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他者とのつながりがあるから生きていける。西川美和監督が『すばらしき世界』で描いたもの

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俳優の役所広司さん演じる、人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯・三上が社会のレールに外れながらもなんとかまっとうに生きようと悪戦苦闘する姿を描いた、西川美和監督の最新作『すばらしき世界』が2月11日に公開されました。

原案は佐木隆三さんの小説『身分帳」で、小説が刊行された1990年当時の時代設定を現代に置き換え、人間の愛おしさや切なさ、社会の光と影をあぶりだしています。

前編に引き続き、西川監督に「他者とのつながり」をテーマにお話を伺いました。

『すばらしき世界』サブ4

三上が立ち直れたのは人とのつながりがあったから

——長い刑期を終えて“シャバ”に出た三上は、身元引受人の弁護士夫婦をはじめテレビマンの津乃田、スーパーマーケットの店長・松本、ケースワーカーの井口などさまざまな人と出会い、衝突しながらも絆を深めていきます。血の気が多く、けんかっ早かった三上がふと“仲間”のことを思い出し振り上げようとした拳をこらえるシーンは印象的でした。

というのも、自分には支えてくれる友人や知人、仲間がいるからこそ何とか社会の中で生きていけるというのは自分にも思い当たります。例えば非常に腹が立つことがあったとしても、相手に向かって最低なことを言わないで済むのは「自分ができた人間だから」ではなくて、友人や自分を信じてくれている人たちを裏切りたくないからという理由であることが少なくないのかなって。

西川美和監督(以下、西川):この映画のシナリオを作るにあたり、私が三上と似たような境遇の人を取材する過程でも今おっしゃったことに非常に近いことを皆さん口にされていました。やっぱり、人間がトラブルを起こさずに、法を犯したり他人を傷つけたりせずに済むのには他者との結束が必要なんですよね。「バンド」という言い方をされていました。

——バンド?

西川:結びつきであり、それが命綱のようになっている。やっぱりそういうものが抑止力にもなるんだろうし、人としての一線を踏み越えないためには、お金や仕事があるだけじゃダメなんだそうです。他人とのつながりが大事で、それもたった1人や1つのコミュニティじゃダメ。たくさんではなくても、別々にいくつかのバンドがないと、やっぱりまた道を踏み外してしまう。

『すばらしき世界』サブ6

——そういう意味で三上の周りの人間関係の温かさや人とのつながりが描かれていたのがすごく希望でした。三上だけではなく周りの人たちも三上と出会い、会話を交わし、時にはぶつかり合うことで互いに変わっていく。人と人が出会ってお互いが変わっていくことがとても丁寧に描かれていると思いました。

西川:そう言っていただけて光栄です。ただ、一方で佐木さんが『身分帳』を書かれた時点でも、「周りの人が優しすぎる」という批判もあったらしいのです。でも、それが全くない悲観的な世界を描くことだけが本当のリアリティなのか? と思いますし、世界がどんな境遇になってもこぼれ落ちそうになった人を助ける人が必ずいるのも現実です。

人とのつながりや周りの優しさがあったからこそ三上は少しずつ人間らしい生活を取り戻していけるし、そんな三上を見ているとすごく温かい気持ちになるのではないでしょうか。もちろんシビアな現実も描いていますが、三上が他人とのつながりを支えにして少しずつ立ち直っていく過程の美しい物語をぜひみなさんに見てもらいたいと思っています。

佐木さんの小説でも、人と人とのつながりが時にはポンと外れるときもある。でも、一個外れたとしても他がつながっていれば凧(たこ)のように飛んで行かずに済む。そういうところも含めて、複数のつながりについて書かれたのかなと思いました。

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他者とのつながりを絶やさないこと

——映画が出来上がったのがコロナ禍の真っただなか2020年の6月と伺いました。コロナ禍で世界は瞬く間に変化しました。小説家の方や作り手の方にインタビューすると「コロナ禍の世界を描くこと」について悩まれている方も多いです。西川監督自身はコロナ禍でご自身の仕事に変化はありましたか?

西川:書き手としてはまったくの同感ですね。私はやっと映画ができたばかりなのでしばらくは休もうかなとも思っているのですが(笑)、でも作り手側はかなり悩まれていると思います。特に映画やドラマは人間と人間が関わる話なので。そういう意味では物語の作り手もすごく悩んでいると思うし、自分が考えた価値観が来年に通用するかどうかもわからない。何が危険で何が大丈夫なのか、すごいスピード感で世の中は変わっているし皆さん悩まれていると思います。

ただ、私自身はそんなに変わっていないのかなって。映画を撮っていないときはだいたい一人なので、静かに勉強でもしようかなと思っています。中にはスピード感が求められる現場もあると思いますが、私たちみたいな立場の人間は焦って結論を出そうとせずにゆっくりじっくりものを見ていったらいいんじゃないかなって。わりと悠長に構えていますね。

——そういうお話を伺うとほっとします。時間感覚があるようなないような中で自分も変わっていかなければと焦っている人も少なくないのかなと。

西川:また変わりますしね。だから無理についていこうとしなくてもいいし、少々ずれていてもまたアジャストできるときもくるから、一人一人が他人と足並みをそろえようとしなくてもいいんじゃないかなと思います。

それこそ、こんなときこそきちんと他者とつながりを持っていることがとても大事だから。いろいろなつながりの人とのコンタクトを絶やさないでおくことが大事なんじゃないかなと考えています。

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■映画情報
『すばらしき世界』2021年2月11日(木・祝)全国公開
【クレジット】 (C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会 
【配給】ワーナー・ブラザース映画

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

情報元リンク: ウートピ
他者とのつながりがあるから生きていける。西川美和監督が『すばらしき世界』で描いたもの

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