前編の、「女性がなりやすいのは『切れ痔』 専門女医に聞きました【前編】」では、痔には大きく分けていぼ痔、切れ痔、痔ろうの3つの種類があり、女性に多いのは切れ痔で出血や痛みが激しいことをお伝えしました。
今回は、女性が痔になりやすい原因やタイミング、また自分でできるケア法について、前回に引き続き、大腸肛門病専門医で指導医でもある、大阪肛門科診療所(大阪市中央区)の佐々木みのり副院長にお話しを聞きました。
痔は20~30代の女性に多い
痔は想像するだけで痛い、恥ずかしい、怖い病気と思いがちですが、佐々木医師によると、
「男性の病気というイメージがあるのは、女性があまり大きな声で言わない、こっそり治したい病気だから、という一面があります。実は女性にとても多く、しかも、20~30代の世代にり患率が高いという調査報告があります」とのことです。
そこで、女性が痔を発症する原因やタイミングと、そのケア法について、「原因を見極めて、その原因にならないような生活習慣を実践することが予防に直結します」と話す佐々木医師に挙げてもらいましょう。
女性に多い便秘、冷え、ダイエット、ホルモンバランスの乱れに注意
次の項目にあてはまる習慣はないかを考えながら、読み進めてみてください。「一つでもあると、痔になる可能性はあると言えます」と佐々木医師。
(1)便秘
便秘によって硬くなった便を出そうとすると、肛門や肛門周辺を傷つけやすくなります。硬くなった便は排便しにくく、長時間いきみ続けることになるので、肛門に負担がかかり、いぼ痔、切れ痔を引き起こす原因となります。
また、私が名づけた「出残り便秘®」にも注目してください。毎日排便しているにもかかわらず、出し切れずに出口付近に残っている便の重みによって肛門がうっ血する場合もあります。つまり、便秘を改善することが痔の予防になります。
(出残り便秘®については、こちらの記事を参考になさってください。毎日排便しても「出残り」があると便秘?【大腸肛門病専門女医が教える】
(2)無理なダイエット
食事の量を減らすと、十分に便がつくられない、便意が起こらないなどで便秘の原因になります。毎日3食、栄養が偏らない食事をとり、食物繊維が豊富に含まれる野菜、キノコ類、海藻類から食べ始めましょう。
(3)冷え
肛門には血液が多量に流れています。体が冷えると血流が滞り、肛門付近がうっ血していぼ痔の原因になります。
とくに下半身は冷えないように、デスクワーク時には座布団やひざかけを利用しましょう。痔かも、と思ったら、洗面器にお湯をはって、おしりだけつける「座浴」をすると血流が促されて改善につながります。
(4)ホルモンバランスの乱れ
月経の約2週間前後や妊娠初期には、女性ホルモンの黄体ホルモンが多く分泌されます。そのホルモンには、体内に水分や塩分を溜め込む働きがあって腸から水分を吸収するため、便が硬くなる、排出しにくくなるなどで便秘をまねきます。
その時期をあらかじめ把握しておき、(2)で伝えた食生活を意識してウォーキングなど軽い運動やヨガ、ストレッチなどを毎日30分ほど実践して便秘を予防しましょう。
(5)デスクワークによる長時間の着座
デスクワークでは冬はもちろん、夏もエアコンで下半身が冷えやすいでしょう。パソコン作業などに集中していると、長時間同じ姿勢で座り続けるため、血流が滞り、肛門がうっ血します。
座布団を利用し、30~40分に1度は立ち上がって歩き、全身の血流を促しましょう。疲労の回復にもつながります。立ち上がれないときは、足の指でグーチョキパーをする、ふくらはぎをもう一方の足のひざでぐりぐり押すなどして、足の血流を促してください。
また、レストランやカフェ、スポーツ観戦、車やバス、飛行機、新幹線での長距離の移動時などでもマイ座布団を持参し、数十分に一度は立ち上がって歩いてください。
なお、痔の予防にと、ドーナツ型の座布団を使用している人は多いようですが、中心の穴の部分に肛門が入り込むとかえってうっ血が進み、痔を悪化させることがあります。肛門の外側にできる血豆のような血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)で腫れている場合に使うのは有用ですが、痛みが強くない場合は使わないほうがいいでしょう。
デスクワークに適した座布団と銘打って多種多様なタイプが市販されていますが、低反発素材で中央がへこんでいないタイプがいいでしょう。
(6)トイレでいきむ
便秘だと排便を促すために力をいれていきむことがあるでしょう。それは肛門の負担が大きくてうっ血するため、痔をまねきます。いきむことは極力避けて、排便時間は3分以内とし、出ないときは切り上げてください。
(7)トイレタイムが長い
(5)の長時間の座位,(6)の排便時間やいきみと共通しますが、トイレに長く座っていると、肛門がうっ血します。洋式ではおしりの部分がへこんでいるため、血液が肛門に集まって、うっ血の度合いは強くなります。
トイレタイムは3・4分以内としてください。スマホや新聞を持ち込むと長く座りがちなので避けましょう。
(8)妊娠・出産
妊娠中は胎児の重みで、肛門に負担がかかってうっ血した状態になります。出産時には、強いいきみによって肛門が腫れやすくなります。また、妊娠中にも黄体ホルモンが多く分泌されるため、便秘になる人はとても多いのです。
妊娠中は痔になりやすいことをあらかじめ知っておき、便秘を改善しながら、おしりが痛くなるなど痔の兆候があれば、早めにかかりつけ医に相談してください。
なお、出産時に肛門が腫れても一時的なものです。2週間もすれば痛みは落ち着き、半年もたてば元通りになることが多いです。あわてて手術を受けずに、肛門科の専門医に相談しましょう。
(9)飲酒
お酒は、種類を問わずに肛門に負担をかけます。肛門をうっ血させるだけでなく、毛細血管を破綻させるために出血しやすくなります。飲んだ翌日におしりが腫れる、トイレで出血することはよくあることです。
また飲酒は体を冷やすために、腰痛や痔の悪化を招きます。これは男性にも同じことが言えますが、女性のほうがお酒に弱いことがわかっているため、挙げておきます。
お酒を飲むときは体を冷やさないようにして、量を加減することは痔の予防につながります。また量の多少にかかわらず、飲酒をしたら3日間は飲まないようにしましょう。アルコールの影響がリセットされます。
(10)辛い物をよく食べる
唐辛子の辛味はカプサイシンという成分によりますが、食べるときの口の中と同じように、排出時に肛門でも痛みや熱を感じます。唐辛子だけではなく、わさびやからしも、体温を上げて、胃や腸の粘膜に刺激を与えるため、過度の摂取は痔をまねき、悪化させることがあります。
辛い物を食べすぎると下痢をすることもあるでしょう。それだけ消化管に刺激が強いことを覚えておき、食べすぎたり、辛い物ばかりを食べたりすることは避けてください。
便秘が痔によくないのは想像ができますが、無理なダイエットや冷え、月経前、長時間のデスクワークやトイレタイムなどは自覚がありませんでした。毎日の生活で注意をして、ぜひとも予防したいものです。
(取材・文 佐藤和子 / ユンブル)
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情報元リンク: ウートピ
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