「健康診断で糖尿病予備群だと言われてがく然としています。いったいどうすれば…」という読者(34歳・女性)の声にお答えしたところ、「実は私も…」といった糖尿病に関する多くの悩みが寄せられています。
そこで、糖尿病専門医・臨床内科専門医で、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書がある福田正博医師に、糖尿病の実態や自分でできるケアについて連載でお話を聞いています。今回・第10回は、よく耳にする「基礎代謝の変化」についてお尋ねします。
基礎代謝は年々下がって太りやすくなる
先ほど紹介した読者の女性は、「30歳を過ぎたあたりから体重がどんどん増加して、おなかやふともものだぶつきがすごい。食事を減らして運動をがんばっても体重がなかなか減らない」と訴えます。
福田医師は、「年齢とともに基礎代謝が下がります。 20代と同じようにカロリー制限や激しい運動をしても、30代以降になるとかつてのように体重が減ったり、筋肉が引き締まったりすることは難しくなります。もう昔のようにはいかないと自覚しましょう」と話し、基礎代謝について次のように説明します。
「基礎代謝とは、生命活動を維持するために必要最低限のエネルギーの量のことです。何もしないでじっとしていても呼吸や内臓、消化などの活動でエネルギーは消費されています。食べる量や運動量はいつもと同じでも、基礎代謝が下がると体に脂肪が蓄積されていきます。
成人の女性は1日で約1200キロカロリー、男性は約1500キロカロリーですが、自分の基礎代謝は次の国立健康・栄養研究所のウエブサイトで確認することができます。性別・年齢・身長・体重を入力すると瞬時に表示されるので、チェックしてみてください」
基礎代謝が下がる要因とは
次に、「加齢以外にも基礎代謝が下がる要因はある」という福田医師に、具体的に挙げてもらいました。
・筋肉の量が減少……加齢のほかに、運動不足が大きな要因になります。筋肉は、運動の量によって増えやすく、また減りやすいという特徴があります。数日、運動をしなかっただけですぐに脚力が衰えたと思うこともあるでしょう。
そのため、これまでにも勧めてきた、適量のウォーキングや軽い筋トレを継続することが筋肉量キープのコツになります。医療では、内臓や骨の手術後でも歩ける限りすぐに歩くように指導されます。治療の一環です。
ただし、毎日激しい運動をしたり、同じ部位ばかりトレーニングをしたりするとダメージが大きいことがわかっています。1~3日おきに全身まんべんなくトレーニングする方が効率的です。
・朝食を抜く、無理なダイエット……以前にもお話ししたように、朝食を抜くとカロリー減になると考える人は多いのですが、実は逆効果です。また、無理なダイエットは栄養が偏ること、ストレスがつのることなどで活力が低下して基礎代謝も下がります。
1日3食、栄養のバランスがとれた食事を食べ過ぎないようにして、第6回で紹介した「3カ月で体重を3%ダウンするゆるダイエット」を実践すると無理なく効率的な減量ができるでしょう。
・睡眠不足や不規則な生活リズム……睡眠不足は脳と体の活力を奪い、基礎代謝を低下させます。また、糖尿病だけでなく、すべての病気をまねく要因になります。1日7~8時間の充実した睡眠タイムをキープしましょう。
・ストレスが多い……ストレスがあるとホルモンや自律神経のバランスが崩れ、基礎代謝を低下させます。できるだけストレスを避ける、軽減するようにしましょう。
基礎代謝はアップすることができる
では、基礎代謝を上げて太りにくい体になるためには、それらのことを避けて、これまでに紹介した『3カ月で体重3%ダウンダイエット』(第6回)、『腹やせウォーキング』(第7回)、『ゆるかるスクワット』(第8回)、『家事・生活動作ながらトレ』(第9回)を日々実践すればいいということですね。
「そうです。基礎代謝が上がると消費カロリーが増えるので、太りにくい体になります。自分の基礎代謝量を認識したうえで、食事、睡眠、運動、ストレスを見直して実践しましょう。
全身の活力がアップして生活習慣が整えば、糖尿病や肥満、脂質異常症といった生活習慣病の予防に直結し、見た目のシェイプアップにもつながります。これまでの回を読んでもらえれば、それぞれの方法は、誰もがすぐに取り掛かれることだと気づくでしょう。
実際に多くの医学的調査で、例えば3カ月で体重3%ダウンダイエットの場合、半年後には平均して血糖値、血圧、LDL(悪玉)コレステロールとも改善することが知られています。糖尿病予備群と言われた人も健康な状態に戻る例はいくつもあります」(福田医師)
継続するための方法として福田医師は、こうアドバイスを加えます。
「今日は何をしたかということや体重、体脂肪率をスマホのカレンダーや手帳にさっと記録しておきましょう。基礎代謝アップや減量への意識がアップして、食べすぎや飲みすぎを防ぎ、生活習慣の課題も見えてきます」
聞き手によるまとめ
ついこないだまで食べ過ぎて太っても、数日で元の体重に戻っていた…という記憶はもう過去のことであり、「これからは、加齢や筋肉量の減少、生活習慣、ストレスによって基礎代謝は下がり続けるばかりだ」と認識するべきでしょう。年齢ごとの基礎代謝に見合った食事、睡眠、運動を続けて糖尿病など生活習慣病を予防したいものです。
次回・第11回は、糖尿病の何かどう恐いのかついて紹介します。
■これまでの連載を読む
【第1回】私がまさかの糖尿病? 血液検査のどこを見ればいい?
【第2回】肥満とメタボの計算式で体型を確認! 脱・糖尿病予備群のためにできること
【第3回】3年以内に糖尿病になる…? リスクをセルフチェックする方法
【第4回】おなかのぜい肉は内臓脂肪? 皮下脂肪? 体に悪いのはどっち?
【第5回】脂肪が気になる体型はリンゴ型?洋ナシ型? メタボの診断基準は?
【第6回】3カ月で体重3%ダウンを目標に…内臓脂肪の減らし方
【第7回】内臓脂肪を減らしたい! 腹やせウォーキング法
【第8回】「かるゆるスクワット」で内臓脂肪を減らし、腹やせを実現!
【第9回】内臓脂肪も減らせる! 家事・生活動作の「ながら筋トレ」の消費カロリーは?
(構成・取材・文 藤井 空 / ユンブル)
- 内臓脂肪を減らしたい! 腹やせウォーキング法【糖尿病専門医に聞く】
- ウォーキングはいつする? 脂肪が燃焼しやすい時間帯【糖尿病専門医が教える】
- 3年以内に糖尿病になる…? リスクをセルフチェックする方法【専門医が教える】
- 基礎代謝が下がるいくつもの理由…上げるにはどうする?【糖尿病専門医に聞く】
- お菓子は1日にどれぐらい食べていいの? 糖尿病専門医が教える「手ばかり法」とは
- 夜遅ごはんの太りにくい食べ方は? 糖尿病専門医が教える12のポイント【後編】
情報元リンク: ウートピ
基礎代謝が下がるいくつもの理由…上げるにはどうする?【糖尿病専門医に聞く】