恋バナ収集ユニット・桃山商事の新刊『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(イースト・プレス)が6月に発売され、刊行を記念したトークイベントが6月、「ピースオブケイク」(東京都港区)で開催されました。
ゲストに登場したのは『家族無計画』(朝日出版社)などの著書を持つエッセイストの紫原明子さん。既婚、未婚、恋愛中、男、女……それぞれ環境も恋愛観も異なる4人で、赤裸々な「NEO恋バナ」が繰り広げられました。意外にも今回が初対面だという桃山商事と紫原さん。トークの内容を3回にわたってお届けします。
第2回では前回登場した「フラート」(恋愛未満の関係におけるじゃれあい)についてより深く考察。フラートの末に、本物の恋は芽生えるのでしょうか——。
フラートのままにすることで、恋愛は継続する?
清田:僕は「フラート」的なコミュニケーションが一切できないんですよ。仮に女性からフラートを繰り出されたとしても、「なにこれ? 今夜ワンチャンあるの?」って頭が真っ白になり、ドキドキを楽しむ余裕なんて絶対にないと思う。
ワッコ:「フラート弱者」である清田さんとわたしは、フラートへのセンサーが死んでいますからね。
清田:完全に死んでる。でもそんな僕にも、過去に「あの瞬間はフラートだったな」というエピソードがあって。これは『モテすべ』の中でも紹介してる話なんですけど、ある時、大学時代の女友達が、会社の人との不倫でボロボロに傷ついたというので、二人で飲んだんですね。それでもまだ話し足りなくて、お店が近所だったこともあり、うちのマンションの屋上に移動して夜空を見ながら話してたんです。相手の状況が状況だし、そもそも女友達なわけだから、もちろんP(オスみ)は完全に消していたんですけど。
ワッコ:清田さんはPないのが基本ですもんね。
清田:そしたらなんと、流れ星がビャーって流れて。お互い「え?」みたいになって、とにかく突然ロマンチックな空気になった。
ワッコ:死んでるセンサーでも感知できるくらいのエロい空気だったんですね。
清田:そうなのよ。さすがにこの雰囲気は……という気持ちになりまして、意を決して「キスしてもいい?」と聞いたら、相手は「はい」と。
森田:その状況で同意を言葉で取ったのは偉いよ。勇気の要ることだと思う。
清田:まあ、それでキスをしたんですね。フラートが得意な人ならここで止めて「僕と君の不思議な夜だったね」ってな感じのいい思い出になったのかもしれないけど、フラート弱者にはそれは無理な話で……。僕はそこで「ネクストステップOK?」と勇んで進もうとして、キッパリ断られてしまった。
紫原:どう断られたんでしたっけ?
清田:ディープなキッスをしようとしたら、彼女は歯をグッとして、シャッターが完全に閉まりました。胸を触ろうとしたのも拒まれてしまい……軽いキッスで止めておけばいいフラートになったのかもしれないけど、最終的にはよくわからない思い出になってしまった。
紫原:Pの供給がちょっと過剰だったのかもしれないですよね。次に足りない部分がもっと欲しくなるような、「to be continued」を残しておければよかったのかもしれない。
清田:なるほど……それはめちゃくちゃ大人ですね! フラートって「ちょっと足りない」ってことなのかもな……。
トキメキという名の「可能性濡れ」
森田:「to be continued」や「ちょっと足りない」っていうのは、ワッコが言うところの“可能性濡れ”の話にも通じることだよね。
ワッコ:これも『モテすべ』で書いた話なんですけど、とある飲み会で出会ったイケメンと話がケミって盛り上がり、「この人いいかも」と思っていたら、彼がなんとわたしの家のはす向かいのマンションに住んでいるということが判明して。そこから一緒にタクシーで帰る流れになり、「お互いの部屋から相手の部屋を写メで撮り合おう」という話になったんですよ。「え、そんな! エロいじゃん!」と、自分の中でめっちゃ盛り上がりました。結局それだけだったんですけど(笑)。
清田:それをして“可能性濡れ”と名付けた。
ワッコ:はい。「今後なんかあんじゃね?」というところに、興奮するんじゃないかなと考えました。
紫原:それは確かに、直接的な肉体関係を持つよりエロいかもですね。実は私も『家族無計画』という本の中でそれと似たことを書いたことがあります。可能性濡れって、その先のエロい展開を想像してドキドキするという意味で、「ときめき」みたいなものですよね。でも悲しいことに、ときめきって同じ人との間では、使えば使うだけ消耗しちゃうという側面もあると思うんです。
森田:ときめきに代わるものとして、「愛着」があるのではないかと書かれていましたよね。
紫原:長く一緒にいることで、だんだん「メスみ」も「オスみ」も「ときめき」も減っていきますよね。それはお互いのことを知り尽くして、自分と相手との区別がつかなくなって一つになるということでもある。そういう中で滲み出て来るような感情が、愛着なんじゃないかなと思います。
セロトニンセックスは成立するのか
森田:一方で、そういうメスみとオスみが後退した安心感のある関係性において、セックスをどうするかという問題はありますよね。
清田:これは個人的に気になっている問題でもあるんですけど、穏やかな親愛の情の中で、興奮要素に頼らないセックスってはたしてあり得るのか……。
紫原:矛盾する問題だと思いますね。ちょっと恋バナからは離れますが、私の周りのママ友たちは、いかに男の子の中のマッチョな部分を伸ばさないように育てるかっていうことに苦心してるんです。
でも、私たちが主に嗜んでいるセックスは、マッチョありきじゃないですか。男の人が上位で、女の人は帯をくるくるされて「あ〜れ〜」みたいな。日常ではそういうマッチョなところを男性に求めなくなっても、セックスではなぜかそれを求めるという矛盾が、ずーっとある。
森田:オスみとメスみが駆動力になるセックスっていうのは、つまりドーパミンがビジャビジャに出てるセックスだと思うんですけど、これまでの議論を踏まえて考えると、それって最初が頂点ですよね。
ワッコ:可能性は、出会った時がマックスですもんね。
森田:さっき紫原さんが言っていたように、基本的には相手と一緒にいる時間が長くなるほどときめきや可能性は減っていく。でも、恋愛や結婚は継続性のある関係性なわけで……。
清田:反対方向を向いてるよね。どうすればいいんだろう。
森田:AV男優の一徹さんが著書の中で、おくさんと継続的にセックスをしているけれど、そこで大事なのは「努力」と言い切っていました。僕はそこにすごく共感した。メスみやオスみやときめきの延長線上だけにセックスがあるんじゃなくて、それこそ愛着を駆動力に、お互いの意思の力で継続していけるセックスもあるんじゃないかなと思っています。
一般的には「オスみやメスみがなくなったからセックスレスになる」と考えがちだと思うんですけど、逆に「(意思の力で)セックスを続けるからメスみとオスみを維持できる」ということもあるんじゃないかなって。
紫原:そういう意味では、「自分は妻に欲情している」とか「私は夫の体がすごく好き」みたいなことを日頃から思って表現していると、自分自身を洗脳することができるような気がします。無理に言い聞かせるんじゃなくて、欲望に自覚的になったり、気持ちを高めていったりするようなイメージですね。
清田:努力というと「本当はしたくないことを仕方なくしている」というニュアンスが出ちゃうけど、そうではなくて、いい関係を続けていくために主体的にコミットしていくっていうことなのかなと感じました。
森田:お互いがコミットした結果として、「別にセックスなくてもいいよね」となることだってあるだろうしね。何よりもしんどいのは、自分の欲望や気持ちを抑圧せざるを得ない状況に陥ることで……。それは恋愛相談を聞いていて、よく感じることでもあります。
次回は8月12日(月)公開予定です。
(構成:波多野友子、編集:安次富陽子)
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情報元リンク: ウートピ
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