちに接することは代わりにやってもらえないけど、人やモノにお任せできることは、多少お金を出してもお願いしたほうがいい。
昭和11年生まれの母が、私が家電を使うたびに怒るんですよ。「電気代がもったいない」とか、乾燥機の使うと「太陽の恵みを無視してる」とか。「お母さん待って、いま令和だよ?」って(笑)。
ハッピーに家事をするために自分で電気代も払ってるわけですから、古い価値観からバージョンアップしたほうが現在を楽に生きられる。時代によって「何が美徳か?」は変わるので、どんどん自分たちの時代の常識を先取りしていいと思います。
篠田:犠牲を払うことでしか自分を認められないのは、もったいないですよね。自分に対しても、他者に対しても同じで、「実りのない頑張りを続けている私を認めて」という考え方のワナに陥ると、誰も幸せにならない。
川崎:特に日本では、自己犠牲の上に家族を支えるのが愛であり、存在意義という考え方が根強くありますよね。
篠田:「料理は愛情」っていう言葉に物申したいんです。ほかの家事には「愛情」なんて言わないですよね。「掃除は愛情」とか。私も料理は好きだし、家族が「おいしい」と言って食べてくれるのはうれしいですが、なぜ料理だけ? 好きでやるのはいいけど、義務感から必死でお弁当を作るとか、ちょっとゆがんでいるなと感じることはあります。
特に料理はそうだけど、全体的に「家事をする」ことが妻や主婦の「人格」に近いものと見なされているから、やらないと罪悪感を感じてしまうんだと思います。家事は「作業」にすぎません。人格とは関係ない。それを自分にも言い聞かせ、家族にも分かってもらう。そのためには、心に余裕を持つことが大切。「私ばかりやっている!」と思ったら、お友達と会って息抜きをするとか、まずは心を整えてほしいなと思います。
※第2回は11月25日(水)公開です。
(構成:新田理恵)
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情報元リンク: ウートピ
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