過酷と言いたい日本の夏の猛暑の攻撃、毎日、朝から頭がクラクラします。いつもは食欲もりもりなのに何も食べる気がしない、全身がけだるくてやる気が出ない、頭が重い、胃が痛い、おなかをこわしがち……そんな「夏バテ」の症状がつらい人は多いと思われます。
漢方専門医・臨床内科専門医・消化器内視鏡専門医で、西洋医学と東洋医学の両面から治療を行う吉田裕彦医師によると、「西洋医学では夏バテは自律神経失調症と考え、東洋医学では『暑邪(しょじゃ)』による症状とらえます。東洋医学では根本となる原因を見つめて食事を工夫し、つらさが強い場合は体質を改善するために漢方薬を試します」ということです。そこで、自分でできる夏バテの対処法を教えてもらいましょう。
猛暑で自律神経に負荷がかかりすぎて不調に
はじめに吉田医師は、夏バテが起こる理由について、こう説明をします。
「体調は気温や湿度に大きく影響を受けます。日ごろは無意識のうちに、自律神経の2つの交感神経と副交感神経がバランスを取り合って、ヒトの体温、発汗、心拍、血圧、消化機能などを調整しています。しかし猛暑や極寒となると、それに対応するために自律神経が過剰に働かねばならないため、負荷が強くかかってバランスを乱し、体の機能を調整しづらくなります。
暑いときには発汗を促して体温を下げるわけですが、体内の水分が不足すると、それがうまくできなくなります。すると胃腸での消化の機能もダウンし、ほかの不調をまねきます」
暑邪は湿邪と結びつき、両方の不調をまねく
次に吉田医師は、「暑邪」の考え方について、次のように説明を続けます。
「『暑邪』は読んで字のごとく、暑さが邪気となってヒトの体に不調をもたらすことを言います。風邪は漢方ではかぜと表現せずに、『風』の『邪気』として『ふうじゃ』と読みますが、暑邪も風邪と同様に、心身に不調をもたらすものだとイメージしてください。
日本の夏の場合、気温だけではなく湿度が高いことが特徴です。梅雨のころから大気に湿度がぐんぐん上昇してきます。その不調を『湿邪』と呼び、以前にお話ししました。夏本番に襲いかかってくる『暑邪』は、梅雨の時期から発生する『湿邪』と結びつきやすい特徴があり、これを『暑湿(しょしつ)』とも呼びます。日本で暮らす人の夏バテは、暑さと湿気が合わさった『暑湿』の不調と考えてください」
夏バテは気力が不足してだるい状態
夏バテは、暑さと湿気がもたらす不調ということですが、続いて吉田医師は、夏バテ=暑邪・暑湿に見舞われると、
「東洋医学では、全身をめぐるエネルギーを『気』と呼びますが、これが不足、衰退します。元気が足りないため、けんたい感やだるさを覚えます。また、『水(すい)』と呼ぶ体内の水分が大量に消費されるので、体に力が入らず、熱が体内にこもって胃腸などにダメージを与え、重症の場合は熱中症になります」と指摘し、具体的に次の症状を挙げます。
・体が重くてだるい、けんたい感
・意欲が出ない。無気力になる
・大量に汗が出る、もしくは出ない
・動悸(どうき)がする
・血圧の変動が大きい
・のぼせやすい。体が熱っぽい
・頭が重い、痛い
・めまい、立ちくらみ
・のどや口の中が渇く
・顔が赤くなる
・肩がこる
・食欲がない
・胃が重い、痛い
・おなかが痛い、下痢をしやすい
・足や顔がむくむ
・足がつる
・湿疹など皮膚トラブルが出る
・イライラする
夏野菜・夏のカンキツ系フルーツ、薬味に注目
では、つらい夏バテを改善するには、どうすればいいのでしょうか。吉田医師は、「気力回復のもとでもある胃腸の機能を意識しましょう。夏は冷たいものを好みがちで、一年でもっとも食生活が乱れやすくなります。まずは食事の内容を見直してください」とアドバイスをし、次の食材を勧めます。
・体の熱をとる旬の野菜
オクラ、ゴーヤ、トマト、キュウリ、ナス、トウガン、ピーマンなど……水分が豊富で、熱中症をまねく脱水を防ぎます。
・滋養強壮になるナガイモ
旬の野菜ではありませんが、一年中手に入るナガイモは滋養強壮野菜として知られます。ごはんやソバにとろろとして、また短冊切りでサラダにプラスする、オクラとの和え物などは手軽に調理できて食べやすいでしょう。
・旬のカンキツ類フルーツ
パイナップル、グレープフルーツ、夏ミカン、オレンジ、キウイなど……水分補給と、食欲がないときに食べやすいメリットがあります。朝食やランチ時にプラスすると、水分が補われて元気がアップするでしょう。カンキツ類が苦手な人は、スイカ、モモ、マンゴー、ウメなども良いでしょう。
・疲労回復が期待できるタンパク質
鶏の胸肉、マグロ、豚肉、レバー、枝豆、納豆など大豆製品には、疲労回復やエネルギー代謝に作用するビタミンB群が豊富です。とくに鶏の胸肉に含まれるイミダペプチドという成分は、疲労回復に効果があるという研究報告があります。
・辛めの薬味
ニンニク、ショウガ、トウガラシ、ニラ、ネギ、大葉などの香草を料理に活用しましょう。冷たいものばかりを食べがちですが、これらは体を温めて消化を促します。冷ややっこには刻んだ少量のショウガやネギ、大葉をトッピングするなど、工夫しましょう。
「食材に気を配りながら、できるだけ毎日同じ時間帯に3食を食べましょう。食欲がないからといって朝食をコーヒーだけにするというのは最悪です。水分不足で熱中症になりかねません。また、コーヒーや緑茶、お酒には利用作用があるので、水分補給にはなりません。トマトサラダとグレープフルーツ半分、枝豆とスポーツドリンクなど、食べやすくて水分補給になる食材を選びましょう」
夏バテの実態である暑邪と湿邪、また複数の症状の根本は気力の不足と胃腸の機能の低下にあること、回復のためにはまずは食事を見直し、暑邪に対抗する食材を選んで食べようということです。この夏はぜひ、試みたいことです。次回は、「暑邪」のセルフチェック法と漢方薬についてご紹介します。
(構成・文 品川 緑/ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
夏バテの実態と不調の根本原因とは…漢方専門医が教える