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夫の腎臓をもらった私の自粛生活【もろずみはるか】

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先の見えない大変な日々が続いています。会社にも行かず、友だちにも会えず、うちの中にいると、つい”ひとり”になってしまった気がして、寂しい気持ちになることも。そこで、ウートピは「1往復エッセイ」を始めます。気になるあの人へ「最近、どうですか?」とたずね、「こちらはこんな感じです」と回答する。そんなささやかな現状報告と、優しくて力強いメッセージをお届けします。

今回は、夫婦間腎臓移植の連載の著者でライターのもろずみはるかさんから、同じくライターの波多野友子さんにこんな質問が届きました。

【もろずみさんへ】

こんにちは。私は、自粛生活において、大病を患った親との同居生活に少し疲れが出てきました。本人も体調が悪くイライラをぶつけられることも多いなかで、どんなコミュニケーションが大事だと思いますか?

私も「病を患う家族」でした

大病を患った親と暮らすのは大変ことだと思います。体調が悪いと口数が減ったり攻撃的になったりしますし、申し訳ないと思いつつ家庭の空気を悪くしてしまうこともあります。

……と、わかったようなこと言っちゃいましたけど、わが家において「病を患う家族」は、他の誰でもない私でした。

ちょっと暗い話をします。

12年前、夫にプロポーズしたときにはもう、私は治る見込みのない腎臓病を抱えていました。うちは子なしで夫と2人暮らしなので、私のあらゆる「負」を夫一人にぶつけてしまいました。

末期腎不全を患っていた時の私の口グセは「疲れた」でした。情緒不安定になると、平日の深夜にも関わらず夫の前でわんわん泣きました。調子が悪いと人に会うのが億劫になり、誰にも会わないので、身なりもだらしなくなりました。部屋は散らかし放題。料理も家事も気が向いたときしかやりませんでした。私ならそんな人ご免だし、病人だろうがなんだろうが、三行半を突きつけていたと思います。

私は、病を抱える人よりそばで見守る人の方が、ずっとずっと大変なんじゃないかと思っています。

わんわん泣いた後に切り替えられるようになったのは…

そんな中、夫がとってくれたコミュニケーションでありがたいなと思うのは、常にカラッとしていてくれたことです。

深刻なことを深刻に受け止めない。適度に流してくれるので、私もわんわん泣いた後に、「さ、風呂でも入るか」みたいな切り替えができていたんですよね。

たとえば、夫婦の会話はこんな感じでした。

私「生きているのがツライ」
夫「はるかさんは、ツライんだね」

私「人生に疲れた」
夫「はるかさんは、疲れてるんだね」

相槌は打つけど、必要以上に感情移入しないのがポイント。つかず離れずの心の距離を保つのが、夫のコミュニケーションでした。

一緒に暮らしていると、お互いに逃げ場がありませんから、家庭内の空気がカラッと健全であることはめちゃくちゃ重要でした。

暗がりに老婆。祖母に抱いた嫌悪感

ずいぶん昔の話になります。

私も一度だけ病を抱える人を見守る側になった経験があります。高校生のときでした。「認知症を患う母(私にとっての祖母)を引き取りたい」と母に相談された私と父は、「よし、こんなときこそ家族一丸となろう!」と、よろこんで祖母を招き入れたのですが、いざ同居生活が始まると想像以上に大変で……。

一日に何度も同じことを聞いてくる祖母。家の中で迷子になり、深夜、私の部屋に迷い込んだこともありました。暗がりに老婆。お化けが出たのかと思いましたよ!(笑)

私は祖母に嫌悪感を抱くようになりました。

「おばあちゃん、それさっきも言ったじゃん」
イライラして祖母をにらみつけたことがありました。そのときの祖母の悲しげな顔と、それから5分も経たないうちに、また同じ質問をしてくる祖母の呆けた顔をみて、ゾッとしたんです。この状況、まずいな。逃げ場がない。うまいこと息抜きしないと、持たないぞと。

以来、私は、つかず離れずの心の距離を保つ工夫をするようになりました。祖母が同じ質問を繰り返すときは、感情をオフにして淡々と対応。私の心に余裕があるときは祖母の部屋に遊びに行き、二人でせんべいでも食べながら祖母の昔話に耳を傾けました。

祖母はよく女学校時代の話をしてくれました。認知症を患っていても昔のことはよく覚えているものなのですね。大正生まれの祖母はピュアでいじらしく、幼なじみと青春を謳歌した話はドラマみたいで胸キュンです。

戦時中の話もよくしてくれました。山口県で医師をしていた祖父に嫁いだ話。広島に原爆が投下された際は、医師不足のため隣の県までヘルプに駆けつけたエピソードなども。

戦時を生き抜いた人の話は、すごいなって、手放しに尊敬できます。

くどいようですが、一緒に暮らす以上、逃げ場がありませんから、家族を尊敬する気持ちと純粋に好きという気持ちを忘れないことが、私なりのコミュニケーションでした。

追い込まれたときの提案

追い込まれたときは、祖母とそうしたように、輝いていた時代にタイムスリップするのがおすすめです。

これは、つい先日つぶやいたツイッターです。

”人生迷走気味でこんな時間まで夫婦会議。1時間ほど夫に話を聞いてもらい、30分ほど夫なりのフィードバックをもらい、最後に夫が学生時代に書いたという『企業メセナを通した「共生」』という論文を夫の前で朗読するという謎行動を経て、ようやく心落ち着かせた妙な夜です”

なんのこっちゃ、ですよね(笑)。

状況を説明すると、先天性の基礎疾患を持つ私は、新型コロナウイルスに感染したら重症化する可能性があるので、とにかくコロナが怖いのです。「命は助かっても、夫からもらった腎臓をダメにしてしまうのではないか」とか考えはじめると、徒歩3分の場所にあるスーパーマーケットに行くのもムリ。で、ある晩不安が爆発して、夫婦会議を開いてもらったんです。

そこでふいに始まった、夫の論文を朗読タイム。これが「タイムスリップ」になりました。日記を読んでいる感覚に似ていて、20年前の夫に会いに行った気分になったのです。若いだけあって考え方が尖ってるなあ、とか思いを馳せていると、読み終わるころには不安な気持ちを手放すことができました。

今、誰もがコロナから逃げられない状況に追い込まれていて、家から出ることすらできないなんて、息が詰まります。だからなるべく自分と家族を上機嫌にして、家庭の空気を健全に保つように心がけています。それが、私なりのコミュニケーションかなと思っています。

*もろずみさん、波多野さんありがとうございました。次回のペアもお楽しみに!
(企画・編集:安次富陽子)

情報元リンク: ウートピ
夫の腎臓をもらった私の自粛生活【もろずみはるか】

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