「まさかの糖尿病予備群…健診で診断されたら」と題し、読者のお悩みに答える連載をしています。これまで、体脂肪のうち体に悪いのはおなかに溜まる内臓脂肪であること、皮下脂肪との見分け方、また内臓脂肪を減らす食事などを紹介しました。
今回の第7回は、内臓脂肪を減らすための適切な運動法について、ひき続き、『糖尿病は自分で治す!』(集英社)など多くの著書で「糖尿病は『腹やせ』で治そう」と提唱する糖尿病専門医・臨床内科専門医の福田正博医師にお尋ねします。なお、これまでの回は本文の下のタイトル一覧のリンク先をご覧ください。
Contents
100kcalの消費には速足で23分歩く
前回は内臓脂肪を減らす健康ダイエットの方法として、現在の体重より3%ダウンを3カ月で実践する「ゆるダイエット」と、その実現ための食事のコツについて教えてもらいました。
今回、ゆるダイエットを実現するためのもうひとつの方法について、福田医師は、
「軽めの運動を継続することがポイントです。具体的には、『ウォーキングと、ゆるいスクワットなどの筋トレやヨガ、ストレッチを組み合わせた、ストレス改善になる運動』が適切と言えます」と話し、まず、ウォーキングの具体的方法について、説明を続けます。
「適切な運動としてウォーキングはいま、糖尿病だけではなく、肥満、高血圧、脂質異常症、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞などの生活習慣病やうつ病の予防法として、また免疫力のアップ法として、さらにアンチエイジングなど美容面でも各医学会から推奨されています」
次に福田医師は、「腹やせのために効率が良いウォーキングのスピードと継続時間」についてこう挙げます。
・ぶらぶら散歩…時速4㎞・1分で約65m・1分で約2.7kcalの消費
・速足…時速6㎞・1分で約80m・1分で約4.2 kcalの消費
「すると、約100kcalを消費するのにかかる時間は、ぶらぶら散歩なら37分、速足なら23分となります。この差はけっこう大きく、速足がいかに効率が良いかがわかるでしょう」と福田医師。
毎日30~40分・5000歩~8000歩のウォーキングで100kcal消費を目安に
では、毎日どのぐらいを歩くといいのでしょうか。速足で長距離を歩くのはけっこうハードそうです。
「ウォーキングに慣れていない場合や、体力が続かない場合は、速足でずっと歩く必要はありません。疲れるとやる気も低下するので、ぶらぶら歩きと速足を3分ぐらいずつ交互に、また、速足で疲れてきたらぶらぶら歩きにするなど、楽しめるように調整してください。
速足とは、自分にとって『いつもより少し速いな』と思う程度でOKです。目安は、5分ほど歩くと少し汗ばんでくる感覚や、犬の散歩で犬に引っ張られている感覚ぐらいでしょう。ぶらぶら散歩と速足とで1日30分ほど歩くと、おおよそ100kcalの消費になります、休日はもう少し長めに歩いて40~1時間ぐらい歩くといいでしょう。歩数にすると、5000歩~8000歩が目安になります」
おへそのあたりに力を入れて歩く「腹やせウォーキング」
ここで、福田医師が提唱する「腹やせウォーキング」について、こうアドバイスをします。
「ウォーキングでさらにカロリー消費の効率をアップするには、『おなかに軽く力を入れて歩く』ことです。おへその少し下、丹田(たんでん)というツボのあたりに力を入れて、ふっと口から小さく息を吐いてみてください。次に鼻からすっと息を吸っておなかをもとに戻しましょう。
それを2・3回ずつほど、ふっふっふっ、すっすっすっとリズミカルに行いながら歩きます。疲れてきたら、おなかの力をゆるめます。おなかに手をあてるとやりやすいでしょう。
いわば、ウォーキングをしながら、かなりゆるい腹筋運動を同時に行うエクササイズです。ただし、歩いている間ずっとこれをするとハードなので、自分がやりやすいと思う数分の実践でOKです」
たしかに、おなかに力を入れるだけで運動量が高まるように感じます。福田医師は別の効用も紹介します。
「おなかに力を入れると、背中が伸びて姿勢が良くなるのがわかるはずです。背筋が伸びると胸の筋肉が開くので、呼吸の量が増えます。すると有酸素運動の効率が高まります。それに、背中や腰の筋肉に無理がない力が働いて相乗効果で内臓脂肪が燃焼しやすくなり、また便秘の改善にも有用でしょう。自然に腹やせウォーキングができているわけです」
この腹やせ法は、デスクワーク中でもできますね。
「そうです。ふっと息を吐きながらおなかに力を入れる、すっと鼻から息を吸っておなかをもとに戻すというくり返しは、デスクワーク中はとても実践しやすいですね。いますぐ試みてください。背筋が伸びるので、パソコンやスマホ操作で猫背になることや、肩こり、腰痛も防ぎます」と福田医師。
食事編と合わせて1カ月でおなか周りは1.0~1.5センチダウン
1日30分程度で時おりおなかに力を入れてのウォーキングなら、できそうな気がします。それぐらいのゆるさで大丈夫でしょうか。
「大人の場合、これぐらいが継続しやすい『軽めの適度な運動』と言えます。これに、次回紹介する筋トレなどを組み合わせて筋肉の引き締めや代謝アップをはかります。
ウォーキングを『わざわざ運動をする』という意識ではなく、入浴や歯磨きと同じように、日常生活で必須の習慣として取り入れることができるとベストでしょう。通勤時間や昼の休憩時間を利用して、ひと駅分は電車に乗らずに歩く、駅やオフィスでは階段を使うといったちょっとした『ウォーキング慣れ』を続けることがコツになります」と福田医師。
1日100kcalの消費で腹やせや3%減量はかなうのでしょうか。それについても福田医師はこう答えます。
「前回に紹介した、『毎食、ごはんをひと口減らす』ということと組み合わせると、毎日250~300kcalのカロリーダウンになり、1カ月では1.0~1.5㎏の減量になります。この場合、おなか周りのサイズは、1.0~1.5センチダウンします。
3カ月で体重の3%ダウンダイエットは、途中で2・3日の中だるみがあっても、続けて3カ月実践すれば十分に可能です」
聞き手によるまとめ
「腹やせウォーキング」とは、毎日30~40分、休日にはもう少しの時間を加え、速足で、おなかにリズミカルに力を入れながら歩く方法だということです。毎食ごはんをひと口大減らすだけの食事法と合わせて1カ月でおなかまわりが1.0~1.5センチダウンとなると、目標の3カ月の継続へのモチベーションもアップしそうです。これは実践あるのみです。
次回・第8回は、内臓脂肪の減らしかた・ゆる筋トレ編を紹介します。
■これまでの連載を読む
【第1回】私がまさかの糖尿病? 血液検査のどこを見ればいい?
【第2回】肥満とメタボの計算式で体型を確認! 脱・糖尿病予備群のためにできること
【第3回】3年以内に糖尿病になる…? リスクをセルフチェックする方法
【第4回】おなかのぜい肉は内臓脂肪? 皮下脂肪? 体に悪いのはどっち?
【第5回】脂肪が気になる体型はリンゴ型?洋ナシ型? メタボの診断基準は?
【第6回】3カ月で体重3%ダウンを目標に…内臓脂肪の減らし方
(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)
- ウォーキングはいつする? 脂肪が燃焼しやすい時間帯【糖尿病専門医が教える】
- 3年以内に糖尿病になる…? リスクをセルフチェックする方法【専門医が教える】
- 内臓脂肪を減らしたい! 腹やせウォーキング法【糖尿病専門医に聞く】
- お菓子は1日にどれぐらい食べていいの? 糖尿病専門医が教える「手ばかり法」とは
- 夜遅ごはんの太りにくい食べ方は? 糖尿病専門医が教える12のポイント【後編】
- オトナ女子の冷凍庫の中を覗いてみた 常備品No.1は意外なシーフード
情報元リンク: ウートピ
内臓脂肪を減らしたい! 腹やせウォーキング法【糖尿病専門医に聞く】